スマッシュ×スマッシュ!
一生懸命である人に触れると、その情熱が伝染することがある。
はたから見たら綺麗事に見えるかもしれないが、情熱は確かに移る。
その情熱をわけてもらいたくて、人はスポーツを応援するのではないか。
だからと言って、それを小説にするのは、難しい。
ハッピーエンドにすれば、御都合主義に見えるかもしれない。
かといって、アンハッピーエンドになれば、読後感を損なうかもしれない。
応援する選手やチームには勝ってもらいたいと願う人の心に寄り添うならば、予定調和のほうがまだましだ。
だって、夢物語なのだから。夢を見させてくれなければ。
スポーツ選手の練習も試合も過酷なもので、とてもとても、スポーツは健康のためにいいなんて言っていられるものではない。
古傷を抱えている選手は多く、誰も彼もがぎりぎりのところで戦っている。ワールドカップだってオリンピックだって、よく見れば、体のあちこちにテーピングをしている選手は多いのに気づくだろう。
この本の主人公は、肩を痛めたテニス選手。一度は得た評価を失った選手が、再び世界に挑戦する物語だ。
これは簡単なことではない。肩を痛めてなくても、普通に大変である。なにしろ、日本と世界のレベルの差はかなり大きい……。
主人公の勇太がメンタル面でも成長して行く契機になったのが、不登校になった小学生の颯人をコーチするという体験だ。
颯人はアスペルガー症候群と診断されており、その辺りの描写もよく勉強されていると思われた。
高校生ぐらいの人の夏休みの読書感想文にお勧めしたいな。
頑張っても叶うともしれないのが夢だけど、頑張らなければ叶うことはないから。
だから、そんな夢の力を感じて欲しい。
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