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2010.07.21

桜の実の熟する時

桜の実の熟する時 (新潮文庫)  島崎藤村 1955 新潮文庫

今でいう、日記ブログみたいなものなのだろううか。
私小説って。私小説を書く動機って。

桜の実の熟する時。
実が熟する時といえば、なんとなく子をなし、育てる世代をイメージしていた。中年期のイメージだ。
だから、読み始めて、主人公が学生であることと、タイトルがうまく結びつかずにいた。
読み終えて、私のイメージは「木」を主体としていたことに気づいた。
主人公に重ねられるべきは実を蓄えた木ではなく、熟して地に落ちんとする実そのもののほうだ。

自分自身の命を延べようとして、初めて自分自身の足で地に立とうとする、そういう季節を描いている。
明治学院での学生生活。初々しい、無邪気な時代が過ぎつつあるところから小説は始まる。信仰に挫折し、勉学に挫折し、年上の女性への恋が終わったところから始まることになる。
失恋の余韻の抑うつが全体を引っ張っており、幼い頃から別れて暮らすしかなかったために母親への愛着が淡白であることへの戸惑いとして繰り返され、年下の女性への不器用さとしてうっすらと蘇る。
同時に、学問や職歴上でも成功しようとして伸び悩み、周囲の期待するものになれない自分に思い悩み、その中からやがて自分の欲するもの、自分らしさというべきものを改めて見出していこうとする。
そういった愛着関係での不全感、自己の中での達成や成功への欲求の不全感が渾然となりつつ、やがて熟していくのだ。

友愛や恋愛にキラキラしていた季節の思い出を綴ったものである。
熟した実が木から地に落ち、芽吹いてからは、また別の話になる。
ある人が若いときには面白みがわからなかったと紹介していた本であるが、読んでみて、確かに自分が思春期や青年期前期だったら、途中で投げ出していただろうと思った。
字が大きくなって読みやすくなったという新潮文庫の改革がなければ、やっぱり放り出していたこと必至だろう。

伏線もオチもないし、登場人物も出ては消える。小説ではあるが、物語として楽しむような感覚にはなれない。
登場人物にはモデルがおり、設定が少しずつずらされていても、自分と関係者のプライバシーだだもれである。いいのか?
それでも、恋話で盛り上がってくれたほうが私としては食いつきやすかったような気がする。詩情の乏しさに、我ながらとほほな気分。
かくも、私はブンガクなるものに慣れ親しまない。頑張って読んだそのことに、満足しておくことにする。

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