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2010.07.13

黄金旅風

黄金旅風 (小学館文庫)  飯島和一 2008 小学館文庫

評判にたがわず面白かった。
寛永5年、鎖国直前。舞台は長崎。
遠く、ルソンやマカオ、トンキン、コーチやチャンパ、カンボジアまで、海商たちは航海していた。
ポルトガルやイスパニア、オランダもまた、東南アジアに進出し、長崎にまで来ていた。
鎖国前夜の物語だ。

最初は分厚くてためらっていた本だったが、読み始めると没頭してしまう。
船大将の濱田弥兵衛が率いる船団の、台湾への航海。
火消組惣頭の平尾才介が率いる内町火消組の、消火・治安活動および暴れっぷり。
長崎代官の末次平蔵の強烈な個性と、長崎奉行らとの立ち居地の違い、権力欲と金銭欲。
仏具座頭取の上原道介や鋳物師の平田真三郎、川舟船頭の亀次郎、あるいは、町々の乙名、唐人、高麗人、ポルトガル人、オランダ人など、登場人物は入れ替わり立ち代り長崎の物語を紡ぐ。
言うなれば、主人公は長崎という町そのものである。
末次平左衛門は、その中できわめて海神に愛された男であった。

男の人たちが恰好いい。
強欲な奉行やら、愚鈍な糞侍やらも出てくるし、人の命はとても軽い。
けれども、長崎の町衆たちは活き活きとして、一生懸命に生きている。
その様が恰好よく描かれている。姿かたちではなく、その精神が極めて魅力的なのだ。
濱田弥兵衛の自分のなすことの結果は自分で背負う責任感と、平尾才介のわけへだてなく助けるべき他者を守ろうとする義侠心。
その両者をあわせもち、より広くて公平で冷静な視線を持つ、末次平左衛門という造詣に、理想が注ぎこまれている。
既に禁教令が出された時勢ではあるが、キリスト教的な精神が低く高く通底音として流れており、時に痛烈な皮肉となり、時に寛容の美学となる。
なりひらと比べるから、余計に恰好よく感じてしまったかもしれないけど。
同じように女癖が悪くても、なりひらと平左衛門では、こうも印象が違うんだよなぁ。

カロンの出番が最後のほうは減ってしまったのが、残念かな。
処理されずに取りこぼされた伏線があった印象は否めない。
なにしろ読み進むほど、登場人物はどんどん増えていくのだ。私はだんだんうろ覚えになったので、読み落としただけかもしれない。
物語当時の長崎の地図は付されているが、できれば世界地図も付されていると嬉しかったかも。
美しい夢のように心が沸き立ち、蝶のように儚いけれどもたくましい物語の喜びの前には、ささやかなことであるが。

この本は、シェムリアップからハノイへの旅行の途中で読み始めた。
作中の地名にいる不思議。平左衛門と才介が憧れを持ち、輸入した、インドシナ半島の黄金の繭に触れ、その黄糸の織物を手に入れての旅だった。
世界でも古い種類の蚕がカンボジアに残されており、これは買わねばと思っていた矢先だった。
産業や文化の回復を目的としたシェムリアップの職業訓練校で、金色の繭に触れるとき、その中の蚕が干からびたころんとした感触におののいた。
その絹は、外側と内側では糸の太さが異なり、作れる製品が違うのだそうだ。向こう側が透けそうなオーガンジーシルクから、分厚いタフタシルクまで。
日本でも、室町時代頃までは、ヤママユガ(天蚕)の太い絹が主流だった。ヴェトナムのフエのあたりが上質なタフタの産地だったと思うが、カンボジアも伝統的な絣織りを復興するため頑張っている。

今も、夢を紡ぐ人がいる。

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コメント

こんばんは、お久しぶりです。
旅に出ていらしたのですね。しかも海外。
物語と旅の途上にあった香桑さんの体験がクロスして、
本の感想を読みながら、遠い異国に運ばれたような感覚になりました。
アンコール、木の根に抱かれる仏頭のモノクロ写真、映画のワンシーン…
飯嶋さんは「始祖鳥記」も面白かったですよ。
ただ、やはりこの本同様分厚いですが^^;

雪芽さん、こんばんは。
素敵なコメントをありがとうございます。
題材としては「出星前夜」に興味をひかれ、その前作であるこの本からチャレンジしてみました。飯嶋さんは初読みでしたが、他の本も読みたくなりました。

物語の中で才介や平左衛門が憧れていた金色の繭。その繭に、絹に触れながら、物語を読めたことは、望外の偶然でした。
今も、どこかで彼らの祈りが世界のどこかで息づいている。ヘドーヘンの精神で、一人ひとりの名もなき人が平和に生きていける世界を夢見ている。
アンコールワットへの旅は、人々の祈りを感じる旅になりました。

香桑さん、こんばんは(^^)。
長崎の地図、何回も確認しながら読みましたねぇ(^_^;)。
そう、当時の世界地図、欲しかった(笑)。
色々なことが、あまりにたくさん絡み合っていて、物語に付いて行くのが大変でした・・・。
嗚呼、もう少し頭のキャパ&理解力が欲しい(笑)。
でも、本当にいい物語でした。

水無月・Rさん、こんばんは♪
この本、当時の世界地図がついていたら、もひとつ評価アップです。
地名が今と違いますからね~。そのあたりは勢いだけで読みました!(笑)
最初はだれが主人公がわからなくて、この人死んじゃうの? また違う人が出てきたぞ??と戸惑うばかりでしたが、そのあたりも勢いで。(^^;;;
それにしても、男くさい話でした。

最初は分厚さに慄くものの、読み始めると全く気にならなくなるくらい面白かったね~!男たちがカッコ良かった♪
そうか~!旅とシンクロした読書となったんだねぇ。それは、また違った感慨があるんだろうなぁ。なんか、うらやましいような…。

☆追伸☆
がんばれ香桑ちゃん!<宵山万華鏡(笑)

すずなちゃん、ありがと。がんばる。
読み始めたら、すぐにページが過ぎていきました。
この後どうなるの?と、手が止められてくって。

思った以上に旅とシンクロして、ものすごく興奮しました。
今、カンボジアで絹織物の職業訓練をしている人たちに伝えたくなるぐらい。
こんなに素晴らしいものを、あなた達は持っているのだと伝えたいような気持ちになりました。
金色の繭は、本当に綺麗でした。蚕の存在感は気持ち悪かったけど……。(^^;;;

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