2023年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

著者名索引

香桑の近況

  • 2022.2.25
    2021年 合計28冊 2020年 合計38冊 2019年 合計55冊 2018年 合計33冊 2017年 合計55冊 2016年 合計50冊 2015年 合計32冊 2014年 合計26冊 2013年 合計32冊 2012年 合計54冊 2011年 合計63冊 2010年 合計59冊 2009年 合計71冊 合計596冊
  • 2019.1.25
    2018年 合計33冊
    2017年 合計55冊
    2016年 合計50冊
    2015年 合計32冊
    2014年 合計26冊
    2013年 合計32冊
    2012年 合計54冊
    2011年 合計63冊
    2010年 合計59冊
    2009年 合計71冊

    合計475冊
無料ブログはココログ

« ダーティ・ワーク | トップページ | 日本国憲法前文お国言葉訳:わいわいニャンニャン版 »

2010.06.21

道徳という名の少年

道徳という名の少年  桜庭一樹 2010 角川書店

豪華であやうい。
野田仁美による装画や挿画に惹かれて手に取る人もいるだろうが、私は桜庭の小説だからこそ手に取った。
ちょっと皮肉な文章を書く、この小説家が、タイトルに道徳とつけるなんて。
どんな風に裏切ってくれるのか、楽しみになる。

およそ6世代になるか。
町で一番の美女から始まる不道徳の歴史だ。
ある者は娼婦になり、ある者は姉弟で愛し合い、ある者は夫の父親と愛し合い、ある者は人と愛し合うことができず、ある者は愛に出会う前に死ぬ。
世代を重ねるごとに、愛する者との距離が疎遠になっていく。
愛する営みすらできないほどに疎遠になると、その一族は滅びるほかない。
不思議なことに、彼らの一族は人目を引くほど美しいが、どうやら愛し愛されると醜くなる定めらしい。

美しくて残酷。
そんな御伽噺の形式美を踏襲している。グロテスクで、ブラックで。
耽美的になりそうでいて、むしろどこかユーモラスに感じてしまうのは、登場人物たちのネーミングであったり、その醜さの描写であったり、緊張をどこかで緩める装置があるからだ。
少女達のエロティックなイラストによる過剰な演出でさえ、かえってユーモラスに思えてくる。
独特の雰囲気を作り上げることに成功しており、是非ともにんまりと黒い笑いを浮かべながら読んでもらいたい。

20世紀の初頭から現代にかけての、フランスあたりを思い浮かべながら読んだが、しかと文章に時代と地域の設定がなされているわけではない。
御伽噺のように、昔話のように、想像に任せて読めばいい。

« ダーティ・ワーク | トップページ | 日本国憲法前文お国言葉訳:わいわいニャンニャン版 »

小説(日本)」カテゴリの記事

コメント

こちらにも^^
ありがとうございました。
大人の御伽噺を読んでいるようでした。
官能的で、濃厚な。
短い作品だったのに、とても心に残っています。
面白かったです^^

こんばんは☆
文章量は短いのに、一つの世界がある感じで、独特でした。
6世代じゃなくて、5世代になるのかな。
一気に時間が流れていく感じにも驚きました。

薄い本ながら桜庭ワールド満載の作品でした。まさに堪能したな~という感じ。
「美しくて残酷」まさにそんなお話だった。それでいて、どこかしらユーモラスを感じさせる。ホント、緩急のほどよく効いた作品だったね。

すずなちゃん、ども。
ワールド堪能の一冊でしたねー。
これも、桜庭ファンじゃない人には好き嫌いが分かれるだろうなぁ。
桜庭ワールドには毒があるもの。その毒を笑える人じゃないと。

香桑さん、こんばんは(^^)。
>世代を重ねるごとに、愛する者との距離が疎遠になっていく。
・・・確かにそうですね!
そこに悲しさを見るか、現代の人間関係の希薄さとそのラクさを見るか・・・というのは意見が分かれる部分だと思います。
いずれにしろ、失われゆく〈美しいもの〉に、読者それぞれに投影するものがありそうですね。

水無月・Rさん、こんばんは♪
水無月・Rさんの記事を読んで、「愛し愛されると醜くなる」理由に思い至った気がします。
思い返すと、結婚(愛する人との身体的な接触)が主人公を現実に向かい合わせる契機として作用していました。
言いかえれば、<「結婚する=現実に戻る」→醜くなる>という構図です。
もしかしたら、子どもという一人の世界では美しいファンタジーを観ていただけで、最初から醜かったのかもしれません。
大人になって、人と対になって、一人だけではいられなくなって、他者の目線を気にするようになって初めて、自分の醜さに人は気づいていくのですから。

今、くるくると連想が働いていて、面白いです。
いい刺激をいただきました!

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 道徳という名の少年:

» 道徳という名の少年 桜庭一樹 [苗坊の徒然日記]
道徳という名の少年クチコミを見る 「1,2,3,悠久!」町一番の美女が父なし子を産んだ。誰が父親なのか、町の人間は調べようとするが、分からない。美女が産んだ4人の子供は母親である美女の生き写しで、父親の面影はなかった。あるとき、美女は黄色い目をした痩せこ....... [続きを読む]

» 道徳という名の少年(桜庭一樹) [Bookworm]
桜庭ワールド全開。そう思える、絵本のような作品。 [続きを読む]

» 『道徳という名の少年』/桜庭一樹 ○ [蒼のほとりで書に溺れ。]
良くも悪くも、桜庭ワールドだなぁ・・・というのが第一印象。 淫靡で甘くまとわりつくような、それでいて砂のように乾いている、一族の歴史。喧しいのに、静かに流れて行く時代。 とても、桜庭一樹さんらしいなぁ~と。 『道徳という名の少年』、町いちばんの美女から始まる、背徳の歴史。... [続きを読む]

« ダーティ・ワーク | トップページ | 日本国憲法前文お国言葉訳:わいわいニャンニャン版 »

Here is something you can do.

  • 25作品のレビュー
  • 80%
  • グッドレビュアー
  • プロフェッショナルな読者

最近のトラックバック