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2010.02.12

天平冥所図会

天平冥所図会  山之口洋 2007 文藝春秋

昔々の奈良に平城の都があった頃。
帯から予想された内容とは少し違って、あれれ?と思いながら読み始めた。
三笠山、正倉院、勢田大橋、宇佐八幡の4つの冥所の物語が収められている。
帯に書かれていた内容は後ろの二つの物語のことであったと気づき、途中でしばらく手が止まってしまった。

主人公は最後の葛木氏である葛木連戸主。その妻、広虫。
登場人物たちの名前が、読み慣れない音感のものが多いため、そこでも少し戸惑った。
自分で葛木の血筋は途絶えるものと思い定め、出世に囚われずに地道に役人として務めているうちに30代に入った戸主。
広虫は、吉備真備の娘である由利と共に、女儒として内裏に勤めるために状況してきた。
この二人が送る日常と冒険は、どこかゆるい空気に包まれている。ほのぼのとした景色を背景に、しかし、人の為すこと企てることは汚くて血なまぐさい。

「三笠山」は、奈良の大仏の建造にまつわる物語。そこで消費された人々の怨嗟に思いを馳せることになる。戸主と広虫の出会いの物語でもある。
「正倉院」は、私はこれが一番好きだ。夫である聖武天皇を亡くした光明皇太后に命じられて、遺物を正倉院に納めるまでの役人たちの苦労話である。政治的な駆け引きに邪魔されながらも、東大寺から派遣された写経僧たちが王羲之や欧陽詢の筆法で、献物帳を記載していく。末端の現場を担う者たちの矜持が香り立つような佳品だった。
「勢田大橋」は、ぐっと血なまぐさくなる。権勢を極めた藤原仲麻呂が起こした乱の顛末である。吉備真備も大活躍。しかして、私の印象に残ったのは東大寺お水取りの起源である。ロマンだなぁ。
そして、「宇佐八幡」。

人の怨みはいつか晴れるのか。どうやったら晴れるのか。
怨みであれども、その人のよすがが残されていて欲しいと願ってはいけまいか。
最後は、なんだか悲しい。
夫婦の情愛を軽やかな筆致で、しんみりと感じさせられた。

個人的には、もう少し、吉備真備父娘の話が読みたかったかも。作者の人の頭の中には、きっと物語があるはずだ!と思いつつ。

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コメント

香桑さん、こんにちわ。
可愛い顔して侮れない作品でした^^
そぉかぁ。“冥所”なのだから物語の場所に着目したら
またいっそう、趣きが加わるものなのですねぇ。

正倉院成立のお話。よかったですよね♪
サラリーマンの先祖たちに熱いエールを送りたくなりました。

好々爺のような吉備真備も印象に残っています。
確か由利は唐で・・・  ̄m ̄ ふふ

はじめまして。
暫く前から拝読しております。

『天平冥所図会』は私も大好きな一冊です。
あまり小説として取り上げられることの少ない時代だけに余計に嬉しく思います。
吉備真備と藤原仲麻呂の対比も面白かったのですが,
個人的には弓削道鏡の描き方が好き。
野心よりも称徳天皇への愛で身を滅ぼす道鏡の姿が印象的でした。

同作者の『われはフランソワ』も面白いですよ。
未読ならば是非是非。

>susuさん、こんばんは☆
さすが、読まれていましたか。
おかげさまで、山之口さんのブログを早速さまよってまいりました! この人物紹介を読むと、更に登場人物たちが愛しくなります。
歴史的な事実に沿って、作中でどんどん時間が過ぎていくのを容赦がないと感じてしまいました。歴史的な出来事と出来事の合間に、平和な時間があったことを祈りたくなるぐらい。
由利さん、やっぱりいろいろしてきたんですね……。むーん。

>森山樹さん
はじめまして。こんばんは。
このように更新も滞りなブログを読んでいただき、ありがとうございます。
平安時代を扱う小説は多いですが、奈良時代はなんだか縁遠い感じがしてしまいますね。
この本では、言葉使いなどもあくまでも現代的にして、「昔らしさ」を変に演出しないところで読みやすく、とっつきやすく、かつ、感情移入しやすくなっていた気がします。

道鏡はこれまで触れてきた中で一番好感の持てる造詣でしたし、だからこそ称徳天皇も可愛らしい女性として印象に残ったのだと思います。
主人公夫婦はもちろん、どのカップルも素敵でしたね。
お勧めの本は未読ですので、是非また機会を見つけて試したいと思います。

お、お詫びをっ!

楊貴妃ミステリは由利のお姉さんでした;;
どこで記憶を捏造したことやら。
脳内で勝手に留学までさせてしまって・・orz
どうやって掏り替って日本に帰ってきたんだっけ? と、
必死に思い出そうとまでしておりました・・orz

香桑さんの窮余のレスが御労しい。
ムチャ振り、どうぞお許しあれ~。

>susuさん

そのネタ、楽しいです! それで一本、誰かに書いていただきましょう!!

由利が「私にはすることがある」と言っていたので、唐で何をしてきたんだろう?と謎に思っているのです。
本当はお姉さんに会いに行ったのか、救おうとしたのか、何か玄宗皇帝らを相手に冒険があったのではないか……。
想像が膨らんでやまず、楽しいです♪

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巻頭の主要登場人物紹介で取り上げられている12名は、みんな実在する人物なのですが、おまいは誰だ? と思ったら、ます作者の山之口さんのブログに行ってみてください。コンパクトな人物紹介が載っていて気が利いています。 おかげでこの時代に非常に馴染みの薄いわたしもバッチリ(あくまで自己満足)楽しめました。 装画の似顔絵が可愛い〜♪ 悪玉の藤原仲麻呂ですら、バイキンマンキャラのように見えてきて、憎めなくなってしまう程に・・ 東大寺大仏建立に携わった庶民の悲喜劇、献物帳(後の国家珍宝帳)のできるまで、藤原仲麻... [続きを読む]

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