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2009.12.03

魔法の使徒(上・下):最後の魔法使者1

魔法の使徒上 (最後の魔法使者第1部) (創元推理文庫) 魔法の使徒下 (最後の魔法使者第1部) (創元推理文庫)  マーセデス・ラッキー 細美瑤子(訳) 2009 創元推理文庫

うーん。BL……。
『天翔の矢』後書きで予告されていた薄幸の美少年ヴァニエルを主人公とする三部作のスタートだ。
エルスペス主人公の〈ヴァルデマールの風〉シリーズやタリア主人公の〈ヴァルデマールの使者〉シリーズでは、伝説となっていた最後の魔法使者。

主人公が男性なのも初だが、同性愛者なのも初じゃないかな。
今まではどちらかと言えば、不遇な生い立ちがあろうとも、そこにめげずに懸命に立ち向かおうとする女の子達が主人公だった。
素直になれない性格はケロウィンやエルスペスも持っていたが、ヴァニエルのいじけ具合もなかなかのもの。

不遇な家庭環境で育つ時、それでも保護者に気に入られようと子どもは努力する。
ケスリーだってそうだった。タリアだってそうだった。
父親の望むような、野蛮なまでに力強く、無謀なまでに勇敢な、脳みそまで筋肉でできているような息子には、ヴァニエルはなれない。
一族の中で、唯一、毛色の変わった子ども。詩を暗誦し、リュートを弾き、女性達からは欲望と羨望のまなざしで見つめられる美少年。その顔立ちまで、一族の中では異色なのだ。
何をしても、父親には気に入られない。かえって叱られるばかりの空回りの悪循環。
母親は甘やかしてくれるが、それはいつも的外れで、かえって兄弟達からの軽蔑や嫌悪も引き起こす。

無視されているわけでもない。でも、ヴァニエルらしさは無視されてきた。否認されてきた。拒絶されてきた。
作者が容赦ないなぁと思うのは、ヴァニエルがやっと出会った絆を奪い、再び孤独に陥れるからだ。
これだけの大きな剥奪体験をした心を、いかに癒すか。大事な人を自殺で失うときに、残された人にはとても大きな空虚という傷ができる。
その傷を傷跡にして、生き延びることが、ヴァニエルに与えられた試練だ。

すべて自分を傷つけるものから逃げ出して、孤独になろうとしてきた。
しかし、ヴァニエルは悟る。すねて、いじけていても、何も解決しない。
そういう悟りを得るために、賢くなるために、正しく頭を動かせるぐらいに冷静になるためには、静謐な孤独も役立つが、それまでだ。
二段階の喪失を経ることで描き出される、自立と成長。
人は一人では生きられず、求められたら応じずにはいられない。その心があるから、見ず知らずの誰かを愛していくこともできる。
自分以外の誰かを思いやれるようになった時、心は大人への成長の階梯を上るのだ。

孤独に育つヴァニエルが、産まれて初めて、無条件の愛に出会う上巻。
その生涯の絆を無残に失い、彼自身が自分自身の力で立ち上がる下巻。
この上下巻は、いわば伝説の前夜である。この少年が、どのようにして魔法使者として伝説になるのか。
果たして、本当に、伝説にふさわしい人物になり、伝説にふさわしい冒険をなしとげるのか。
期待が裏切られるんじゃないかとどうにも心配になるのは、ラッキーは詩人達に辛らつなことが多いからである。大丈夫かなぁ。

ファンタジーでありながら、生命の質感を感じる上質の物語。
訳者が変わったことで、少し違和感がないわけでもないが、続きを楽しみにする。

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