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2009.12.24

シアター!

シアター! (メディアワークス文庫)  有川浩 2009 メディアワークス文庫

にーちゃん萌えです。
司にーちゃんが好物です。

小劇団を舞台にしているというと、真っ先に思い浮かんだのが中山可穂『猫背の王子』などなど。
それから、大学時代に好きな劇団を追いかけていた友人の苦労話に見せかけた自慢話。
友人の話は横においておき、中山可穂の描く劇団や演劇は、経済的な苦労がつきまとう。
小劇団とは、理想と現実の狭間でついに立ち行かなくなるような、そういう悲劇が用意された設定である。

そういう中山さんの世界も大好きなのだが、有川浩の描く『シアター!』は、そういう小劇団の在り方に対して一石を投じる。
一石を投じることになるのが、鉄血宰相と渾名されることになる春川司。普通の会社員。無敵の営業スマイル。
司が、弟の巧が主宰する劇団に300万円を貸す羽目になるところから物語はスタートする。
貸したからには返してもらう。期限は二年間。返せないようなら、やめてしまえ。

何かを続けるためには、収支のバランスが大事になる。
収入に偏れば、周囲が疲弊したり、いらぬ嫉妬や侮蔑を招く。自分自身が満杯になることで動機がさがったり、爆発するかもしれない。
支出に偏れば、自分が磨り減って疲弊する。疲弊すれば抑うつになったり、意欲が減退する。周囲も支えきれなくなるかもしれない。
コストとメリットを見比べて、メリットが少しあるぐらいが望ましい。
これは何も商売に限ったことではなく、人間関係の維持についても同じようなことが言える。これを社会的交換理論と呼ぶ。

でも、人間関係になると、メリットというのは有形無形、多様であって一つではない。
その人と関わる喜び。その人が幸せである喜び。その人から認められる喜び。
愛される喜びだけではなく、愛する喜びがあって、簡単にコストで割り切れない。
なんか貧乏くじをひいているような気分になっても、見捨てられない。
特に、親兄弟になってくると、悲喜こもごも入り乱れてしょうがない。
しょうがないけれども縁が続くことから喜びだったりするから、振り回されても甘んじて受け容れるしかないような。
夫婦であっても同様で、名前も出てこない司&巧兄弟の母親の漢っぷりも読みどころの一つだろう。有川さんらしい、素晴らしい女性の造詣である。

そもそも、相手の幸せというのが難しい。相手が幸せならそれでいいのか。そのままでいいのか。違う幸せもあるのではないのか。見ている自分が辛くなるような、そんな幸せは本当に幸せなのか。
好きなことを楽しんでいる人の、地に足が着いていないような危うさを見守るしかない時の、歯噛みするような気持ち。
好きなことをやっている巧ではなく、司を主軸に据えたことで、「好きなことをする幸せ」に客観性が付与される構造になる。

コストが少し上回っていて、あともうちょっとでバランスが取れそうなところが、一番あきらめづらいのかもしれない。
ギャンブルがそうじゃないだろうか。あとうもうちょっとで元を取れる、あともうちょっとで成功する。そんな気持ちがあきらめるのを手遅れにさせる。
本人は盛り上がっているからそれでいいけれど、本当にそれでいいのか?
主観の世界で満足して閉じるのではなく、客観の世界に開く覚悟を決めさせる。
他者から見ても認められるぐらいのプロになれ。自称プロではなく、それで食っていけるだけのプロになれ。
現実を突きつけて水を差して覚悟を促す、損な役回りを果たすにーちゃんが、やっぱりかっこよかったりして、私は大好きだなぁ。

舞台を見るのは好きだが、演劇はあんまり見ないな。ミュージカルや歌舞伎、オペラのほうが、普通の台詞回しを聞き取るより楽だから。それに、小難しいものが苦手だから。
そういう意味では、カジュアルに楽しめるものの何が悪いの?と思う。娯楽なのだ。楽しめるものがいい。シリアスなものやシビアなものは、現実で十分に享受しているから、これ以上、あえて欲しいとは思わない。
仕事上、私の存在は虚構のようなものだし、演技することは当り前で重要な技術であるが、何かを作り上げることではないものなあ。
作り上げることを生業とする人への憧れも感じつつ、果たして二年後はどうなるか?を楽しみにして、本を閉じた。

……で、続きは?(笑)

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コメント

こんばんわ。カキコありがとうございました。
面白かったです。
ラブコメ要素が少なかったですが、それでも有川作品だなーと思わせるところがたくさんありました。
演劇、私も見たことはないです。舞台は何度かありますが。
理想と現実は違うんでしょうね。
でも、司じゃないですけど、社会人経験のある人がこの劇団にいたら、ここまで借金は膨れ上がらなかった気がしますね。
2年後がどうなるのか気になります。
続きは出るんですよね?どうなんでしょう。。。

苗坊さん、こんばんは。面白かったですねー♪
小説の世界だけではなく、大学時代の身近なところで聞こえてきた話でも、「演劇をしている人=貧乏」というのが既定路線だった気がします。
スポーツの世界にも似た永遠のアマチュアリズムと申しますか、「商業路線に乗っかったら堕落だ~」みたいな、やせ我慢の世界。
そこをひっくり返していくこの作品は、私にとっては「目から鱗」であると同時に、「ま、そりゃそうだ」という納得できるものでした。

たとえ続きが出たとしても、司にーちゃんには変に感化されずに、このまま鉄血宰相でいてもらいたいものです。

関係のないカキコになってしまうのですが。。。

新年明けましておめでとうございます。
昨年は香桑さんには大変お世話になりました。なりっぱなしでした。
まだまだ前途多難ですけど、自分のペースで仕事もプライベートもがんばっていけたらと思います。
まだ情緒不安定な時もありますが、元気です^^
今年も本の話をいろいろしていけたらと思いますので、
どうぞよろしくお願いいたします。

苗坊さん、こんにちは。わざわざ年賀のご挨拶をありがとうございます。

あなたのお役に立てたのであれば幸いです。
メアドはいつでも有効です。「王様の耳はロバの耳」と囁く(叫ぶ?)穴が必要な時には御利用ください。笑

大好きなものを持っているあなただから、きっと大丈夫。
よりよい一年になりますように。
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いします。

あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしく。

「シアター!」私も読みました。
司にーちゃん、よかったですね~!
にーちゃん萌え、よくわかります(笑)

牛くんの母さん、こんにちは。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

人気投票するまでもなく、司にーちゃんがぶっちぎりの人気者ですね。

香桑さん、こんばんは(^^)。
私も、鉄血宰相ゲキ萌えです(笑)。
鼻息荒く宣言いたしましたですよ!
ナニあの性格&スキル造詣!たまりません~!(^^)!

・・・あああ~!そうだ!春川兄弟の母もはちきんだ~!
すんごく、漢前ですもんねぇ!

水無月・Rさん、こんばんは☆
やっぱり、鉄血宰相が一番ですよね!(笑)
職場で貸した人とも、「にーちゃん!」と叫び合ってしまいました。(^^;

続きが読みたいですね♪

こんばんは。やっと読めました、シアター!
香桑さんの感想が好きすぎて大変です。
というのもおかしな言い回しですが、すごく頷きながら読みました。
ギャンブルの件は、なるほど確かにそうかも!と。
あとちょっと、ってほんとにもどかしいですよね。それが好きなことならなおさら。
利益云々じゃなくて、好きだからやる。けど、お金も必要、っていうジレンマ。

憎まれ役になってでも、劇団をたきつけた司に私もメロメロです。
大切な家族だからこそ、応援したいという気持ちと、地に足がつかないような不安定な場所から引き抜きたいという気持ちと、どっちもわかるだけに、あの英断はすごいなと。ああ続編がもう読みたいです。笑

yocoさん、こんばんは。
私の感想まで気に入ってくださってありがとうございます。
にーちゃんと叫んでいるだけですが、いいんですか?(^^;;;
嬉しいです。えへへ。

続編までいっちゃいましょー!
「3」で完結予定だそうですが、出版されているのは「2」まで。
それに、実際に劇団子の舞台となったシナリオ「もうひとつのシアター!」があります。
私は舞台のDVDも観る機会があったのですが、世界が広がってもシアターはシアター。
どこまでも全力です。

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