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2009.11.27

クォン・デ:もう一人のラストエンペラー

クォン・デ―もう一人のラストエンペラー (角川文庫)  森 達也 2007 角川文庫

フエに行ったことがある。ベトナム戦争の爆撃の跡が残る王宮を歩き、幾つかの王廟を訪ねた。
また行きたいのはハノイだけど、忘れられないのはフエだ。
とてもとても暑い日のこと。その景色を遠くに思い出しながら、ページを繰った。

私は、この王子のことを知らない。聞いたことがあるような気もしたが知らない。
ベトナムへの興味があり、その興味は韓国の近代史への興味とリンクしており、だから手にとってみた本だった。
韓国の近代史を扱った、どの本だったか。韓国人は『ヴェトナム亡国史』を読み、学ぶべきであるという一文が出てきた。
その『ヴェトナム亡国史』を書いたのは、ヴェトナムの革命家ファン・ボイ・チャウ。
ファン・ボイ・チャウが日本において、中国から亡命していた革命家に、祖国の現状を伝えるのが書き起こしたものが『ヴェトナム亡国史』だったそうだ。
そんな時代のエピソードを盛り込みながらつづられる本書は、もちろん、研究書ではない。著者は、著者自身の主観がまじえられていることを否定していない。著者がドキュメントの手法で再構成した、クォン・デという人物を巡る物語だ。

19世紀、フランスの植民地とされていたヴェトナムが、ヨーロッパからの独立を探る他のアジアが憧れたように日本に憧れ、東遊運動が起きる。
ファン・ボイ・チャウは独立の旗印として王族の若き王子クォン・デと接触し、中国人に扮して王子と共に日本に密航する。
若いヴェトナムからの留学生達は、革命後の政治のための学問を身につけるよりも、武力蜂起を目指し、そして、何度も蜂起の芽はつぶされる。
やがて日本はアジア主義から大東亜共栄圏思想に変節していく。日本が第二の満州国を作るならば、クォン・デは手放せないカードになる。フランスにとっては好ましからざる人物であり、ヴェトナムにあっては困るカード。
日本から動けなくなった王子は、祖国においても一旦は英雄視されるが、ホー・チ・ミンの率いるヴェトナムからは見限られ、やがて忘れられていく。
45年間。漂泊の末に死んでいった一人の人物の、王族として生まれながらも無力な凡人の、その存在の軽さが読後に苦い。

歴史はあざなえる縄のようだ。禍福いりみだれて、大きな流れに誰もが飲み込まれる。善悪こみあって、一面的に断じることなど、誰にもできはしないのだ。
随所にさしはさまれる、著者の息苦しさ。そこがちょっと余計に感じてしまい、自分で驚いた。
ついで、そのような息苦しさ、最近の自分は感じていないなぁ、と、思った。
前はあった。時折は感じる。でも、いつもではない。
何でかなぁ?と考えてみると、今の道を自分が見つけたからに相違ない。
私は私で、できることをやるだけである。やれることがある限り、息苦しさに潰れてはいられない。

この本を読み終えて、もう一度、自分がヴェトナムに行った時の日記を読み返した。
著者が、ヴェトナムでの取材で、なぜか無条件に日本への憧憬や親愛を与えられたことを書いていた。
私自身も、日本に所属していることがそう悪いことではないのだと、ヴェトナムの人に教えてもらった。
伊勢崎賢治『自衛隊の国際貢献は憲法九条で』を読んだ時にも真っ先に思い出した、シクロのおっちゃんとのつかの間の会話。
それで許されたと思う私が楽天的すぎると、能天気だと言う人もいるかもしれない。でも、そのときのおっちゃんの言葉を、私の記念として書いておこうと思う。
とてもとても暑い日のことだった。

 ***

――私はinternationalな人は好きだ。海外に旅行する人はinternationalな人だと思う。Internationalな人は、平和を作ることができる。あなたもここに旅行に来ているのだから、internationalな人だ。
――欧米人も多い。アメリカ人であっても、internationalな人ならばいい。けれども、いつもお客さんをすべて笑顔にできるわけではない。
――私は海外に行ったことはないが、いろんな国の人たちと会っている。みんなが平和にしようと思ってくれたらいいのに。
――私は以前、歴史の本を読んだ。私は憶えている。日本は、アメリカから大きな爆弾を二つ落とされたはずだ。ヴェトナムでは使われなかったような大きなものだ。たくさんの人たちが殺されたと聞いている。つらい思いをしたのは、日本も私たちと同じじゃないか。

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