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2009.07.17

ZOO1

ZOO〈1〉 (集英社文庫) 乙一 2006 集英社文庫

苦手な描写もある。
ヴィジュアライズしたらダメだぞ。と、頭の中で警報が鳴るような。
だけど、そんなグロいはずの物語が切なく終わったりするからずるい。
この中には、黒から白まで5つの短編が収められている。

「カザリとヨーコ」
家族内の一人をよってたかって虐待することで、そのほかの家族は平和で親密な関係を維持する。そのような被虐待にあう一人のことを、スケープ・ゴートと呼ぶ。そのような家族内のシステムを、スケープ・ゴーティングと言い表す。
生れ落ちたときから当然のように虐待されてきた子どもは、そのようなことをする相手に疑問を持ちにくい。むしろ、自己評価は下がりに下がり、抵抗したり逃亡しようとする意欲や、発想すら持たないことがある。
そんな有様を端的に表現しているのが、この短編だ。同胞葛藤と母娘葛藤に気づいたときに、平和だったシステムは崩れる。
主人公の少女の、時々打算的な口調が好きだ。悲劇に酔うのではなく、したたかに生き延びようとする懸命さが愛しい。この子の選んだ行動を責めることは難しい。

というか、虐待を発見したらすみやかに児童相談所もしくは警察に通報しましょう。
現在の法律は、通告義務があります。
と、主人公の通う学校の教師に言いたくなった。

「SEVEN ROOMS」
痛い痛いグロイ痛い気持ち悪いーーーっ。
途中から予想がついた展開でありながらも、なんだかしんみりともやもや残る終わり方。
このあたりの余韻の残り方が乙一さんらしい気がする。
人は誰かの犠牲の上に生きていること。その背負う罪に気づいたとき、生き延びた人の罪悪感(survivor's guilt)が主人公の人生に落とす影を思うと、これは決してハッピー・エンドでないことが理解される。
神話的な要素もあり、メレディス・アン・ピアス『ダーク・エンジェル』を彷彿。

「SO-far:そ・ふぁー」
こっちは藤野千代『ルート225』を連想したが、結末はまったく違っていた。
ファンタジックな展開を予想させながら、とても過酷な現実にランディングさせていく。
この話、私は結構、好きだな。皮肉だけど、主人公は無力ではない感じがいい。
両親の間に挟まれ、双方の意見を伝えることで両親が別れないようにかすがいとして働こうとするタイプの子どもを、「伝書鳩」と分類する。
これも、子どもの心をひどく傷つける親の要求である。親はそのツケを払わなければいけない。

「陽だまりの詩」
これが一番好きだ。ほっとした。
切なくて、暖かくて、カレル・チャペック『ロボット』以来の命題の再現。
世界の美しさ。心の美しさ。透明感の溢れる描写に、心を打たれる。
こういう話は好きだなぁ、とうっとりするばかりだった。

「ZOO」
こいつ、だめだ。
いくらトホホでも、こいつには萌えない。
所詮、萌えないヘタレなので、同情や共感できるような深みはない。
と、むかっぱらを立てたのは、腐敗する死体の描写が気持ち悪かったから。
冒頭の描写と小説、写真と映画の対比などは非常に面白く、作者の小説観がうかがえるようだ。

乙一の描く少年少女は強い。大人たちに比べると、ずっと強い。
虐げられたとしても、屈しきらない命の強さを秘めている。
そこがまた、この作品群の魅力なんだろうと思った。

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コメント

そうそう。想像力を働かせたらいけないお話が多かったねぇ^^;;;
読んでて気持ち悪くなったのは久々だったよ。特に表題作「ZOO」は酷かった;;;
その中で「陽だまりの詩」は、切ないながらもほっとできて良かったよね。

すずなちゃん、ども。
「陽だまりの詩」以外は、心の中で悲鳴をあげっぱなしでした。
そのせいか、二冊目になかなか手が伸びません。読まないまま、持ち歩くだけの日々……。苦笑
乙一さんは上手な人だと思うけど、大好きとは言いがたいのは、そういうグロさが苦手だからだと再確認しました。

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