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香桑の近況

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  • 8月の読書 5冊。 2013年の読書 26冊。
  • 2013.5.13
    更新サボっています。
    読書はサボって……いるけど、読んでる! 現時点で2冊読了したもののレビューを書いていない状態。
    映画『図書館戦争』は初日に観に行きました! 堂上教官がかっこいい!! 小田原戦の迫力は見事。シナリオ上、場面の取捨選択はあるものの、名台詞は原作通りに大事にされている。配役もかなりイメージに沿っています。原作ファンでも、これは大満足と思いました。もう一回観たいなぁ。
    ドラマ『空飛ぶ広報室』にもはまっているため、映画を観ながら、自衛隊車両やヘリが写るたびに、この広告効果は……なんてことを考えてしまいました。
    4月の読書1冊。2013年の読書11冊。
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2009.07.12

七姫幻想

七姫幻想  森谷明子 2006 双葉社

七夕にあわせて。
織姫には、もともと、巫女、神女あるいは女神としての性質があったという。
中国から伝わった伝説であるが、いつ頃から日本にも根付いたのであろうか。
機織女に神性を見出す古代の信仰は、ハイウヌウェレ型の神話のひとつである瓜子姫を挙げてもよいし、夕鶴にも痕跡を見て取ることができるだろう。

作者は、衣通姫(そとおりひめ)の伝説に絡めつつ、オムニバス形式で7人の姫の物語を語る。
7人は織姫の7つの異称にちなんでいる。その名は、秋去姫(あきさりひめ)、朝顔姫(あさがおひめ)、薫姫(たきものひめ)、糸織媛(いとおりひめ)、蜘蛛姫(ささがにひめ)、梶葉姫(かじのはひめ)、百子姫(ももこひめ)。
彼女たちは、古代から近代へ、水際で糸を布へと織りながら、人模様、恋模様を描き出す。
歴史の背後に一つの血筋、古い血と力を受け継ぐ一族の存在を見え隠れさせながら、時代が下るほどに姫たちは神性を失いつつ、機織りもまた市井のものとなっていくのだ。

そこに謎解きの要素が加わるが、解くべき謎として人が死ぬ。
人が死ぬのは女神たちへの犠牲であるとも見なすこともできれば、瓜子姫もしくはアマノジャクが死なねばならなかったことと軌を一にするのかもしれない。
神に捧げるために死ななければならなかったのか、神であるからこそ死ななければならなかったのか。
それでいて、血なまぐさくならないのは、物語をしめるように添えられた短歌や俳句のもたらす後味のためだろう。
森谷さんならではのことで、さりげなく大伴家持や清原元輔、清少納言といった名だたる文人らが登場している。
平安時代のこととなると、ことさら、人間関係も複雑に描かれ、事件や習俗も詳しくて、先に読んだ『千年の黙:異本源氏物語』『かぐや姫の結婚』とあわせて楽しみたい。

登場人物の名前が興味深かった。衣通姫は、名前の字面に「衣」という字が入る点でも、発音に「おりひめ」と入るところでも、織姫神話の再構築にふさわしいと思われた。
次に出てくる女性の名前は「みづは」という音である。物語中では、「美都波」「瑞葉」「椎葉」などと表記されるが、これは水の迸りを表す音である。
すなわち、「罔象」という女神の名前である。熊本県の白水神社にこの女神がまつられており、罔象女神と書いて「みづはのめのかみ」と読む。弥都波能売神とも表記する。イザナミがカグツチを産んだ時の苦しみから漏らした尿の神格化である。
水であり、暗闇であり、形のない何がしかであり、水こそは生命および出産の表象である。なお、罔象の蘊蓄は、京極夏彦『魍魎の函』に詳しい。

加えて、男性名に表れる「とりひこ」。牽牛ではない。なぜ、鳥か。
ここで思い出したのが、もうひとつの織姫伝説のリライトのタイトル『鳥姫伝』。
織姫が牽牛に会うためには、カササギが橋を渡さねば。そこで鳥が関わる。鳥は織姫を慕い、助けるものでなければならない。
そう言えば、百人一首に「かささぎのわたせる橋に~」と詠んでいるのは大伴家持だ。この場合のかささぎの橋とは七夕とは関係なく清涼殿の階を指したと記憶している。
そして、最後に若い公達は牛に牽かれて、牛車に乗って、泉の姫のもとを去る。また、次の出逢いの時まで。

幾重にも織り込まれたシンボルの数の多さに舌を巻く。物語を織りなす糸を読み解くもよし、解かずにすべてを眺めて楽しむもよし。いや、織られたものを解きほぐすのは、やはり無粋というものか。
シンボルのもたらすイメージの多様性、多重性。豊穣で、贅沢で、幻想的な美しい物語群だった。
今年の七夕は愛しい人に会うことができた。でも、普段は会えない人だ。だから余計に、この物語が身にしみた気がする。

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コメント

七姫の異称だけでなく、さまざまな七夕伝説を織り交ぜてある物語だったんだなぁ~と、香桑さんのレビューで改めて知りました。
切なくもありますが、ほお~っとため息をつきたくなる美しい物語を堪能しました。

香桑さん、こんばんは(^^)。
そうですね~、七夕にふさわしい美しい物語ですね~♪
森谷さんは、とても博学な方ですね。
私は雰囲気読みをしてしまったのですが、確かに挙げればきりがないほど色々な物事を含んでいましたもんね。
美しい中にもきりっとした印象の、王朝ロマンミステリー。
素晴らしかったです。

>エビノートさん
百子姫の名称の由来、ありがとうございます! それで、最後の話に出てきた商人の「百池」という名字も納得がいきました。すっきりしましたか。
幻想と題するにふさわしい美しい物語でした。一つ一つの短編もさることながら、全体を通じての雰囲気の美しさにうっとりします。

>水無月・Rさん
さらりと読めるような文章であるにも関わらず、いろんな要素をてんこ盛りに盛り込まれていて、目を見張りました。
おじさん好きとしては、やはり元輔も捨てがたく……。今更ながら薫物合の章を読み返してみたりしました。
読書している間、とても贅沢な気分を味わえました♪

皆さんのレビューを読んでから手に入れた本だったので、ようやく読めて嬉しいです。しかも、読んだ甲斐がありました。

コメント遅くなってすみませぬ;;;実はちょいと臥せっておりました^^;最近、ヨワッチクなってイカンです・・・。

こちらのレビューを読んで、再読したくなっちゃった。そんなにいろんなものが織り込まれていたんだねぇ。そういうことは、ほとんど考えずに読んじゃう私としては、とっても勉強になりました。

すずなちゃん、調子はもういいの?
暑くなり始めると容赦がないから、どうぞお大事にしてくださいね。

シンボルを読むことが好きなんですよね。
最近、真面目にレビューを書いていなかった気がしたのでがんばりました。そんな風に言っていただけると嬉しいです。(^^)

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