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2009.06.30

千年の黙:異本源氏物語

千年の黙―異本源氏物語  森谷明子 2003 東京創元社

千年紀を過ぎてから、源氏物語関連に取り組んでみたりする。
この本も、買ったのは去年だった。

3つの中編、短編が収められている。
のちに紫式部と呼ばれる女性を主人にいただく「あてき」という名の少女が最初の主人公だ。
決して大貴族ではない、大貴族に仕える中貴族の家の中から「上にさぶらふ御猫」は始まる。
謎は、行方不明になった今上帝が寵愛する猫。謎解きはあてきのあが君。

「かがやく日の宮」はそれから数年、幻の第二帖をめぐる物語。
そして、その結末をつける「雲隠」。
物語を書くということ。人の手にゆだねるということ。
書いたものを手放さなくてはならない、作り手の不安と覚悟がひしひしと伝わる。

謎解きそのものよりも、平安時代の人々が生き生きと浮かび上がってくるところが魅力だ。
物語の比重は徐々にあてきから紫式部本人へと移り、源氏物語そのものの成立であったことを最後に思わせられる。
だが、個人的には、長い物語が編まれる時間の経過と共に、あてきやいぬきといった少女たちの成長、姫ならぬ身の女性たちの生き方に面白みを感じた。
物語の姫君にはない生き様を、物語の中で少女たちが選んでいく。選ぶ自由があったのは、妃がねとなるような大貴族の姫君ではなかった。
特に、あてきと岩丸の初々しい恋と、その後のあたりがいい。期待通りで嬉しかった。

田辺聖子が源氏物語の解題ものを書いていたと思うが(タイトル失念。従者から描写した源氏の顔が「ゆで卵のむき身のような」と形容してあったことだけは忘れられない)、そのときの感覚を思い出した。
源氏物語を知っているほうが楽しめる内容ではあると思う。確かに、朝顔や六条の登場はいささか突然すぎる。桐壷の後は、源氏が急に大人になっていることにも驚いたし。
とはいえ、そんなに知悉していなくても大丈夫。知っていれば尚楽しい、ぐらいのことだ。

それよりも、私がこの物語を楽しめたのは、先に繁田信一『かぐや姫の結婚』を読んでいたからだと思う。
実資が日記を書いている。その様子が物語に出てきただけで、嬉しかった。さねすけーーーっ!!と心の中で叫んだぐらい。
『千年の黙』に出てくる貴族たちの力関係や出来事は、『かぐや姫の結婚』で解説を読んでいただけに、物語のほうが手ぬるく感じたほどだ。
あの実資が、しかし、机の下に「かがやく日の宮」(草稿部分)を隠していたとは……。巻末に島田荘司がコメントで、源氏物語を当時の同人誌と表現しているが、真面目で賢人と名高い大貴族が同人誌にはまっていたと想像すると、なんともはや、にまにまと笑わずにはいられない。
そこがピンポイントでツボでした。

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コメント

香桑さん、こんばんは(^^)。
物語を書く者の矜持、平安時代の生き生きとした人の生活、大変楽しく読んだことを思い出しました。
実資オジサンはよかったですよね~。私も大好きです、このヒト。
実資さんの子孫のところから、「かかやく日の宮」が出てこないかと、ついつい期待・・・いやいやいや、これはフィクションでしたっけ(笑)。

水無月・Rさん、こんばんは☆
あまり期待せずに読み始めたのですが、期待以上に引き込まれました。
こういう実在の世界の、歴史の謎や闇を埋める形で描かれる物語は大好きです。
作家になる覚悟のあたりも読みごたえがありましたし、あてきや紫式部らが大貴族ではないところで生活感があって、親近感を持ちやすかった気がします。

実資おじさんにはまる自分はどんだけマイナー路線……orzと思っていたので、嬉しいです!

香桑さん、こんばんは♪
雅やかな宮廷絵巻だけじゃなくて、初恋や夫婦のやりとりとか、足元の人間模様もよかったですよね。思い出してきました。

最近、平安から離れていたのですが、またどっぷり浸りたいです♪
実資って、おそらくいろんな作品にちょこちょこって出てきてると思うんだけど、ノーマークだったせいか、殆ど印象が残ってなくて悲しいです。
香桑さんがお読みになってる「かぐや姫の結婚」に興味津々です。

田辺聖子さん、多分いろいろなところで書いてますね^^ >ゆで卵のむき身
この言葉、インパクト大で、もはや源氏といえばゆで卵くらい、わたしの中では浸透しております・・orz

susuさん、こんばんは☆
「凝脂」というと白楽天が長恨歌のなかで楊貴妃の肌を形容した表現ですが、「ゆで卵のむき身」と意訳するとどーにもこーにも……。
そう。きっと道長もゆで卵。伊周も、みーんな九条派はゆで卵。
なんだか、うなされそうです(--;;;;

平安時代は文学の宝庫ですが、真面目に歴史を勉強したことがない私には、『かぐや姫の結婚』は背景を知るためのわかりやすい教科書になりました。
小説ではないけれど、おすすめです♪

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» 『千年の黙~異本源氏物語~』/森谷明子 ◎  [蒼のほとりで書に溺れ。]
この作品は、素敵だ。紫式部が、優しく穏やかでいて、聡明でいきいきとした人物として、描かれている。ただの王朝謎解きだけでなく、物語を世に出すための懊悩や、貴族社会の熾烈な争いなども克明に描かれていて、興味深い。紫式部の周りの人物たちも、非常に人間的な迷いや欲があって、それをいやしさを感じさせず表現してるのが、素晴らしいと思う。 特に『源氏物語』「かかやく日の宮」の欠帖について描いた第二部「かかやく日の宮」は、登場人物すべての心情を丁寧に描いたところが素晴らしかったと思う。タイトルの『千年の...... [続きを読む]

» 千年の黙 / 森谷明子 [Favorite Books]
[副題:異本源氏物語] 源氏物語を紐解く文学史ミステリと本格ミステリが綺麗に融合している。因みに探偵は紫式部。 「桐壺」の帖と「若紫」の帖の間に「かかやく日の宮」という帖が存在したかもしれないという仮説があるが、その解釈は、まだ謎に包まれている。(「桐壺」から「若紫」へ進むと、物語が少し飛躍しているようにも感じられる部分があると言われている) ということと、「雲隠」という、タイトルだけの帖(光源氏が亡くなったことを暗示させる帖)があるということ。源氏物語に関しては、この2点を把握していれば、通読し... [続きを読む]

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