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2009.05.07

三匹のおっさん

三匹のおっさん  有川浩 2009 文藝春秋

呼ばれ方によって気分は変わる。
名前で呼ばれるか、役職や続柄などの属性で呼ばれるか。名字で呼ばれるか、ファーストネームで呼ばれるか。「さん」付けなのか、あだ名なのか。
学校でも、会社でも、地域でも、血族間でも、呼び方一つで関係性が決まってくるような部分がある。
大事なパートナーには、もちろん、きちんと名前で呼ばれたい。

「俺たちのことはジジイと呼ぶな。おっさんと呼べ」 (p.60)

還暦を迎えた男性3人が、地域限定正義の味方として暗躍する物語。
確かに、60歳になったから、「さあ、今日から高齢者」と扱われて平気かというと微妙な気分になることは間違いない気がする。自分が20歳になったときに、成人の自覚というものがよくわからなかったことを思い出す。
でも、私、加齢をネガティブに捉える風潮はあまり好きではない。「後期高齢者」という表現に抵抗を持った、該当する年齢の人たちの反応を見ているときに、とほほな気分になるように。
年寄りで何が悪いと開き直って欲しい。高齢者という表現にひがまれても困る。若さは善ではないし、全でもない。いつまで若作りをしなくちゃいけないのだろう。
極めて自然な現象である加齢を否認することが老害をもたらすことに繋がってはいまいか。少なくとも、年齢相応である自分の陶冶と受容は必要ではないか。
年寄り臭くなればいいというわけではなくて、この小説の中のおっさん達のように、それなりの分別のある大人になりたいし、そうなっていてもらいたいのだ。

とはいえ、この三匹のおっさん達、それぞれアブナイ顔ぶれである。キヨさんは剣道、シゲさんは柔道、ノリさんは改造した電気機器類を使いこなす。腕に覚えがあるから、自警団というイタズラを思いついた。
勧善懲悪な時代劇風味が活きている。それぞれの家族の在りようや、関わり方といった家庭内のドラマと、その家庭の置かれているコミュニティの人情にも触れつつ、そのコミュニティの希薄化をしっかりと問題視して描き出す。
性的暴力や動物虐待、詐欺商法など、身近にいつ遭ってもおかしくないような出来事をとりあげつつ、6話から構成される。
それにしても、どの事件も、大体、身近や近所に聞くようなことばかりだ。そう思うと、ほんとに油断のならない世の中だ。いやだなぁ。

悪役は共通して無名のところが興味深い。その作法は、コミュニティの外部、見知らぬ他者であり、徹底して排除されるべき存在を意味する。
この物語の身近な事件をなんとかしたい願望をすくいあげる感覚は坂木司の作風を連想したが、悪役も登場人物の一人としてその後の物語の中に回収していく坂木さんに対して、有川さんは悪役を端役として物語から去らせ、敗者復活戦はないのである。
本を読んでいると、時折、自分と同じ名前、知り合いの名前が、悪役とかぶって微妙な気持ちになることがあるのだけれども、この悪役は無名という手法なら免れられる。読み手が嫌な気持ちにならずにすむ。これはいいな、と思ったところ。

でも、現実の場面において未成年者を無名の犯罪者で済ませるかどうかは、別の話だ。
この本の中で個人的に一番後味が悪かったのは、未成年者に動物虐待の章だ。うやむやに済ませるやり方が一番気に食わん。
現実ならば尚更一層うやむやで片付けられることもさもありなんだが、動物虐待はエスカレートしやすい。そして、エスカレートする動物虐待は、放火と並んで、かなりの要注意なのだ。
それはどこまでエスカレートする危険性を持っているのか、冷静に考えてから対処すべき事柄のように思う。対象が同族であるヒトにまでなりうる、という危険性だ。
だからこそ余計に、作中の中学生2人が愛しく思えたし、救いも感じる。

雑誌で第一話を読んでいたからと積んだままにしていたが、読み始めたら止まらない、いつもの有川マジックで一気読み。
有川作品ではラブの面も見逃せないが、これも例外ではなく、素敵なカップルが育っていく。おっさんばかりのネズミ色な物語ではなかった。
ただ、もうちょっとわかりやすく書いて欲しかったな。地の文の描写が、登場人物の誰のものかがわかりづらくて。もう少し、主語を補って欲しいなぁ。
総じて、楽しい読書となりました。あー、面白かった。

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コメント

香桑さん、ありがとうございます(^^)。
・・・おっさん、カッコえぇ~。
三匹が解決してゆく事件は、身近すぎて結構・・・切実でしたねぇ。お年寄りの寂しさに漬け込む悪徳商法、子供だからと断罪されないままごまかされる動物虐待・・・。
そういう社会問題もきちんと描く有川さんが、ホントにすごいと思います。萌えも満載なのに♪

>悪役は共通して無名
おお~、全然気づいてませんでした。確かにそうですね!(^^)!。

水無月・Rさん、こんばんは☆
おっさんたち、かっこよかったですね。有川さんの新境地?と思いきや、しっかり丸ごと有川ワールドだった気がします。

某国営放送の「ご近所の~」という番組を思い出しながら読みました。
身近な問題って、自分の問題と思って一人一人が取り組まないと、なかなかどうにもならないんでしょうねぇ。
近所づきあいが苦手なのを反省。(^^;;

遅くなりましたm(__)m

おっさん達がカッコよかったね。
そうそう。作中の事件にげげん;;;となりつつ、私の周りでいつ起こっても不思議じゃないんだよなぁ・・・ということに思い至って、ちょっと恐くなりました。

***
ところで。
積読中の「あとまわし」には、おもわず笑っちゃったよ~☆

どもども。すずなちゃんが倒れていないか、心配なこの頃でした。お疲れさまです。

玄田隊長のファンとして、おっさんにはもっと素早く食いつかなくちゃいけなかったなぁと反省中です。
家族思いで、まっとうなおっさん達はかっこよかったです。

平安時代ものを続けて読もうと思ったんだけど、続かなくなっちゃった。
もりみーを読み終えたら、平安時代に戻るかもかも。

こんばんは香桑さん、お久しぶりです!
ゲンコツおやじなんて言葉は死語になってしまったのか、他人の子にもゲンコツしてカミナリ落として、その分全部受け止めるおっさんたちに懐かしさが。
観察者として語る遠い問題じゃなく、身近な問題に向かっていくおっさんたちがかっこよかったですねぇ。

雪芽さん、こんばんは。
通りすがりの子どもで挨拶がきちんとできる子を見ればなごむ反面で、近所の子どもを叱るのも勇気がいります。逆ギレというのも怖いですが、その親御さんがモンスターとも限らない。
怖いからと言って関わらないようになればなるほど、おっさん達の境地から遠くなるってことを、考えさせられました。

こんばんわ。TBさせていただきました。
「おっさんと呼べ」って言うシーンはかっこよかったです^^
おっさんで何が悪いって開き直るの、良いですね^^
それぞれ扱うテーマは重かったですけど、おっさん達がちゃんと成敗してくれてスカッとしました。
他人もしっかり怒ってくれるおっさん達、素敵です。
裕希と早苗も可愛かったです。

苗坊さん、お久しぶりです♪
残念ですが、TBは届いていないようです。どうもプロバイダ同士の相性がいま一つのようですね……。
こちらからも送っていますので、もしもこちらからのTBが届いていたら、もう一回挑戦してもらえれば、と思います。お返しならうまく受け取れることもありますから。

人生、開き直りは大切です。
開き直っていられるぐらいの人生を送っていきたいものです。
そういうまっとうさがよかったですね。

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