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2009.05.03

サグラダ・ファミリア(聖家族)

サグラダ・ファミリア「聖家族」 (集英社文庫)  中山可穂 2007 集英社文庫

なんでこんなに泣けるんだろう。
中盤を過ぎたところから、ページを繰るたびに涙が出ては文字が読めなくなった。
本を読んでここまで泣いたことは、ついぞ思い出せない。
それぐらい、泣けて、泣けて、最後まで泣いてしまった。

ピアニストの響子とルポライターの透子。
響子の前から去った透子が再び現れるとき、父親不在の子どもを産んでいた。
そして、子どもを置いて逝ってしまう。永遠に。

去年から、私の周りに死が多い。
死はいつもそこにあり、私の周りに限らず、誰の周りにもあるものだが、意識させられることが増えた。
自分や家族の死に面している人に関わるうちに、いつも私自身の指先が死に触れているような感覚が消えなくなった。
そんなときに読んだから、余計に小説の中の死に反応してしまった。
つらかったわけではない。やっと泣くことができた。そう思った。

照ちゃんみたいな人になれたらいいのになぁ。
憧れるけど、私には難しい。作者は、主人公にして、「女が男に絶対にかなわないことがひとつだけある…(中略)…それは、オカマの人のやさしさである」(p.204)と言わせる。だから、女である私には難しくていいことにしておく。
どうしても、自分を重ね合わせるなら、響子の不器用な生き方のほうになる。仕事では評価されるが、女性的、母性的な役割に同一化するのはぎこちない。

偽装結婚に養子縁組。
そこに血の繋がりはない。性の関わりもない。でも、愛なら。
目前に不在の人への愛だけで結ばれた家族は、だから、奇跡のような家族だ。
彼らは愛という神に捧げられた犠牲なのだ。だから、聖なる家族なのだ。
彼ら、聖別された家族が、いつまでもその神を忘れずにいられたらいい。
いや、忘れることなどない。きっと。
生きることは、祈りに似ている。

愛が生活に飲み込まれることへの恐れや、魂が壊れてしまいそうなぐらいの大きな喪失体験。
音楽という芸術の高揚や、さまざまな人との出会いの妙。愛して、愛されて、別れて、それでも生きている、今ここにいる自分というもの。
他の作品とも通底する作者の主題はピアノの音に彩られ、とても美しい祈りと慰めに満ちた小説になっている。

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コメント

香桑さん、ありがとうございました!
美しくも狂おしく、激しい愛の末、穏やかな新しい「聖家族」が生まれた。
その形に危惧を抱くのは、凡人だからかな・・・。
それでも、子供を愛する大人が2人いて、それが血の繋がりではなくても、たゆまぬ愛があるなら。ならば、救われるのかも知れないという、希望をもって、読了しました。

水無月・Rさん、どもです!
いや確かに、この家族像は、まだ小説の中でしか難しい気がします。そういう意味で、これはきちんと夢物語になっているんですよ、きっと。
現実にこういう家族を作ろうとしたら、桐人がいじめられそうで心配。成長するにつれて、いろいろと混乱しそうで、それも心配。冷静にみると、心配になるほうが普通の感覚だと思います。
でも、響子&照ちゃんはそんなゴタゴタには慣れたツワモノとして、しっかり桐人を守ってくれたらいいなあ。

ありえない。だから、憧れる。そんな美しい夢のような物語でした。

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» 『サグラダ・ファミリア(聖家族)』/中山可穂 ○ [蒼のほとりで書に溺れ。]
レズビアンで芸術家(ピアニスト)が主人公の中山可穂作品とくれば、いつもの身を引きちぎるかのような激しくも狂おしい愛の世界を想像して、思わず逃げ出したくなりました・・・。なんせ今は春休みで、子供たちがワーワー家に居ついてて、その手の物語を読むのは体力的にとってもキツイ気がして(^_^;)。 ですが、幸いにして『サグラダ・ファミリア』は、そこまで激情の物語ではありませんでした・・・よかったわ~。... [続きを読む]

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