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2009.05.19

恋文の技術

恋文の技術  森見登美彦 2009 ポプラ社

書簡集という形式が苦手で、もちろん作者がヒントを得た夏目漱石の書簡集も読んだことがない。
買うのも、読み始めるのも、読むのにも時間がかかったけれども、のんびりと穏やかな七尾湾の景色を思い浮かべるひと時は存外に心地よいものとなった。
往復ではないけれども、主人公守田の書いた手紙だけで、彼を取り巻く人々の人物像、相関関係、その中での守田の位置づけ、時間を追うごとの様々な出来事が透けて見える。

この作者は、同じようなことを文体を変えて何度もリライトするのが好きだなあ。
そう。渾身の技と力を駆使して、力いっぱい目いっぱい阿呆をしてみせる精神は顕在。
そういう意味では『四畳半神話大系』の実験を連想した。特に、失敗書簡集の章である。
途中までは恋文として……というか、手紙としてまともなものでありながら、どこかで崩れてしまう。その崩れ方のヴァリエーションたるや。しかも、反省が添えてあるところで、思わずぷぷっと吹き出すことしばしば。
もう一つ笑わずにいられなかったのは、おっぱい連呼のあたりだろう。こう書くと、また怪しげなTBが続々と届きそうであるが、そこまで阿呆を追求せんでも……と笑い転げてしまった。
こんだけ煩悩にまみれておきながら、もりみーの文章は妙に清潔感やら可愛げやらがあるから、ずるい。
最後の手紙なんか、読んでいる最中で愛しくてにまにましてしまいましたよ! これって、私がヘタレ男子好きなだけか??

だいたい、手紙を他人に読まれるなんて恥ずかしいことはない。日記も恥ずかしいが、手紙も恥ずかしい。
手元に送信済みの内容を残せるメールと異なり、手紙は送ったら送りっぱなし。前に何を書いたっけ?と思っても、自分で確かめようがない。
困ったことに、これまで自分が書き散らかした手紙なるものは、とっくの昔に郵便屋さんの手によって配られまくられ、私自身の手元にはないからだ。
これがいいことなのか、単なる恥さらしに過ぎないのか……。取り戻しようがないので、すみやかに処分され、各自の記憶の彼方に追いやられていることを祈りたい。
でも、手紙を書いて送る。返事を待つ。その一連の作業の間、相手を想う。この営みの喜びを知っているから、懐かしくて微笑ましかった。
メールは便利だけれども、手書きの手紙も嬉しいものなんだ。

不思議な食べ物も相変わらず。
猫ラーメンの魅惑の味も垂涎だが、ぷくぷく粽って何? それって何??と気になった。
京都で、粽であるだけに、祇園祭の長刀鉾の前とかで売っているのかなぁ。
でも、お腹は壊したくない……。
天狗ハムも初登場。赤玉先生のイラストがラベルに描いてあるとか??

ラストは読者に委ねられるが、それは手紙に書き得ないものだからしかたがない。
おそらく作者が書いたら、更なるどたばたになりそう。だから、私が思い描くほうがおとなしくハッピーになっている気がするので、勝手にハッピーエンドを想像することにする。
本はそもそも赤い風船に結び付けられた手紙のように、作者の手元から離れたところに行ってしまうものなのだ。
書簡集が苦手な人でも、結構、読みやすかったことを付け加えておく。

追記:これは初恋の思い出(正確には、過去の自己愛の傷つき)を乗り越えて、年齢相応の現実を受け入れる物語だよなぁ。不安を乗り越えて、今の幸せに向かい合い、受け入れる。肥大した自己愛から、等身大の自分自身の受容へ。そういうところが、すごく健全でいい。不幸に酔う自分を捨てることができたら、幸せになる可能性はぐっと増えると思った。

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コメント

香桑さん、こんばんは(^^)。
ヘタレ男子大好き、トホホには愛がある!を今年のモットーにしている水無月・Rでございます(笑)。
大文字山での一大イベント、ハッピーエンドですよね♪
もちろん、ツッコミ処満載、ドタバタ大波乱の上の、大団円ってことで。
しかしホント、モリミーの「繰り返されるパラレルワールド」(しかも全てがトホホ(^_^;))は、いつもながら素晴らしい。
やっぱりモリミー、大好きですぅ~!

水無月・Rさん、こんばんは♪
愛すべきヘタレでトホホな男子を書かせるなら、もりみーはトップバッターですね!

大塚大魔王様や愛すべき妹やマシマロマンがどたばたを繰り広げる中、「やむを得ぬ!」とにっかり笑った伊吹嬢が、守田氏の手紙がついた赤い風船をがしっと握って掲げているところを想像してみました。
うん。きっと、守田氏はその前でよつんばorzの姿で、泣きながら伊吹嬢の笑顔を見上げていることでしょう。死にそうな目(気分的に)にあって、もうだめだ~と何度も泣きたくなって、ついにラストで感涙するんだ。きっとそうだ。
……縁結びには、タケミカヅチノミコトが一役買っていたりして。想像はとどまりません。

コメントが遅くなりました;;;てか、その前にTBも遅くなったけど^^;

なんといっても「失敗書簡集」が最高に面白かった~!だんだんと壊れていくのも笑えたけど、あの反省文がとどめを刺すって感じで、も~勘弁して~と笑い転げました☆

うん。あの反省文が好き。
その前に、壊れていく失敗書簡がとても好き。
でも、あそこを味わうためにはその前の七転八倒を読まなくちゃ面白くないですね。
罰ゲームのために恋文を書かなくちゃいけなくなったと思いきや、日付を見たらそれ以前から取り掛かっているという……。
切ない男心を感じつつ、容赦なく笑わせていただきました。

すずなちゃん、お疲れ様~☆ 忙しいのは分かっているので、気になさらず。

これまでの作品のあれこれが顔を覗かせたりと、今回も楽しい作品でしたね~。
一番の魅力は、手紙の面白さでしたが、こんなに楽しい手紙なら(失敗書簡であれ)もらってみたいもんです。

エビノートさん、こんばんは。
単なる書簡集で終わらせず、失敗書簡集や大文字山への招待状など、後半にかけてますます面白くなっていきましたね。
あんなにきちんとお返事をもらえたら、それが楽しみで文通が続いてしまいそうです。

香桑さん、こんばんは~。
在りし日の文通の楽しさを思い出しました。
レターセットを選ぶワクワク感も捨てがたかったなぁ。
大きな声で言うのは憚られますが、封筒と切手のコーディネートにまで拘りを発揮していたわたしです;;
風船も飛ばしました・・orz

失敗書簡集、楽しかったですね♪
特に卑屈バージョンや、我流文語体バージョンなどがツボでした。
「お詫びの言葉もなかりけりで候」がお気に入りですw

susuさん、こんばんは☆
おお。風船も飛ばしたことがおありなんですね! 私は「ボトルメール」というブログパーツを連想しましたが、やっぱり、電子メールよりも生のお手紙のほうが味わい深い気がします。
自分の字の汚さにへこみつつも、おっしゃる通り、便せん選びに、ペンの色を変えてみたり、封筒に貼るシールだとか、こだわりようがいろいろあって楽しいものです。実は、この本を読んですぐに便箋を買いに行ったのですが……使っていない……orz

一番大笑いしたのは「やぷー」。もりみーも若者だったんねぇとしみじみとしつつ、爆笑しました。ほんと、楽しかったです。

こちらにもこんばんは。
阿呆で煩悩いっぱい、守田のヘタレ男子ぶりがとても愛しくなる話でした。
失敗書簡集には笑いました~
反省文がさらに可笑しい!!(笑)
最後はハッピーエンドですよね、きっと。
なんだかんだで幸せな恋を手に入れるヘタレ男子たちです。

雪芽さん、こんばんは。
失敗書簡集、大人気ですね♪
切ない片思いのはずが、読んでて照れてしまうようなラブレターには、決してならないところがすごい。
このヘタレっぷりこそ、守田氏がどんなに吠えてみても、森見氏に黒髪の乙女たちが群がる魅力ですもの。
もりみーは、以前、成就した恋は物語にならないと書いていたので、ここで終わったということは、きっと恋が成就したことだと思ってあげます。守田氏への御褒美です。笑

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