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2009.04.21

母が重くてたまらない:墓守娘の嘆き

母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き  信田さよ子 2008 春秋社

そこに、愛はないのだろうか。
愛の名のもとに母親は支配や共依存(依存されることに依存すること)をしかけ、怒りと罪悪感、無理解と絶望が娘を雁字搦めにしている。
そこから逃げ出さなくてはならないのか。娘に母親から逃げ出せる可能性はあるのか。娘は母親をすでに内在化しているというのに。

小難しい本ではない。文字は大きめで、具体的な事例も多く、簡潔にさっくりと、密着する母と娘、不在をかこつ父が織りなす家族の問題と処方箋を描き出す。
どことなく殺伐とした気分になるのは、娘の愛されたいという願望と、母親の中にあるかもしれない無条件の承認や愛情の部分が、措かれているからだろうか。
斎藤環『母は娘の人生を支配する』と続けて読んだが、『母は娘の人生を支配する』は男性の目線から「母-娘」関係を発見しなおす。母から娘の束縛性を普遍的なものとして取り扱っているところから、病的とまではいえない母娘にまで開かれている。
それに対して、『母が重くてたまらない』は「母親」(現実であれ幻想であれ)の束縛に明らかに苦しんでいる女性に向けて描かれている。女性である著者が、豊富な臨床経験の中から紡ぎだす娘の苦悶は実感がこもっており、母親の欲望の醜さと戦略のあざとさに打ちのめされるのだ。
多少、光の当て方や切り口は異なっているかもしれないが、だからこそ、2冊をあわせて読むことは母と娘の問題への理解を深めることになるだろう。

私は墓守娘の資格は十分だ。そう思い、なんとも言えない共感をもってタイトル買いした。
一人っ子で独身。兄弟もおらず、夫もおらず、子どももおらず、夫もいないから養子も持てず、間違いなくうちの家系は私で途絶える。最後の墓守である。
何年も前のこと、母は私に「総領は親が死ぬまで家を出られないのは当たり前だ」と怒鳴った。その後、何度、結婚を促されても、私の心は冷えるようになった。どの口で、それを言う。母はそんな啖呵は切ったことがない、忘れたと言うが、私には決して忘れられない一言である。
逆に、何度も家を出ようと思った。家を出る手段として手っ取り早く結婚を思い浮かべないこともなかった。私は男運の無さに自信があるのも難点だった。
結局はあきらめて、そこそこ隷従しつつ、じわじわと自分の領域を増やしている。そんな母にわかってもらいたいとか、変わってもらいたいという願望はいつの間にかあきらめた。そんな母であっても嫌いではない。そして、そんな母と過ごせる時間も先が長くないと感じている。それなりに愛しく、私にとってもはあまりにも大きな存在である。
今になると時々、両親と老後や死後の後始末を話すことがある。あまりにも墓をどう守るかという話題が重くなると、私は言い返すことにしている。私は無縁仏決定なんだけど、と。私が両親の墓をどうにかすることができるとしても、それはあくまでも私の代までだ。私を看取り、弔う人間はいないのだが……。順番通りならね。

そういう墓を守る段になったときの孤独感を扱うことを期待していたので、少し物足りなさを感じているのかもしれない。
纏綿とした関係も、究極では死が救済となることもある。もちろん、折り合いがつくならそれに越したことはない。
臨床家にとっては、母親、父親、娘自身に対する心理教育的なアプローチの材料を、惜しみなく処方箋として示してある点が非常に有益になろう。
その箇所は、現に悩んでいる人にとっても、温かな励ましの言葉、生き延びるためのヒントになることは間違いない。

ただ、忘れずにおきたいことは、母もまた誰かの娘であったという、そのことのような気がする。
だから、母とも娘同士という立場で連帯ができる希望を持っている。女同士という立場で連帯することがなかったとは言えないのだし。
重たいのは重たいけど、まあ、しょうがないさ。

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» 子供の人生を取り戻せ:母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き [本読みの記録]
母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き作者: 信田 さよ子出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2008/04/10メディア: 単行本 娘の人生を支配する母親の物語。 過保護の行き着く先には、娘が一生母親のドレイとして生きるしかない悲惨な結末が待っている。 ... [続きを読む]

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