愛すべき娘たち
買ったきっかけ:
初めて読んだ、よしなが作品。
雑誌でこのうちの一話を読み、続きを追い、今はゆっくりよしなが作品を集めている。
感想:
斎藤環『母は娘の人生を支配する』に、このマンガが題材として出てきて、読み直してみた。
オムニバス形式で、何人もの愛すべき娘たちが登場し、そこかしこで涙があふれた。
登場人物それぞれの不器用さが愛情をもって描かれている。その不器用さと、切実さや真剣さが愛しくなる。
愛しくて、愛しくて、涙が出た。かつての自分、かつての友達、今の自分、今の友達、あるいは母親、いつかどこかで出会い、すれ違った女性たちを思って。
絵の描写も好きだが、言葉の一つ一つが胸に響く。記憶に残る言葉が多い。確かに、分かっていることと、許せることと、愛せることは違う。
この錯綜したしがらみを束縛として窮屈さを感じることがあろうとも、確かにその絆に結び繋がれながら生きていることが、この作品を通じて温かく受けとめられるような気がした。
おすすめポイント:
娘から母へ、母から娘へ。愛しいとは言い切れないこともある。けれど、愛すべき不完全な女達の物語。
図式化されていたとしても、だからこそあえて、読み手はそこかしこに自分を見出すことができるのではないだろうか。
まったく断絶を感じていた相手とも、女というだけでかすかに通じ合うようなことがあるよね、と頷きたくなるリアルさがあった。
もしかしたら、男性同士にもあるのかもしれないし、人間同士にあるものかもしれないけれど、女である身には女性同士のゆるやかな連帯感を鮮やかに印象深く描き出した作者に、こころからの拍手を。
そこに、愛がなかったとは言えないと、知ることができるから。(2006/6/7)
愛すべき娘たち (Jets comics) 著者:よしなが ふみ | |
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