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2009.04.20

母は娘の人生を支配する:なぜ「母殺し」は難しいのか

母は娘の人生を支配する―なぜ「母殺し」は難しいのか (NHKブックス)  斎藤 環 2008 日本放送出版協会

精神分析を始めとする心理学系の本を読んでいて、わかってないなぁと冷ややかな笑みを浮かべたことはないだろうか。
いや、小説でもいい。男性による女性の心理の描写の限界、心理の理解の限界、あるいは、ファンタジーの在り処を感じて、冷笑か溜め息が出ることがある。

本書は、ひきこもりを専門とする臨床家である斎藤環が、ひきこもり症例の男女差から出発して、「母-娘」関係は、「母-息子」関係とは異なる様相を持つこと、ましてや、「父-娘」関係、「父-息子」関係とも異なっていることに問題意識をもって語り始める。
男性が、「母-娘」関係の特異性に注目することは少ない。なぜならば、男性は「母ー娘」関係の中には存在しないからであり、無関係だからこそ気づかない。にもかかわらず、「母-息子」関係、「父-娘」関係、「父-息子」関係の単純さとは比較にもならないほど、「母-娘」関係は複雑に入り組んでいる。
あったりまえじゃーん。と言えるのは、おそらく、女性の読み手であろう。
その女性にとってはおそらく日常的に体験する、娘の立場から母親との間に巻き込まれる愛憎、あるいは、母親として娘との間で繰り広げられる愛憎に、どのように男性が理論的に切迫するかが、本書の読みどころの一つではないだろうか。

著者が男性である以上、自分自身の感覚や体験から語ることはできない。
材料となるのは、ひきこもりや摂食障害といった母-娘関係が重要なファクターになりやすい症例や、新聞や雑誌の投書、事件報道、あるいは、小説や少女マンガ、映画など、多彩である。
よしながふみ『愛すべき娘たち』が使われているのは、ファンとして嬉しい。萩尾望都『イグアナの娘』や角田光代『マザコン』、川上未映子『乳と卵』など。物語の読み解きでは大塚英志がワンクッションとして入るところも、私にはとっつきやすかった。
それらの材料を縦横に組み合わせながら、母による不可避的な支配と娘は戦っていることを浮き彫りにする。
母の呪縛はこれまでも様々な切り口で部分的に理論化されてきたことを俯瞰し、しかも母親側も女性性と母性という困難さを抱え込まされていることをまで指摘する。ルソー以来の、社会制度に組み込まれた母性である。
不遜かもしれないが、この中では、私が普段書き散らかしていることが整理されているような気がして、私もあながち間違ったことを言ってないなぁ、と思ったりなんだり。

著者がさすがであるのは、安易な解決法を提示しないところだ。
そもそも、治療すべき課題であるのか?と極めて慎重な姿勢を見せる。とても冷静で好感が持てる。たとえ、母が娘に、娘が母に困っていても、それが医療に持ち込む問題であるかどうか、個々に判断する必要がある。

娘が母親を殺すことなく生き延びることは許されないのだろうか。
私自身を思う。私の母を思う。非常に母子密着しがちの親子関係だと思う。一人っ子として、理想の娘役と同時に息子役を背負わされていると感じ、家を出て過ごしたこともあった。再び同居してからは喧嘩も多い毎日があったが、今になって、私は同居しながら結構好き勝手に生活できるようになった。
おそらく母が死んだとき、私は孤独感と解放感の両方を味わうだろう。そうしてみると、父親よりも、やはり、母親のほうが、私の人生におけるインパクトが大きい。
ほどよい母親であることは難しいと言われる。同じように、ほどよい娘であることも難しい。しかし、そうしてお互いにほどよい距離を探していくほか、ない。
近すぎれば束縛でしかないものも、緩めれば絆になる。断ち切ればよいとは限らぬ。

タイトル買いした本であるが、手元に届いて見ると、表紙のイラストはよしながふみだ。本屋で見かけていたら、ジャケ買いしていたかもしれないなぁ。
母子関係とは直接関係ないトピックとして、オタク文化の男女比較なんてあたりも面白かった。
ある程度の心理学になじみがないとわかりづらい箇所もあるかもしれないが、女性のみならず、男性とも共有したいトピックだと思った。

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