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2009.02.09

天翔の矢:ヴァルデマールの使者3

天翔の矢―ヴァルデマールの使者〈3〉 (C・NOVELSファンタジア)  マーセデス・ラッキー 澤田澄江(訳) 2009 中央公論新社(C.NOVELS)

最後のページでは涙が止まらなかった。
ハッピーエンドである。が、涙がぼろぼろとこぼれて仕方がなかった。

タリアを主人公とする「ヴァルデマールの使者」の完結編。
いよいよハードーン王国のアンカーが出てくるため、気が重くなりながら読み始めた。
私がタリアの名前を初めて見たのは、ケロウィンが主人公の『運命の剣』だ。そこでは、アンカーとの因縁が深いことを予想される表現がなされていた。もちろん、アンカーがどのような人物であるかも。
何がタリアを待ち受けているのか、予想ができる気がして、嫌な気持ちになっていた。

ラッキーの描く世界は平和ではない。
私利私欲のために他者を踏みにじる邪悪な人々がおり、国々の間に戦争が起こる。
私はラッキーが野戦を描くときのアクチュアリティに感銘を受けているが、『ヴァルデマールの使者』では戦争は主に宮廷陰謀劇として描写されていく。
女王補佐であるタリアは、陰謀を防ぎ、女王を守り、国境を守ることができるのか。
宮廷での人物関係が多く出てくるために、また、タリアとダークの恋の行く末も大事な筋であるために、これまでよりも共に歩むものローラン達の出番はちょっと少ない。

ラッキーの描く世界は犯罪も起きる。
人が死ぬことも多いが、ある意味では殺人よりも残酷とされる、虐待や拷問を物語に持ち込むことも辞さない。
これまで私が読んだ中でも、ケスリーは少女時代に性的な虐待を受けたし、アイドゥラは拷問の末に殺された。タリアも身体的な虐待を受けつつ育ってきている。
作者が素晴らしいのは、性的な暴力を悲惨で致命的な傷つきを演出するために用いるのではなく、そこから回復する登場人物の力強さ、そういう傷つきから回復できるという希望や可能性を描くところだ。
どんなに苦しくても、つらくても、怖くても、悲しくても、彼女達は決して誇りを失わない。そして、再び立ち上がる。
その力強さこそ、私はラッキーの小説の魅力だと思っている。

読み終えると、この三部作はきちんと練られて書かれた小説だとわかる。
そして、既に読み終えたシリーズの間に、ぴったりと収まるのだ。
その後のヴァルデマールとハードーンの話を読み直したくなった。ケロウィンからエルスペスに引き継がれていく剣の物語だ。
でも、ケロウィンの物語を読むなら、その祖母達の物語からひもときたくなる。

次はどこの出版社から、誰の物語が出るのかなぁ。まだ訳されていない本があるらしい。まだまだ読みたい世界なんだ。あとがきでは、次は薄幸の美少年ヴァニエルとある……。
異世界ファンタジーが好きな人、女の子や女性が頑張る物語が好きな人には、是非とも勧めたい世界である。知性的で、自制がきいていて、成熟した男性陣もそれぞれ魅力的。
さりげなく、同性愛や多宗教・多民族の共存を取り入れていたり、アメリカ的な要素がよい意味で働き、物語を中立的で複雑にしてくれているような気がする。
とにかく、物語を読む醍醐味を存分に味わわせてくれる一押しファンタジーだ。
難しいことは抜きにしても、ほんとに面白いんだから。

 ***

  宿縁の矢:ヴァルデマールの使者2
  女王の矢:ヴァルデマールの使者

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