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2009.01.10

天使の骨

天使の骨 (集英社文庫)  中山可穂 2001 集英社文庫

本には、読む「とき」というものがある。
読みたくて積み重ねていた本も、その本が「今だよ」と囁きかける瞬間を待たなくてはならない。
その声に耳を傾けるとき、なんともいえない時間を持つことができるのだ。

中山可穂の本はうかつに読んじゃいけない。
胸が痛くて、涙が止まらなくなるような、死にたくなりそうな恋の話は、今は読めない。
気持ちを揺さぶられて、私のほうが死にたくなって、立ち直れなくなる。そんな思いから、ここしばらくは避けていた。
それなのに、『天使の骨』に呼ばれた。順番が来たと本が言う。あの『猫背の王子』の続きを書いた本なのに。
仕方がない。今の恋が終わったらどうせボロボロになるのが目に見えているのだから、終わるしかない恋なのだから、来る日のイメージトレーニングとでも思うか。
私はようやく呼び声に応えた。

演劇と恋人と、そのどちらも失ったミチルは、やむをえず旅に出る。
飲みだくれて、酔いどれて、身を削って、心を削って、魂を削って。
天使に手招きされながら、誇り高く日本を出る。死ぬと言われた西へ向かって。
トルコからヨーロッパを、ユースホステルに泊まり、ユーレイルパスで移動する、旅だ。
のっけから死に掛かっているところが、中山さんの主人公らしくって、なんとも愛しくなった。
不器用で、潔いから余計に不器用で、誇り高いのに無様な姿をさらしながら、傷ついても茨の道を歩むことをやめやしないのだ。

主人公と一緒に、ボロボロな気分を味わうかと思ったら、途中から元気になってしまった。
なんてことだ。予想外だ。これは、死と再生の物語だったのだ。
どんなに涙を流し、胸をかきむしり、自らを痛めつけたとしても、どうしても生き延びてしまう。
中山さんの描く登場人物の多くは、何度ボロボロになっても、また恋をする。そんなタフさを持っている。

「男がだろうが女だろうが関係ないよ。どんどん好きになって、何度でもふられて、いい歌が歌えるようになるんだ」(p.205)

ローザという、ファドを歌う、母親のような偉大な凄みと温もりのある老女の言葉に出会えたことが僥倖だった。
私の荷物がすとんと落ちたのを感じる。ああ、何度ふられても大丈夫なんだ。きっと致命的なことにはなりやしない。
何度でも恋をして、何度でも失恋をして、それが私のいい仕事の糧になると言えばならないこともない。
ダメなら、ファドを習ってやる。そういうことにしておこうか。

ああ。旅に行きたい。
こんな命の限界に挑戦する旅じゃなくていいから。もうちょっとモデラートな旅で。
一人ではびーびー泣けないかもしれないけれど、逆に思い切り泣けるかもしれないし。
この恋が終わったら。恋がいつか終わるものならば。

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