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2009.01.09

推定少女

推定少女 (角川文庫)  桜庭一樹 2008 角川文庫

これのどこがハッピーエンドなんだ。
解説を読みながら、子どもの頃の自分が反抗するのを感じた。

小説にしてマルチ・エンディングというところに、軽い驚きを感じながらページを繰った。
最終章以外は、物語は一筋に進む。桜庭一樹が描く少女らしい、痛みと怒りを甘さでくるんだような、少女でしかありえない少女たちの物語だ。
主人公のぼくこと巣籠カナは、全裸で凍りついていた美少女・白雪と出会い、夜を逃げる。
家族内の問題や、教室の中の閉塞感、世代特有の焦燥感や無力感。胸の奥がひりつくような懐かしさが立ち上る、圧倒的な既視感。
あの年頃の気分を、どうしてこう、この人は書くのが上手いのだろう。大人になりたくない、あの頃の気分を。
大人になることが途方もなく難しく感じていた。ましてや、大人の女性なんてものは別の生き物だった。

逃げ出したいほどの現実の中で。
だけど、それは逃げ出したいだけで、どこかに行きたいわけではない。
消えてしまいたいけれど、いなくなってしまいたいけれど、死にたいのとはちょっと違うんだ。
誰も彼も、私のことなんか忘れてしまえばいい。私なんて最初からいなかったことになればいいんだ。だから、私の存在の一切の痕跡を残してはいけない。
誰か私を見つけて。いや、誰も私に気づかないでいて。
見つけるのは、たった一人でいい。気づくのは、たった一人でいい。あいするのは、その人だけでいいんだ。その人があいしてくれれば、きっとそれだけで生き延びられる。

作者のセンスにうなったのは、「あいしている」と子どもが言うのは難しいというところだ。「それは大人の言葉だから」と。
年齢的には大人になった私は、そこで我に返って苦笑いをした。
はたして、愛を語れるほどに、私は大人になれているだろうか。
普段、一応の社会人のふりをしているが、中途半端で不器用で、あっちで傷つき、こっちで傷つけ、壁に向かって床にしゃがみこんでのの字を書きたくなるようなことが相変わらずあるというのに。

同時に、私は主人公達の気分を、私を取り巻く環境の中、知っている子ども達の中にも見出すことができる。小説を読んでいて、これはあの子の物語じゃなかろうかと思い浮かぶ顔があり、切なくて仕方がなかった。
今現在、逃げ出したいほどの現実の中で、逃げ出したくて仕方がないのに逃げ出すことを許されない子ども達。その子ども達を、私は確かに愛しく思うのだ。
私も、少しは大人になれているのだろうか。

逃げても、逃げても、現実は追いかけてくる。
現実からは逃げ切れない。現実に追いつかれ、飲み込まれる。
そんなエンディングが、なぜ、ハッピーエンドになるの?
Ending2を読み始めたところから、私は泣き出してしまった。主人公が現実に戻れたことを喜ぶよりも、逃げ切れなかったことのほうが、私は悲しかった。
Ending3でも、同じように涙が出た。『少女に向かない職業』の主人公に比べれば、ずっとハッピーかもしれないが、一番、穏当な終わり方だとわかっているからこそ、大人にならなければならないことが悲しかった。

もちろん、大人になる、生き延びることで得られることのハッピーがある。
私自身、あの頃よりも今のほうがずっとずっと楽で幸せなのだから、それを否定するつもりはない。
でも、せっかくのSF設定なのだ。一人ぐらい、そのまま逃げ切ることを許してあげてもいいじゃないか。
そんな風に、私の中の子どもがぶつくさと言っている。全部を読み終えて、そんな風に感じている。
だから、私には、Ending1が一番のハッピーエンドだった。

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コメント

香桑さん、こんばんは(^^)。
なるほど・・・香桑さんは「逃げ切れるend」を支持してらっしゃるんですね。

~~だって、白雪は宇宙人かもしれないじゃない。
   なら、ずっと一緒に逃げられるかもしれない。
   どこまでも、逃げていくんだ。
   ずっと、二人で。~~
そんな終わりがあっても、いいのかも知れません。

私は逆に、ending3の「安全装置」に救いを見出して、自分を安心させてました。
「大人になってもいいのだ」という〈許し〉が描かれていたように思いました。
もしかしたらそれは、私自身の逃げなのかも知れません。

水無月・Rさん、こんばんは☆
いつもだったら、私はEnding3を支持すると思うんです。カナが白雪と電脳戦士を失ったことを寂しく思いつつも、千晴とふんわりとした関係を深めながら生き延びていく様子にほっとすると思うんです。
桜庭さんの小説では、いつも主人公は現実に追いつかれてしまう気がします。現実から逃げる方法は、「死」しかないのです。でも、この小説はSF要素が入っていたので、非現実なEnding1をOKにしてあげたくなったんだと思います。桜庭小説の主人公の中で一人ぐらい、子どものまま、現実に背を向けたっていいじゃないかと許してあげたくなったのです。カナと白雪を別れさせたくなかった。
自分でも、自分の気持ちの動きに驚いています。

それぞれに好きなEndingが違っていて、面白いですね~。
私は、カナも白雪も千晴も電脳戦士もだれもが戦場で生き残ろうとしている、そんな風に思えたEnding2に惹かれたのかも。「生き残ったら勝ち」という言葉に、どうか生き残って!と祈りたくなっちゃいました。

エビノートさん、こんにちは。
ほんとに面白いですね。こんな風に意見がわかれると、Endingを3種類とも公開してくれた作者&出版社の方も甲斐があったのではないでしょうか。
場所は違えど、それぞれが精一杯生きていくことができたら。

ほんとは、大人の「ふり」で、十分生きていけるんですけどね。(^^;;;

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