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2008.12.15

女という病

女という病 (新潮文庫)  中村うさぎ 2008 新潮文庫

乗り移るのか、乗り移られるのか。
13件の女にまつわる事件。その被害者に、その加害者に、作者は寄り添いながら、女の物語をつむぐ。
それは、とりもなおさず、「私の物語」であると作者は高らかに宣言する。
この前書きを読み違えてはならない。この前書きに、作者の真摯さと切実さを感じる。
これは女の物語であり、中村うさぎの物語であり、読み手である私の物語となる。

中村うさぎ。
この名前を知ったのは、彼女がジュヴナイルもののファンタジー小説を書いていた頃だ。
「ザ・スニーカー」が創刊されてすぐの頃じゃないだろうか。彼女のエッセイに、安永航一郎がイラストを描いていた。
内容は買い物依存のエピソードだったと思うが、以来、中村うさぎの名前を見るとあのときのイラストが必ず思い浮かぶ。たぶん、ビンボー日記のシリーズだ。
でも、彼女の小説は読まなかった。それがちょっと残念に思えた。この本を読んで。
彼女の知性と理性にしびれた。

「女の自意識は、それ自体、病である」(p.3)
なるほど。
女である。ただそれだけのことが、とても苦しいことがあるのだ。私はよく知っている。その苦しみをここまで言語化した人がいたことに、驚いた。
ああ。
ここにも私がいる。そこにも私がいる。もうひとりの私、今の私がならなかった私、私が選ばなかった私がいる。そんな親近感を覚えることを禁じえない。
裏返せば、女である、それだけで、いくらかのシンパシーを共有しうるということだ。
なぜかならば、同じ病を持っているということだから。

小説の手法で主人公の心情に読者をひきこみながら、それでも彼女を断罪できる?と見つめられているような感じがした。
単なるルポルタージュを読むよりも面白く、露悪的かもしれないが良心的で、ある種の潔癖さを感じる。他者を描きながらも、自分自身の自由と責任において、身一つで戦おうとする高潔さを感じる。
作者は、小説家であって、社会学者でもなければ心理学者でもない。解説で指摘されていることであるが、おおよそフェミニズムの範疇に入るないようでありながら、客観性をなんとか確保して学問と成り立たせようとした文章ではなく、とことん主観性を大事にした血と肉の通った言葉が紡がれている。
詩人の直観に満ちた言語は、思考に基づく言葉がふるい落としがちな身体感覚や情緒の次元を汲み取り、言葉にしてみせるのだ。これはすごい才能だと、私などは思うのだ。

「欠落」と「過剰」をキーワードに、中村は女性を観察し、分析し、理解する明確な枠組みを有していることを感じる。
中村は、13件の事件に関わる女性たち(一つの事件に登場する女性は一人と限らないので13人ではない)を合わせ鏡にして、自分をあぶりだす作業をしているので、この本は自己分析のプロセスとして読むことも可能である。
そして、自己分析であるからこそ、読み手に迫る説得力があるのだと思う。おそらく、彼女自身の体験をベースに想像を膨らませており、作者が自分自身の体験を語ろうと振り絞っているがゆえに、生半な反論を許さぬ説得力を有したのだと思う。

女であることは、私にとって、病ではなく呪詛であった。
いつからだろうか。長らく、私はそう感じてきた。今もまだ少しはそう思っている。
病のように私の内側に深く刻み込まれているが、この傷は外から与えられたものであるので、病ではなく呪詛だ。
これは、男にはわからないという絶望をもたらす呪詛である。
でも、女にわかりあえるかもしれない人がいるのなら、まあ、いいか。

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