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2008.11.27

深爪

中山可穂 2003 新潮文庫

愛撫に爪は邪魔者だ。
私が相手を傷つけないように。
相手の内側を傷つけないように。
短く切った爪先が、欲望と愛情とを暴露するのだ。

タイトルの意味は、このように読めばわかる。
3編の中編は、主人公を変えながら、一つの物語をなしている。

「深爪」は人妻との恋愛に絶望し、別れるしかなくなった女性の物語。
なつめが蚊帳の外から恋人の吹雪を想う孤独は、昔の恋を思い出して懐かしくなった。
餌をもらったことがある家の玄関で、内側の暖かい団欒を感じながら、一生懸命、爪を立てて扉を引っかくのに気づいてもらえない野良猫のようだと、思っていた頃を思い出したのだ。
なつめにはシンパシーを感じる。すると、当然のように吹雪が嫌に感じた。

「落花」の主人公は、その吹雪。自分のセクシュアリティを意識しながらも結婚して、子どもを生んで、夫の了解のもとに女性と浮気を繰り返し、なつめと出会った女性。
なつめと出会ってからの吹雪は、夫との性交渉を避けるようになる。拒否される夫のほうが気の毒に感じる。吹雪がずるいと思ってしまう。
もともと浮気なんてものがずるいのかもしれないけれど、そう思ったことが、自分にも跳ね返る。

「魔王」では、吹雪に出て行かれた夫マツキヨが、子どもを大事に育てようとする。
母親の代わりになろうとし、母親以上になろうとし、それでも母親を失って明らかに不安定になっている息子を案じている父親。
別れた妻の不利になるようなことを親族や近所の誰にも言わず、妻のセクシュアリティを理解できずに困惑し、ただ妻を愛している夫。
このまなざしから補完されることで、やっぱり吹雪の人物評価を下げたくなってしまう。こんな男の人、大事にしなくちゃ!

だけど、回りまわって、不倫には向かない吹雪の性格には、同族嫌悪のような親近感もある。
「自分のお気に入りや傾倒しているものについて誰かに話さずにはいられない」(p.31)のだから、やましいことに手を出すと自らの首を絞める。
周りが見えなくなるような恋をする吹雪のみならず、その恋の周りで振り回されるなつめとマツキヨを描いた点で、恋の最中の人が見落とすものを思い出させるような小説だ。
少しタイムリーすぎて、いろいろと考えてしまった。向いていないことは、やめておいたほうがいいんだ。きっと。

フィンガードムを用いれば更に安全度は増すが、それは恋愛小説にしてはいささか色気がなくなる。爪が長すぎると、フィンガードムも使えないだろうし。
それに、直接触れるという行為が、特別なのだ。愛しい人の内側に。

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