本からはじまる物語
恩田陸・本多孝好・今江祥智・二階堂黎人・阿刀田高・いしいしんじ・柴崎友香・朱川湊人・篠田節子・山本一力・大道珠貴・市川拓司・山崎洋子・有栖川有栖・梨木香歩・石田衣良・内海隆一郎・三崎亜記 2007 メディアパル
なんてまあ、豪華な執筆陣。
梨木香歩や恩田陸の名前もあるし、友人の勧めもあって購入。
真っ先に梨木香歩「本棚にならぶ」を読んだら、ひどくぞっとしてしまった。これは怖い。視力を失うことを子どものときから恐れていたせいか、なんだか無性に怖かった。梨木さんの新たな面を発見した感じだ。
そこから最初の恩田陸「飛び出す、絵本」に戻り、順番に読んでいった。
どれもが、本を題材に取り上げるか、本屋を舞台にしているか。そのため、書店員の仕事振りがのぞかれるものも多いし、名作を上手にパロディにしているものもある。作家の本というものへの思い入れを感じさせられることが多い。
また、相性のよさを感じる作家と出会うこともあれば、残念ながらそれほどでもない作家と出会うこともあり、普段は読みなれていない作家との新しい出会いがあるのが、こういうアンソロジーだ。
恩田陸「飛び出す、絵本」では、大好きな絵本が出てきて嬉しかった。品のよい子も、やんちゃな奴も大好きだ。
本多孝好「十一月の約束」や阿刀田高「本屋の魔法使い」は好きな系統。いしいしんじ「サラマンダー」や静かに感動する。市川拓司「さよならのかわりに」や内藤隆一郎「生きてきた証に」では思わず涙ぐんだ。
今江祥智「招き猫異譚」は、もりみーの京都と地平の繋がっている世界だ。本屋さんにみつくろいをしてもらえる体験に、うんうんと頷いた。朱川湊人「読書家ロップ」と並び、猫好きには嬉しくなる。山本一力「閻魔堂の虹」も、本屋の店番に猫が出てきた。
二階堂黎人「白ヒゲの紳士」や山崎洋子「メッセージ」は、本屋さんを舞台にした、ちょっとしたミステリ。大崎梢を思い出す。
柴崎友香「世界の片隅で」、石田衣良「23時のブックストア」は、本屋さんならではの、書店員さんの仕事振りを覗く一編だ。
同じく本屋さんを舞台にしていても、篠田節子「バックヤード」に含まれるファンタジーはすごく素敵だった。
有栖川有栖「迷宮書房」もある種のファンタジーであり、本屋の猫の物語であり、上手なんだけれども、一発芸に近い感覚。
大道珠貴「気が向いたらおいでね」は、残念ながら私はあまり好みではなかったほう。
そして、最後の三崎亜記「The Book Day」は秀逸。冒頭の恩田陸とゆるかな一対をなしていると感じさせられる上、祈りを感じる。
どうして、こんなに本に惹かれるのだろう。
思えば、本は言葉によって綴られる。言葉にはどれだけ人の気持ちがこめられていることか。私が本に惹かれるのは、本を介して人に触れられるからだ。
ふと、本が貴い、愛しいものに思えて、閉じたこの本の表紙をそっと撫でた。
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以上、18名の作家さんが「本」「本屋」をテーマに書いた短編集。... [続きを読む]
香桑さん、こんばんは(^^)。
ホントに、本好きにはたまらない、珠玉の短編集でしたね~♪
「本」は人をつなぐ。歴史を紡ぎ、物語を編み上げる。そしてそれを介するとき、「ひと」はお互いに繋がれるのですね。
とても良い物語でした。
投稿: 水無月・R | 2008.10.07 23:49
水無月・Rさん、こんばんは♪
贅沢な一冊ですよね。本を書く人も、編む人も、作る人も、運ぶ人も、売る人も、買う人も、読む人も、残す人も、守る人も、本という形の人の気持ちに触れていると思えば、それだけで胸が温まる気がします。
微妙な評価のものが、水無月・Rさんとは共通だったらしく、水無月・Rさんにますます親近感です。
投稿: 香桑@室長 | 2008.10.08 00:30
梨木さんの物語には私もぞくっとしてしまいました。大好きな本を読み続けるためには目を大切にしないと…と思っていただけに余計に。
ゾクリとするものから、心温まるものまで、さまざまな本への思い、本屋さんへの思いが楽しめて贅沢な短編集でした♪
投稿: エビノート | 2008.10.08 22:00
エビノートさん、こんばんは。
私も子どもの頃から視力が悪いものですから、視力を失うことはリアルに怖いことの一つなんです。
私の身の回りでは書店がどんどん減って行っています。ふらりと立ち寄るのにふさわしい、適度に手狭で感じのよい本屋さんが身近に復活してもらいたものです。
投稿: 香桑@室長 | 2008.10.08 23:24
こんにちは。
豪華な贅沢な1冊だったね。
どのお話も短いのに、どのお話も心にしんしんと響いてくるようでした。
猫ちゃんが出てくるお話が多かったのも嬉しかったね(^^)
投稿: すずな | 2008.10.09 15:24
すずなちゃん、こんばんは♪
本には猫。なぜか猫。ワンコのいる本屋さんもあってよさそうなものなのだけど……。
読み手として本には思い入れが大きいから、どうやったら旅たつのを見送れるのかなぁ。
あー、部屋を片付けなくちゃあ。と思った本でもありました。
投稿: 香桑@室長 | 2008.10.09 17:36
2度目あたりのボトルメール訪問だと思います。
本というのはすばらしいですよね。1冊の中にまったくの異世界を作り出し、話をつむいでいくのですから……。
私も小説家志願です。アルファポリスドリームブッククラブというサイトに登録して、ときどき作品を送って公開していただいています。見てくれる人がいる場所を提供してくれる、そして誰かが読んでくれるかもしれない。本当はポイントを貯めていって、本の形にして出版してほしいと思っていますが。
自分を認めてもらって、小説家として収入を得られるようになるよう、頑張りたいです。
投稿: ありさ | 2008.10.10 21:56