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2008.10.26

神の守り人(下):帰還編

神の守り人 下 帰還編 (3) (偕成社ポッシュ 軽装版)  上橋菜穂子 2008(軽装版) 偕成社

バルサにも、そして読者にも、ことの全容が明らかになる。
入り組んだ物語の、ことの顛末に向けて、読むほどに気が重くなるようだった。
大人たちの身勝手が見苦しくてならない。それぞれの言い訳はあるにせよ、自分の言い分だけを振りかざして押し通す者が多い。

畏ろしき神タルハマヤを身に宿したアスラ。
幼い少女に大人の思惑を見抜けというのが無理なことだ。
親しくしてきた人の言葉や耳に優しい言葉に心揺れても仕方がないことだ。
兄とも引き離されて心細い中で、神によりすがりつくのも当然といえば当然のこと。

バルサは、アスラを表立って責めはしない。アスラを特別視せず、特別扱いせず、ただ普通の子どもと同じように接する。ただ、生きることの経験値を増やしてやる。
一人では生きられないこと。人を殺すことのおぞましさを、教えようとする。
幼い子どもだからといって、高をくくって侮るのでもなく、腫れ物に触れるようにして避けるのでもなく、人として相対する。
大事なことを教えなければならない。バルサがタンダに漏らした言葉は、あまりにも印象的だった。

なぜ、母親は子どもを、兵士になれ、勇者になれ、と育てることができるのか。
夫を殺された苦しみに、息子に敵を討てと教えることができるのか。
それは、人殺しになれということに他ならない。
掲げるものが、信仰であれ、正義であれ、復讐であれ、快楽であれ、人殺しは人殺しなのに。
バルサの悲しみが、胸にしみる。
なぜ、大人は子どもの笑顔を祈ってやることができないのだろう。

『神の守り人』の上巻では、異世界の幻想的な景色があまり出てこないと思っていたが、この巻のクライマックスでは壮大で素晴らしい景色が表れる。
ああ、ユグドラシルだ。挿絵をしばし眺めいった。
神が住むのにふさわしい、そんな景色だ。
神がふさわしいのはこの世ではない。

差別の問題やテロリズムの問題を考えさせられる物語だった。
子どもではなく大人にこそ考えてもらいたいような。
でも、子ども達が、バルサやタンダがかっこいいと思ってくれたら、嬉しい。
素晴らしい物語であり、希望は決して失われない物語であるけれども、ちょっと重かったので、一旦、このシリーズを読むのはお休み。

***

「ただ、どうしてもゆるせないのは--(中略)よってたかって、あの子に、人殺しをしろと、そそのかしていることなんだ。」(p.213)

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コメント

こんにちは。
自分がどう子供と接しているのか、ということを省み、考えさせられた物語でした。

子供達はこの物語をどう読んでるのだろう。子供たちの感想を聞いてみたいなーと思ったよ。

私も、「子どものため」と言いながら、大人の都合を押し付けていないか、我が身を振り返りました。ほんとに、難しい。
中学生ぐらいの、世の中が自分を縛り付けるように感じている子達が読んだ感想を聞いてみたいですね。

本文には書き忘れましたが、上下巻を通して一番ショッキングだったのは、タンダがバルサを「老獪な獣」とたとえたこと。
老獪……orz

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