夢をかなえるゾウ
インパクトのある表紙だ。
ゾウはゾウでも、象頭人身の異形の神様ガネーシャではないか。
和名は、大聖歓喜天。略して、聖天。
シヴァ神の息子、財産の神様じゃなかったっけ。
本場インドでは男女和合で描かれることも多く、エロティックなイメージがある。
そう。眼差しも、まつげバサバサのいい男風だったり、東照宮の象のような笑える流し目風だったり。
この表紙のゾウ……いや、ガネーシャは、とてもコミカルでオヤジっぽい。
オモシロクナイ……。
それが感想の第一声で申し訳ないが、小説を期待して読んだ私には、あまり面白いとは言えなかった。
どちらかと言えば、ビジネス指南書を小説風に書いたものである。哲学概論を小説風にリライトしたら『ソフィーの世界』になったことを思い浮かべて欲しい。
エッセイや論文調に描かれたビジネスの心構えや職場の人間関係スキルは読みづらく、かつ、成功の秘訣を知りたい人には好著であろう。ハウツー本としてきわめてまっとうな内容だと思う。
従って、主人公に対するガネーシャの台詞は、ほとんど説明文なのだ。
読者は主人公と共に、実践することを求められる。読んで考えるだけじゃ人生は変わらないのだ。
偉人の言葉やエピソードの紹介も豊富だし、励ましに満ちている。
これから働き始める人や、仕事に迷いがある人には勧められる。
ドラマにもしやすいと思う。
私の場合、小説を期待していたから、違っただけで。
絲山さんの『海の仙人』のような深みとは比べようもないかな。
「笑えて泣けてタメになる」より、「笑えて泣けてダメになる」のが、純粋に小説らしい気がして好きなのだ。
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» 「夢をかなえるゾウ」 水野敬也 [コンパス・ローズ compass rose]
夢をかなえるゾウ
水野敬也
単行本: 357ページ
飛鳥新社 (2007/8/11)
2008年、TVドラマになんねんて。
と、おっしゃっているのはタバコ片手にぐーたら寝転んでいるガネーシャさま。ガネーシャといえばインドのヒンドゥー教の神様。それがなんでまた関西弁なのか。
夢をなくしたサラリーマンと関西弁のゾウの神様が繰り広げる、「笑えて」「泣けて」「タメになる」全く新しいエンターテイメント小説
本の帯より... [続きを読む]
香桑さん、こんばんは。
自己啓発本の変種と思って読んだせいか、気軽に読めました。
これぞ!という究極本がないのが自己啓発本。
いかに売るかという、著者、出版社の趣向に興味があるので手に取るようなものです。
ドラマにもなるんですよね。
>「笑えて泣けてダメになる」
私もこちらのほうが好きです。
投稿: 雪芽 | 2008.09.19 21:37
雪芽さん、こんばんは。
最初から自己啓発本だと意識していれば、印象が違っていたかもしれません。
とはいえ、自己啓発本としてよく工夫してあると思いました。内容はかなりまともですし。
ガネーシャが関西弁なのも、どこが生徒で、どこが指導者の台詞か、はっきりと区別がついてよかったですね。
投稿: 香桑@室長 | 2008.09.19 22:06