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2008.09.07

大人の心に効く童話セラピー

大人の心に効く童話セラピー―お姫さまと王子さまが中年になっても幸せでいるために (ハヤカワ文庫 NF 337) (ハヤカワ文庫 NF 337)  Chinen, Allan B. 羽田詩津子(訳) 早川ノンフィクション文庫

字体が読みづらい。
字は大きめだが、フォントの種類を普通にしてくれたらよかったのに…。
入院期間は1日1冊本が読めたことになる。思ったより、数が稼げなかったかな。

こういう本は斜め目線で読むに限る。
「ほ〜ぅ」と平身低頭して受容するのではなく、「ふーん?」と虎視眈々ツッコミどころを探してしまう。
アジア圏各国の事情や文脈を無視したいささか強引な解説は、わかりやすいツッコミポイントと言えよう。

また、たとえば、「おとぎ話は口伝えに広まったため、視野や主張が一般的だ」と書いてあるとしよう。(p.10)
そこに、赤松啓介のような、昔話を「民衆の生活のなかから生まれた、民衆のための物語などと過信するのは危険である。」「いま残って伝承されているということは、ある程度まで、これまでの支配階級によって去勢され、歪曲され、無害化されている」(『差別の民俗学』 p.74)という視点を加えてみたくなる。
…影響されやすいし、可愛くない読者だ。

ユング派は読み物としては面白い。中年童話というテーマも、既に中年となった自分とは他人事ではない。
また、紹介されている童話の中に日本のものもあり、アメリカの分析家がどのように解釈するか、興味をもって手に取った。

で、読んでみてどうだったか。
うーん。
もひとつ、う〜〜〜〜〜ん。
著者と読者の感性にどれぐらい隔たりがあるか。
とっても違えば笑えるし、ぴったりなら納得いくだろう。
私はなんだか気持ちが悪いというか、むずがゆいというか、みるみる読むスピードが落ちていった。
ごもっともと大半は同意するにしても、無邪気に性差別的というか、不気味に楽観的というか、なんか引っかかるんだよなぁ。

青年期は25歳までとするのが心理学の伝統で、青年期の次は中年期である。
近年は成熟に時間がかかるようになった、寿命も長くなったと、中年期を35歳からにするよう提案されている。
この二つの年齢の狭間のどっちつかずなあたりを、ヤングアダルトと称したりする。
アダルトということは中年だということだ。若めの中年。
しかるに、本書の中年は40歳からで、それまでは青春という基本前提におののいた。
おそらくadolescenceの訳ではないかと思うのだが、思春期なら10代、せいぜい20代前半の心性という感覚を持っている。
成熟をそこまで引き延ばすのは、そりゃ問題だ…。
原著のコピーライトは1992年。その後の変化はあるにしても、この本の背景にある社会文化を考えて、惨憺たる気持ちになる。

くしくも、赤松啓介が『差別の民俗学』で取り上げていた「もぐらの嫁さがし」と同型の「石工」が日本の民話として紹介されていた。
赤松ならば階級性の差別維持の政治的意図を読むところを、ここでは中年期の危機を経て自己受容するアイデンティティの再確認の物語と読む。
どちらが正しいというのではない。両者には、全く異なる文脈が与えられている。
いかなる読みが成り立ちうるかを考え巡らせることが楽しいのであり、読みの多様性を成り立たせる物語が面白いのではないか。
抽象性や象徴性が高まるほど、読みの可能性は高まり広まり深まるものだ。
多様性、多元性、複雑性、曖昧性、抽象性…どれも成熟のキーワードである。
それを自覚していれば、安易なメタファーに余計な集団催眠かけられちゃうことも減るかな。
減らないかな。難しいもんだ。

読み方を押し付けられると興ざめする。
その日その時その場の気分に自由に任せて好き勝手に読むのが好きだなぁ。
そういう自由が守られる世界であってほしい。
本題からずれたが、ここに私が書いたツッコミは枝葉の部分。
根幹はまっとうであり、中年期を肯定的に取り扱うところには価値がある。

退院して、自分の書いたものを読み返して見ると、どこをどう整理するか困るほど、ぐだぐだぐだぐだ書き散らかしている。随分と元気になってきたところで読んだのだろう。

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