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2008.09.15

赤×ピンク

赤×ピンク―Sakuraba Kazuki Collection (角川文庫 さ 48-1)  桜庭一樹 2008 角川文庫

廃校になった小学校で毎夜おこなわれる非合法ガールズファイト。
可愛らしく上品な表紙と裏腹な裏書につられて手に取った。
にもかかわらず、「“まゆ十四歳”の死体」という第一章の表題に臆して、読むのを後回しにしてしまった。

ガールズファイト「ガールズブラッド」のファイター達は、社長の趣味で適当な設定を与えられ、それに応じた衣装を身に着けて戦う。
まゆは胸を小さく押さえつけて、ひらひらフリルの衣装を身に着けている、弱々しい女性。
まゆの設定は14歳だが、実際は21歳だったというところを読んでから、心理的な抵抗がやわらいで、するすると続きに引き込まれていった。
中学生が強制的に戦わされていたら酷悪だし、自主的に戦っていたら陰惨だ。

まゆ21歳。ミーコ19歳。皐月19歳。
この三人が、3つの章のそれぞれの主人公だ。
もう一人、千夏という女性も存在感がある。
彼女達は少女という年頃を過ぎており、本人たちも自分を「大人」だと認識している。
しかし、これは少女達の物語だ。女性達の心の中の少女達の物語だ。

主人公たちは、それぞれ、家庭に縁がない。
虐待や、そのほかの不遇。あるいは、親には内緒にするしかない秘密のゆえに。
居場所がない。帰る場所がない。
自分がない。自分のしたいことも、好きなことも見つからない。
檻の中は、奇妙な安心感を与えてくれる。
閉じ込められているが、同時に、守られてもいる。
どこにも行けなくても、何かをできなくても、許してくれるのが、手錠であり、檻となる。
服従こそが解放とする、SMのロジックをうまく取り入れている。
まあ、ミーコはSMの女王様という設定なのであるが。

心の中にも檻がある。子どもの頃から抱えてきて、子どもだったからわからなかった、問題に囚われている。
心のありよう、歪みや偏りが問題として、大人になってから立ち現れる。今になって、心が檻に囚われていることを感じている。
頭が悩みに支配されそうになるとき、格闘技によって主人公達は体の次元にシフトする。
視覚や聴覚は頭よりだが、皮膚や筋肉の感覚は体よりだ。匂いや味というのも、物質を現に受容するのであるから、どちらかといえば体よりだ。
頭の感覚と体の感覚のバランスを取ることは、命を保つコツだったりする。それを、主人公達は無意識に求めているように見える。
たとえば、自傷行為がほんのひととき生命の実感を得たり、自分に生きることを許す贖罪になるように。

問題は、死にたくなるほどに、愛情が足りていないということ。

檻の外に出て行くことができた少女達の先行きが明るいかどうかはわからないが、少しだけしたたかにしぶとく、彼女達は生きていくことができるのだろうと思えた。
女性の赤と少女のピンク。多分、この二面性を、大人の女性の多くが抱えているのではないだろうか。
これは大人向けの小説だと思った。少女にはもったいない。

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小説(日本)」カテゴリの記事

コメント

香桑さん、こんばんは(^^)。
>服従こそが解放とする、SMのロジック
言われてみればそうだ・・・。ミーコ女王様がガールズファイトにシフトしたのは、進化形なのかも知れないな~なんて思いました。
桜庭さんの物語のうまさは、陰惨な過去を描いても尚、将来が開けて行く部分ではないでしょうか。
脆く儚い少女は、それ故に、強い。痛々しいけれど、何度でも立ち上がれる。そんな風に感じますね。

水無月・Rさん、こんばんは。
弱いけど、強い。確かに、そうですね。
一番弱々しいまゆの思い切りの良さと言ったら! 仕事もやめちゃえるし、ケッコンも決めちゃうし、実は、外に出て行く勇気をきちんと持っているんですよね。
ほんと、思いがけず、読後感がとてもよかったです。

こんばんわ。TBとカキコありがとうございました。
少女よりも大人向きですよね!
3人の心の葛藤が痛いほど伝わってきました。
章が3人で分かれていますが、解説の方もおっしゃっているように、まゆが主人公のような気がしました。
まゆがいなくなったことで、周りにも影響されたと思いますし。
読後は清々しかったですよね。

苗坊さん、こんばんは。
ナオコーラさんの解説が素晴らしいので、感想が書きづらかったです。
子どもから大人へ、檻の中から外へ。この抽象的な次元での成長は、まゆやミーコや皐月が家を出た年頃を過ぎないと、わかりにくいかな、と思います。
たとえば、武史にはわからなかったかも……。

少女にはもったいない。
確かに!
ライトノベルってことで、ちょっと敬遠気味だったんですが、良いものは良いんですよね。自分の思い込みを反省。
格闘技ってだけでなく、それぞれがいろんなものと闘ってる姿が印象的な物語でした。

エビノートさん、こんばんは。
ライトノベルの範囲じゃない(主人公まゆの年齢がティーンではない)物語を、「まゆ十四歳」設定で無理やりラノベに放り込んだような苦労の跡を感じました。
ラノベ時代の桜庭さんは、主人公の背景に虐待があるところが共通している気がします。

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