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2008.09.30

夢の守り人

夢の守り人 (偕成社ポッシュ 軽装版)  上橋菜穂子 2007(軽装版) 偕成社

シリーズ3作目。
バルサが過去をたどる故郷の旅から新ヨゴ国に戻ると、呪術師や星読博士でも手をこまねくような事態が起きていた。
今度は、呪術師である老女トロガイの物語だ。子を失った母親たちの物語でもある。

悲しみというのは、やっかいな側面を持っている。
大事な人を失った悲しみは、ある種、免罪符のようなところがある。
「可哀想な人」というレッテルで、いろんなことが許されてしまうのだ。
逆に、大事な人を失ったのに十分に悲しんでいないと他者が判断したときは、糾弾されてしまうこともあるだろう。
その人が内面でどれほどの悲しみを抱えているか、感じ方や表し方はそれぞれであり、誰もが他者の内面を完全に把握できるわけではないにもかかわらず。
同じように、悲しみから早く立ち直ろうと懸命に振舞うことも、人によっては奨励するが、人によっては避難する。

悲しんでいる人自身も、悲しみを手放す時機を見誤るときがある。
悲しみを手放すことを、相手を忘れ去ってしまうような薄情な行為だと勘違いしている人は、悲しみにしがみつきやすくなるだろう。
だが、人は忘れる生き物であり、時間は未来へと流れるものであり、生々しい激情は、日常生活の中でゆっくりと柔らかで美しく澄んだものに醸造されていくものではないだろうか。
悲しみに支配されて日常のすべてがおろそかになる段階から、思い出せば悲しくほのかに憂鬱になるような切なさはあるものの、我を失うことなく思い出しては思い出をかみ締められるような状態へと、人は移り変われるものだと思う。
悲しみや苦み、怒りや憎しみがやわらぎ、薄れても、大事だった人を忘れることではなく、その人を心の中から失うことではないのだ。
いや、忘れてしまっては可哀想すぎる。喪失を抱えながら、生きていくしかない。

トロガイでさえ若い頃はあり、若いときの決定的な喪失が、彼女の人生の道筋を大きく変えた。
もしも、自分のあきらめてもあきらめきれない、しかし叶うことはない夢を、見ることができるとしたら、その夢から覚めることができるだろうか。
もしも、あの人生を生きていたら。
もしも、この選択を選んでいたら。
もしも、もしも、もしも……。
そんな心の迷いを描いたこの作品、やっぱり、子ども向けにしてはテーマがやけに深い気がするのだが。
この巻でも、幻想的な美しい景色が描かれており、夢を題するにふさわしかった。

バルサを気にいる人なら、マーセデス・ラッキー『女神の誓い』シリーズのタルマも気に入ってくれるのではないかと思っていた。
著者の後書きを読むと、トロガイの造形は、ラッキーの小説に出てくるシン・エイ・インという一族のシャーマンたちを思い出す。
あるいは、ジーン・アウルのエイラのシリーズや、趣味の民俗学やらなんやらを経て、巫女と書くと語感と字面のイメージが変わるけれども、シャーマンは閉経後の女性がなるもの、という印象が私の中にある。
そういうところでも、私はこのシリーズにも馴染みやすかった気がした。

この巻も一気読み。つい夜更かしをした。
手持ちはここまで。続きを買ってこなくちゃ。

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コメント

今回は特に、子供向け?といいたくなるようなお話だったね。
心に響く言葉に頷くこともしばしばで、夢中で読みました。

思春期ぐらいの子でも、ぴんと来てくれるのかなぁ。
母親の悲しみは大きいのだから、各自気をつけるように、という教訓ぐらいは、小学生にも伝わるかもしれないけれど、きっと後になって意味がわかってくるような感じなのでは。
むしろ、大人の女性がアイデンティティの問題を抱えながら読む本にふさわしい気がしました。
軽装版の著者の後書きのイラストが可愛かったですよ。

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