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2008.08.06

海の仙人

海の仙人 (新潮文庫)  絲山秋子 2007 新潮文庫

あなたがいない。
あなたを忘れられない。
あきらめきれずに待ち続けている。
無駄だとわかっていても待ち続けている。

どうしようもなく、すれ違う。その厳しさが物語を引き締めており、『エスケイプ/アブセント』を彷彿とする。
人の色恋、あるいは、運命といったものは、すれ違いやすいものなのだろう。
気づかないまますれ違って、過去に置いて来てしまったものなど、数えられないほど膨大に違いない。
「誰もが孤独なのだ」と、孤独を抱えて寄り添う人々は、安易な性的関係に逃げ込んでしまわない。
しかも、「友人を恋愛という文法で処理してしまいたくない」とは、なんと秀逸な表現だろう。
そういう自制の効いた大人の女性っぷりに、惚れ惚れする。私にとっては、物語にアクチュアルな感覚を持てる。

ファンタジーは孤独に寄り添う。トキやニホンオオカミや、シマフクロウの孤独に寄り添う。
ファンタジーの姿を見、声を聞くのは、孤独なときだけである。
だから、孤独を感じている人は、ファンタジーに気づくことができる。
孤独な男女である、河野や片桐、中村、澤田らは出会い、出会ってからはファンタジーは舞台を去る。
そして、それぞれが再びファンタジーと出会うのは、それぞれが実は孤独に向き合っているときである。
それならば、ファンタジーが立ち去るこのラストは。

今ひとたび孤独を忘れる希望が、更なる喪失と悲劇の予感と共に、絶妙な余韻を与える。
片桐が貝を再び手に取り戻したシーンで、涙がこみ上げてきた私は、偽善のようなハッピーを祈りたい。

ファンタジーを続けて読んでいるので、ファンタジーという登場人物?が出てくるこの本も読んでみたのだ。
ファンタジーは「役に立たないが故に神なのだ」という。ファンタジーは役に立たないものなのか。
それを小説なり映画なり作品にすることができれば金銭は稼げるかもしれないが、ファンタジーがどれほど役に立つのかというのは、実に証明が難しい。
しかし、ファンタジーはリアルを生き抜くために必要な力の源だというのが、私の信条である。
人の心が、現実に迷ったとき、困ったとき、疲れたとき、空想は疲れを和らげ、凝りをほぐし、力を与えてくれるのだと思う。
そういう意味でしか役に立たない。けど、そういう意味で役に立つ。小説を読む人は、そのことを体験として知っているはずである。
特に、孤独な心に、ファンタジーは役に立つ。間違いなく。

『逃亡くそたわけ』のラストに出てくるラベンダーの香りのよかにせは、ファンタジーの仲間だったら面白いのになあ。

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小説(日本)」カテゴリの記事

コメント

香桑さん、こんばんは(^^)。
そうか!ファンタジーとは「ひと」が孤独と向き合う時に、気づくモノだったのですね。
・・・深いわぁ・・・。
河野に別れを告げるファンタジー、再び巡り合う片桐。明るいゆき先は、どこにたどり着くのでしょう。
優しいさびしさ、温かさのあふれる物語でした。

水無月・Rさん、こんにちは。
この後の展開は、ハッピー・エンド希望です。
「愛だよ、愛」と高校生たちにからかわれた二人ですもの。
この台詞、『千と千尋』を思い出しました。

こんばんわ^^
TBが飛ばなかったようなので、コメントだけで失礼します。

偽善を恐れたり軽蔑できるのは、若さの象徴かもしれないけれど、
偽善を偽善と承知した上で、それを引き受ける大人の格好良さみたいなものが、
この物語の中にはあったような気がしました。
香桑さんの感想を読んでいて、ラストの絶妙な余韻に改めて気付かされました。
“偽善のようなハッピー”は、この物語の結末にむしろ相応しいと思のです。
そしてそれを願いたいって、凄く素敵だと思います!

susuさん、こんばんは。
TBは受け取り損ねが多いみたいで……。せっかく送っていただいたのにすみません。
素敵だと言ってくださってありがとうございます♪ えへへ。
片桐が報われるといいなぁ、と思います。だけど、それを書いちゃうと、この小説は途端にチープになってしまうから。
嵐雲のたちこめる未来ではなく、その嵐雲さえも通り過ぎた、晴れやかな残りの日々があってほしいものです。

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芸術選奨文部科学大臣新人賞(2004年)受賞で、芥川賞候補作ですね。と言っても水無月・R、文学賞などの受賞作品であることには、全くこだわりのないタイプです。 自分にとって、面白い・良い・感じるところがあるかどうか、それだけです。 で、この『海の仙人』はどうだったかと言うと、「うわ、捉え処がないぞ~」と言うのが、正直なところです。あ、ちなみに絲山秋子作品は初めてです。 いえ、良い作品だったと思うんですよ。読後感が温かくて。けど、はっきりした何かを得ることができず、ちょっと物足りない感じ...... [続きを読む]

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