2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

著者名索引

香桑の近況

  • 2017.1.4
    2016年 合計50冊
    2015年 合計32冊
    2014年 合計26冊
    2013年 合計32冊
    2012年 合計54冊
    2011年 合計63冊
    2010年 合計59冊
    2009年 合計71冊

    合計323冊
無料ブログはココログ

« 蒲公英草紙:常野物語 | トップページ | 聖☆おにいさん(1) »

2008.08.19

二つの月の記憶

二つの月の記憶  岸田今日子 2007 講談社

まるで、性を憎んでいるかのようだ。
7つの短編のどれもが、性の匂いの裏側で死の臭いがする。
薄暗い刺激を感じた。毒のような苦味。成熟した大人の女性だからこそ持つ毒だ。

最初の短編「オートバイ」が、一番、ユーモアがあり、明るく、無邪気に見えた。
この印象のまま続きを読み進めるにしたがって、死の臭いが濃厚になることに驚いた。

まるで、性を憎んでいるかのようだ。
自分の女性をもてあまし、自分を女性にした男性への恨みが感じられる。
母であり、妻である人にはわからない、女であるからこその満たされぬ愛情と欲望を抱えた傷の痛みが感じられる。
著者が女であることにとことんこだわっていた人だったのだろうと、思われてならない。

また、虚実の二つの世界を渡り歩く役者ならではの感性で、「K村やすらぎの里」や「引き裂かれて」のように、ひょっとしたら実話なのでは?と疑念を持たせる巧みさも見せてくれる。
作り話を本当のこととして、本当のことを作り話のようにして、というのは、この短編集全体を貫くスタンスだったのではないだろうか。
なにしろ、異界に導く手腕が見事だ。幻想的ですらある。
意識から滑り落ちるように自然と、過去へ、内界へ、異界へと読み手は導かれる。
特に、「引き裂かれて」は、演劇の感覚に寄り添って書かれており、それこそ「卒塔婆小町」やギリシャ悲劇の不条理を彷彿とした。

欲望ではなく、愛情を欲していたのに。
だけど、愛情は欲望よりも致命的だ。愛は恋人を殺す。
恋人を殺さないためには、自分を殺さなくてはならなくなる。
著者の中では、愛は報われない死をもって完成される。
したがって、著者の死によって刻印付けられているこの本も、実は愛に満ちている。

« 蒲公英草紙:常野物語 | トップページ | 聖☆おにいさん(1) »

**女であること**」カテゴリの記事

小説(日本)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/183237/23082369

この記事へのトラックバック一覧です: 二つの月の記憶:

« 蒲公英草紙:常野物語 | トップページ | 聖☆おにいさん(1) »

Here is something you can do.

  • ボランティア・寄付ならプラン・ジャパン
    子どもとともに途上国の地域開発を進める国際NGO

最近のトラックバック