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2008.06.13

サイゴン・タンゴ・カフェ

サイゴン・タンゴ・カフェ  中山可穂 2008 角川書店

美しい表紙を見て、溜息が出た。
謎めいて、艶かしくて、慎み深い。品のある装丁だ。
こんな本を手に取ることができると、本読み冥利のつきるような悦びを感じる。

「バンドネオンを弾く女」を雑誌で読んだとき、なんとも言えない優しさを感じた。
中年になった女性の魅力を暖かく描く。そんな著者の目線に、暖かな愛情や抱擁を感じた。
だから、改めて単行本に収められたのであれば、必ず買おうと思った。本書は短編集であるが、表題作だけは中編と言っていいのか、長めである。
力強く愛し抜いた女たちの、美しく年輪を重ねた姿に胸を打たれる物語集だった。

表題作を読んでいると、有川浩『ストーリー・テラー』を読んだときの感覚を思い出した。
これはどこまでが作者自身の物語なのだろう?と、錯覚するような感覚である。創作だとわかっているが、作者自身に近いところをかすめるようにして描いているのではないかと思わせられるところが似ている。
作者にとっての小説というもの、書くという行為を語るところが似ている。
『マラケシュ心中』「卒塔婆小町」などに繰り返されている主題が、ここでも遠く低く響いているのを感じた。

私は中山可穂の描く恋愛が好きだ。一番好きな恋愛小説家。
美しくて品のある日本語で語られる、誇り高く、潔く、情の厚い登場人物。
身を切り刻むような、血を吐くような、血の涙を流すような、そんな切ない恋。
「ドブレAの悲しみ」や表題作に出てくる小説家によると、命を切り刻んで自分を使い果たしながら紡がれた言葉だから、切れ味が鋭いのだろう。
私は言葉を紡いで小説にすることはできないから、紡がれた言葉に刻まれて、命を切り刻むような終わった恋という膿を流しているのかもしれぬ。
それは、ともに涙を流してくれるかのような、流した涙を吸い取ってくれるような、温もりに満ちた手術だ。
だから、読み終えたときの余韻は心地よくて、しばらく静かに浸っていたい。

ハノイのメトロポールは、もう一度、訪ねたい場所だ。
あそこに行くなら、迷わず、ヴェトナム料理のレストランに行く。
そして、フォーガーとバナナの花のサラダを頼もう。マンゴーのデザートと。
あそこで食べたものよりも美味しいフォーに、私はまだめぐり合っていない。
あの場所、あの料理を選ぶなんて、この作者のセンスが大好きだ。なんて素晴らしいことだ。
作中の小説家がブエノスアイレスを想像の中で旅するならば、私は本を読みながらハノイを旅する。
蒸し暑い日の思い出。ああ、旅行に行きたい。たまらなく行きたい。
わずらわしいことはすべて置き去りにして。この世界から消え去ってしまいたい。
前回のヴェトナム旅行後は肝炎になり、本当に世界から消え去る危険性があったことを考えると、我に返る。

我が家にある数少ないタンゴのCDを取り出した。
ピアソラと言えば、リベルタンゴぐらいしか思い出さない。
よくわからないけれども、踊りにくそうな旋律とリズムは、演奏向けのアレンジなのだろうか。
小松良太の『ラ・トランペーラ』。小説家にもふさわしいかもしれぬが、私にもふさわしいタイトルである。
うそつき女。恋に死にそうになっても、私は殉じることなく、こうして生きながらえているのだから。

 ***

書くことは自分の肉体や魂を削り取って十字架のかたちに捏ね、それを神様に捧げることです。自分をどんどん使い果たしながら祈ることです。命がけの激しい宗教的行為に似ています。(p.270)

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