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2008.06.17

幽霊人命救助隊

幽霊人命救助隊 (文春文庫 た 65-1)  高野和明 2007 文春文庫

すずなちゃんの「Bookworm」で紹介されていた本。
面白かった。映画の勉強をしてきて、脚本家をしている人が書いただけあって、映像化したら面白そうというか、目の前でするすると映像化しながら読むことのできる本だった。
どのシーンも、瞬時に目の前に映像が浮かぶ。まるで映画を観ているように、本を読んだ。

よく勉強して書かれていると思う。
うつ病の体験を、こんなに身体感覚を伴って感じられるようなぐらいに抽出して描写されているものを、読んだことは少ない。
いや、うつ病ではなくとも、新しい環境への適応の難しさや、子どものような心を抱える情動や衝動の激しさや、親子関係の中での傷つきや、身も心もさいなむ孤独や、死ななくてはならないという信念に視野狭窄してしまったときの頑なさ……。
何が問題であるのかを具体的に考える冷静や余力のない中では、死ぬ以外の解決法は見当たらなくなる。その追い詰められた心境、病理の描写を、小説としてきちんと表現している。

のみならず、その対応方法を、主人公たちを用いて、力強く説明しているところがすごい。
主人公たちの声かけの仕方は、時に認知療法的であり、時に受容と共感の来談者中心療法的であり、時に精神分析的であり、時に戦略的家族療法的であり、時には環境調整やソーシャルワークまでやってのける。素晴らしい。
残される者の痛みと悼みをも描く点にも、抜かりはない。そうだ。死ぬ人もつらいが、死なれる人もつらい。お互いに、お互いを失うのであるから。
自殺防止対策の推薦書として、厚生労働省に指定してもらいたいぐらいだ。
しかも、セラピストもまたクライエントと共に癒されていく過程が素晴らしすぎる。

もちろん、精神科に受診し、弁護士に相談すれば、すべてOKなんてことは、現実では言い切れないかもしれない。
そこからが長い道のりであることもあろうし、作中にもあるとおり、生きていることの苦しみからすべて逃れえるわけではない。人から死を望まれる場合もあろう。
しかし、生きていなければ、一切の可能性が失われる。
明日のあなたは、今日のあなたとは、違うかもしれない。その明日のあなたから可能性を奪わないように、今日のあなたを殺さないで欲しい。
そのための最初の一歩を、踏み出して欲しい。

ミクロな視点では個々人の問題で各自で解決するしかなくなるが、これは小説。
マクロな視点で、日本のありようについての批判も、容赦なく加えているところがよい。
惨憺たる世情ではあるが、そこを言い切られると爽快さはある。個人の問題に収束しない、器量の大きさがいい。
これでいいのかい? このままでいいのかい? そういう疑問を幾重にも投げかけながら、説教臭くも、教科書臭くもならない。
読み終えたときに、知らず知らず、読み手はいろんなことを学んでいるだろう。
とりあえず、生き延びてみよう。そこからでいい。
とりあえず、大好きな人に大好きと言ってみよう。それが誰かの命を守るから。

いい、物語だった。
分厚くて手に取るまでに時間がかかったけれども、入り込んだら手放せなかった。
最後はもちろん、うるうるしながら読みましたとも。
あのメガホン、私も欲しい~。
「私の仕事」にカテゴライズしようかと思ったぐらい。
いい本を教えてもらいました。ありがとう。

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コメント

面白く読んでもらったようでなによりです~。
私も職場の同僚から貸してもらわなければ手にしてなかったので、彼女に感謝かな。

”とにかく、まずは死を思い止まらせる”という救助方法?がしっくりきたお話でした。だから、そうそう!まずはそこからだよね・・・と頷きながら読めたような気がします。

うにゃ。すずなちゃんに、お返事が遅くなりました。
この本は、ほんと面白かったです。同じ作家さんを続けて読むと、ちょびっとマンネリになったりするから、新しい作家さんと出会えると嬉しくなります。
それに、この本は、生きようよって、健全なメッセージに支えられているところが、読んでいてほっとしました。
また、お勧めがあれば、教えてください☆

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何故かいきなり”読書の秋”化した会社の同僚から借りた本。この著者は初読みでした。 [続きを読む]

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