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2008.06.19

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet  桜庭一樹 2004 富士見ミステリー文庫(画像は2007年発行の単行本)

表紙からしてラノベな桜庭一樹。この人が10代の目線で少女を描くものを、楽しみにして読んだ。
楽しむというと語弊があるかもしれないが、救いようもなく子どもは子どもでしかないことを容赦なく描く、その描き方が興味深いからだ。

同じ作者の小説を読み続けると、共通して立ち表れるモチーフに気づき、その人なりのテーマを考えさせられることがある。
梨木香歩であれば、子どもと対立する母、受容する祖母の三者関係。
中山可穂であれば、死んだ/別れた恋人との和解や、恋人の子どもの成長の喜び。
森見登美彦であれば、腐れ大学生活。悪友と、淡い恋と、偏屈な老人と、個性的でいなくなってしまった先輩と、古書店/古物商でのアルバイトと。
画家がいくつもの習作を経て、構図を洗練して作品を練成していくように、小説家もいくつもの習作を経て、その人が書きたい一番の物語を練磨していくのではないかと、思うようになった。

では、桜庭作品では、どんなアイテムが共通するか。
集団の中で、多数派というよりも少数派に属する少女たち。異端、非凡である主人公の資質。子どもであること、女であることという、環境に立ち向かう力の限界。
父親/兄との密着。ないしは、密着しすぎた関係の中の暴力。あるいは、美しい憧れの兄。許されざる性的な関係。
働き者で、情緒的な配慮の欠ける母親。子どもには母親の目が行き届かない。
舞台は地方都市。地域はお互いに顔見知りであり、閉鎖的。平和と協調。
私が今まで読んだものからは、とりあえず、そういった家庭像が、共通項としてあぶりだされてくるように思われる。

「少女らしさ」というファンタジーにそぐわぬであろう、衝動と暴力、苦境と慟哭を、あえて桜庭は取り上げる。
ラノベであるが、内容は夢物語ではない。虐待の現実にそぐう内容である。困窮の現実にそぐう内容である。同種の困苦を背負う少女たちは、少年たちも、現実に多い。
成長の物語と言い切るには、本人の手の届かないところでつきつけられる限界が大きすぎる、そういう課題を与えられた子どもたち。
奇麗事に聞こえるかもしれないが、だから、それでも、子どもたちに安心を確保するべく奮闘している大人たちもいる。
そこまで言及することで、桜庭は子どもが主人公たちに投影するであろう、「敵は大人」というファンタジーもやわらげてみせる。

生き延びることさえできれば、砂糖菓子の弾丸ではなく、本物の弾丸を手に入れることができたかもしれない。
いや、本物の弾丸をも使って欲しくないと語るのが『少女に向かない職業』だったように思う。
子どもたちを取り巻くのが、砂糖菓子の弾丸だけで対応可能な環境であれば、よかったのに。
砂糖衣に覆われて隠されているものに、気づける大人になりたいと願う私は、もう少し桜庭の描く少女の物語を読みたい。
イラストはラノベだけれども、単行本化してラノベ色を消したものを出したのは、大人にも読んでもらうためによいことだ。

ああ、そうか。と、後で気付いたことがある。主人公たち二人の名前だ。
なぎさは、渚だからこそ、彼岸から此岸の波打ち際へと打ち寄せられ、打ち上げられることができたのだろう。
彼女は片足を突っ込んでも、沖にさらわれることはない。
しかし、海の藻屑は。水底に沈む少女は人魚になることができたのだろうか。

 ***

児童虐待の防止等に関する法律

第六条  児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

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コメント

お返しが遅くなりました;;;
読んでる間中、どうか冒頭の結末になりませんように・・・と願わずにはいられない作品でした。
桜庭さんの作品は、子供たちにとって過酷で困難な環境のものが多いんだけれど、それが絵空事ではない、現実でもあるんだ、というところが、読後感の悪さを感じても手を伸ばしてしまう一因なんだろうなぁ・・・と感じています。

いえいえ。TBありがとうございます。
冒頭に結末が書かれていなかったら、どんな気分で読んだのだろう、と思いました。
桜庭さんの題材選びは、悪趣味ぎりぎりのところにある気もします。しかし、それを変に美化してしまわないところに好感を持っています。
現実にもあるんですよねえ……。

お久しぶりです(^^)
ライトノベルだと思って読み始めたらびっくりしてしまいました。ほんとに哀しかったです。特に担任の先生の最後の台詞が・・・。
読むのが遅くなってしまってごめんなさい。
そして話は全く変わってしまいますが「本から始まる物語」(メディア・パル)がおもしろかったので、よかったら読んでみてください♪

多恵ちゃん、こんにちは。お元気ですか??
ライトじゃない、ライトノベルなんですよね。桜庭さんが書くと。
軽くないし、明るくない。どっちのライトでもないんじゃない?という……。それを、軽っぽく、明るっぽく、素っ頓狂に描いてみせるところが妙味だと思います。

『本から始まる物語』ですね。探してみます。推薦ありがとう♪
本職に差し支えない程度に……。また飲みましょう。笑

香桑さん、こんばんは(^^)。
のっけっから「うわっ、痛いなぁ・・・」と呟いてしまった冒頭。
繰り返される十月四日の早朝のエピソードにどんどん胸が詰まって、やがて明らかにされる惨劇の結末に、とても苦しい思いをもちました。(冒頭で分かっていたはずなのに)
ここまで閉塞していなかったけど、自分のあの頃も痛かったなぁ…なんてことを思い出させられてしまい、結構ドロドロな読後感でしたね~。
私が読んだのは単行本の方でしたが、これがラノベの文庫だったというのに驚きです。これは、中高生には重いんじゃないかな・・・。

水無月・Rさん、こんばんは♪
個人的には「少女に向かない職業」のほうが好きです。まだ、生き延びられているから……。この小説は胸が痛くなって、感想を言葉にできないから、解説ちっくなものを書いてしまった気がします。
自分にとっても中学生ぐらいが一番しんどい時期でした。どうしても思い出して重なりますね。忘れきることはないかもしれないけれど、この年になると意外と平気に図々しく生き延びていられるってことを、今現在苦しい中高生には頭の隅っこでいいから知っておいてもらいたいものです。

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