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2008.05.30

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人  桜庭一樹 2006 角川書店

少女を描くことにかけては抜群の桜庭一樹が、どのように「白雪姫」を解題するか。
タニス・リー『鏡の森』と読み比べてみたいと思った。読み終えた今の感想では、読み返すならこっち、かな。
断然の読みやすさ、ユーモア、そして、風土。モチーフは匂うごとくに漂うだけで、桜庭らしいオリジナルの物語になっている。
舞台は、旭川。やはり雪の降る土地柄でなくては。

短編「辻斬りのように」は、私が最初に読んだ桜庭の文章だったが、痛々しくて少し苦手に感じた。それでしばらく桜庭作品そのものを避けていた。
今回、読み直してみると、やはり痛々しい。これが、桜庭の描く、アルパツィア。
強烈な個性があるわけではない。平凡で、可愛そうな女。愛する人は愛してはいけない人だったから、呪いがかかった。もの狂い。

いんらんな母から生まれた子どもは美少女であり、平凡ではなかった。その顔が、母の罪を露呈する。
美少女である七竈の鏡は、雪風という同じ顔の少年である。鏡がこうなるか!
七竈には、父親も、継母もいない。ただ、いんらんの母と物静かな祖父と、犬がいるだけ。
その美しいかんばせが呪いである。王子しか釣り合わない美貌。しかし、日本のどこに王子がいようか。誰とも見合わぬ、非凡さという呪い。
成就せぬ恋という呪い。

かつて私は早く年を取りたかった。女でなくなればいいと思っていた。
あるいは、誰も知り合いのいない場所に行くことを好んでいた。私が私でなくなる開放感が必要だった。
そんな時代を思い出してみたけれども、気持ちはどこか母親である優奈のほうに惹かれた。
十代の少女に自分を重ね合わせるのは、ちょっと難しくなってきたみたい。やばい。……いや、当然か。

平凡であることの苦しみ。好きな人に近づく勇気を出せない苦しみ。
好きだった。好きだった。好きだった。どうしようもないほど。
忘れられない。心の中の特別な場所を捧げた、その人のことは。
若くて美しくて、今よりは少しでもマシな自分で、手に入れたかった。
綺麗で清潔で純粋なまま。恋心が老いて傷んで腐る前に。
私があなたを穢すことなく。しかし、手に入るなら伸ばさずにはいられず……。

このどろどろ具合が、同じもの狂いの覚えがある昭和の女の心に響いた。
あと、昭和の男がいい。確かにいい。うむうむ。
桜庭流の母と娘というテーマの描き方は、よしながふみを読んだときのような、そうなのよ!と言いたくなる感覚があった。
男性には見せず、女性だけで共有しておきたくなる作品だと思う。
最後に、名言を引用しておく。一時期よりも母をゆるせるようになった私は、それだけ年を取ったということなんだろう。

 ***

Photo 女の人生ってのはね、母をゆるす、ゆるさないの長い旅なのさ。ある瞬間は、ゆるせる気がする。ある瞬間は、まだまだゆるせない気がする。大人の女たちは、だいたい、そうさ。(pp.267-268)

七竈の花の香りをかぎました。甘い、甘い香りでした。ねっとりと濃厚な、ディオールの香水のような香りでした。

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コメント

香桑さん、こんばんは(^^)。
この物語と『鏡の森』の読み比べ!
民俗学なのか心理学なのかもわからない、無教養水無月・Rですが、「美しきかんばせが母の罪を露呈する」というのに、改めて気付きました。ありがとうございます!
やはり、香桑さんの視点は、素晴らしいです♪
七竈を捕まえて「むくむく」とよぶ、ビショップの視線が、物語に深みを作っていたような気がします。
美しい文章、そこから浮かび上がる世界、とても惹き込まれる作品でした!

水無月・Rさん、こんばんは。こちらこそ、ありがとうございますぅ。
七人の可愛そうな大人は、誰だったんだろう?と考えたのですが、自信がないので記事には書きませんでした。優奈、桂夫婦、田中夫婦、梅木、東堂でいいのか。それぞれ、暴食、憤怒、怠惰、色欲、嫉妬、貪欲、傲慢のどれにあたるのかなー?などと想像するだけしてみました。
ビショップの温かみのある包容力がよかったです。この存在が、物語をとげとげしくならないようにしてくれているのでしょう。むくむくという呼びかけがお気に入りです♪

「白雪姫」ですか!なるほど。
そして、コメントの「暴食、憤怒・・・」で、”七”ってそういう意味かっ!と、またまた・・・^^;;;
はぁ~。ただただ、うははと笑ってうがうがと泣くだけの私には、そういう読み方は逆立ちしたって無理だなぁ・・・凹

すずなちゃん、ども。
これの前に読んだ「鏡の森」に7人の小人が、キリスト教でいう7つの大罪の名前を与えられていたので、「少女七竈~」にも該当するのかな?と思ったの。
七竈では、少女の呪いは母親が断ち切るし、王子は迎えに来ずに少女自身が王子となって町を出て行くような雄々しさがありますね。かなりの進化系だと思いました。
まあ、深読み大好きってことで。

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