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2008.05.03

丹生都比売

丹生都比売  梨木香歩 1995 原生林

太陽の光のもとを歩むことが似合う輝く人がいる。
他方で、闇の中にひっそりと息づく人もいる。
月光に慰められ、星の光に導かれ、陽光に憧れながらも諦める人もいる。
梨木香歩の鋭敏な感覚は、闇に隠れて身を守る人の痛みを、静かに掬い取る。
壊れやすいものをそうっと取り上げ、美しいまま紙の上に広げてみせる。

草壁皇子という歴史上にひっそりと名前を残す子どもが主人公だ。
中大兄皇子(天智天皇)の孫、大海人皇子(天武天皇)・鸕野讃良皇女(持統天皇)の息子という立場にありながら、玉座を継ぐことなく夭折した悲劇の人として知られる。
本書の中には系図も書かれており、異国を描くファンタジーとして読むことも可能であるが、古代史の知識があるほうが尚更味わい深いであろう。
特に、神を招く作法であるとか、神の立ち現れ方は西洋流のものとはちょっと異なるから。

梨木作品の中でも異色のようだが、時代に翻弄される無力さを描く点や、不思議なものと出会う異郷との境界線上に立つことでは、一貫している。
母と子の葛藤を描いていることも、だ。実の母親と、どうにも折り合いがつかないことがある。
愛している。愛されている。それなのに、埋め尽くせない、鬼の巣食う隙間ができる。
草壁皇子は、母親の多面性に戸惑いながら、引き受けていく。よい母でも、悪い母でもなく、その両方を持つ母親を。我が身を賭して受容する。
もはやまったき母親はいないという諦念の哀しみだけが残されるとしても、おそらく哀しみだけが憎悪や怨恨を乗り越える力を持つのだ。

童話と呼ぶには大人びて、神話と言うには生々しい、美しくも切ない物語だった。

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コメント

香桑さんこんばんは♪
あーありありとよみがえる感覚。梨木さんの書く神話系?の本がもっと読みたいです。こんなふうに書いてくれたら日本史ももっとおもしろく読めるのになぁ。
「良き本」という感じでしたね★

やぎっちょさん、こんにちは。TB&コメント、ありがとうございます♪
ぴーんと緊張感のある空気。端整で静謐で、しっとりと露が降りてくるような、なんとも上品な本でした。
こういう空気が、梨木さん特有のものの気がします。
感情が伴う、血肉が伴う物語になったら、歴史も面白くなりますね。

香桑さん、こんばんは(^^)。
キサは、吉野の神気・水銀の精霊であったのかなぁと思いました。
静かに美しい物語でしたね。
母を思い、国を思い、命のともしびを消した草壁皇子の切なさが、とても心に染みました。

水無月・Rさん、こんにちは♪
この静かな美しさは絶品でしたね。
私もキサは人間ではなかったような気がします。丹生都比売その人か、丹生都比売を降ろした巫女のようなものかと。
この作品、私は梨木作品の中のターニングポイントのように感じています。

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