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2008.04.22

娼年

娼年 (集英社文庫)  石田衣良 2004 集英社文庫

バッハの無伴奏ソナタ第2番を聴く。
私の手元にあるのは、Kremerの演奏。
研ぎ澄まされ、余計なものをそぎ落とした音だと、最初に思った。
硬質でひややか。だからこそ、熱く膿んだ傷にもやさしい。

石田衣良の単行本を読むのは初めて。『美丘』の表紙の女性の裸体にはずいぶんと誘惑されたが、あらすじを見る限り、好みではなかろうと思って手に取らなかった。
『娼年』も、目を引くタイトルに何度か手を伸ばしては取らずに置いていた本である。これまた、すずなちゃんが読んでいたので、読んでみることにした。

主人公リョウは、自分は娼夫だと名乗る。
20歳の夏を描くこの作品は、リョウが少年から青年へと成長していく過程を描いているのだから、やはり、タイトルは娼年でいい。
ひと夏の物語であるにしても、なんと、もりみーやみうらじゅんの物語とは違うことか……。
それでいて、これもまた、男性ならではの文章だと思った。その点、詳細に書くのもどーか?という内容なので、下に折り返してつけておく。

この本の魅力は、30代や40代、あるいはそれ以上の年齢の女性に非常に優しい点にあろう。
一般に、加齢は、女性にとって、性的な魅力と反比例すると言われる。しかし、リョウは、どの世代にも、どの女性にも、魅力を見つけていくのである。それぞれに、それぞれの魅力があると。
姫野カオルコが解説に書くような優しさ、うそつきな優しさかもしれない。ソフィスティケートされているという優しさである。
たとえ嘘であったとしても、だまされてみる楽しみがある。春を買う行為は、快感を買うのではない。嘘を買うのだ。

嘘。けしてありえぬ幻想であり、魔術であり、手の届かぬ理想の高みにある幸福であるかもしれぬものを夢見て。
私は男性を買おうとは思わぬが、嘘を買いたくて本を買っているのだろう。両者が夢見る夢は、さほど変わらないのではないだろうか。
あざとく感じるほど、この作者もそつがない感じがする。言葉選びといい、設定選びといい。
売買春を美化しすぎのような取り扱いは好きではないが、読みやすく綺麗に形作られた幻想だったのではなかろうか。

男性は性行為ではたして気持ちいいのか? 時々、私は不思議になる。
こういうことを書くと、またぞろ、あやしげなトラックバックが届くかもしれないが、AVの言語学では、男性の性の成功は、相手の女性がいかに感じているかってところで描かれているじゃないですか。決して、男性がいくところを、うっとりアップにするような描写ではない。つまり、男性に成り代わって一体化して女性と性行為する幻想を描くものであって、女性と性行為している男性に自らを投影するような客体性を持っていないんじゃないか、と思うのだ。女性が気持ちよければ男性も気持ちいいのかというと、それは単純に短絡にイコールしていいものではないだろう。
同様に、いくつかの小説をあげてみようか。藍川京でもいいし、斉藤綾子でもいいし、姫野カオルコでもいいけれど、女性の書き手が描く性描写は、当然ながら、女性の気持ちよさの描写を追及しており、女性を気持ちよくできる男性は素晴らしい(男性も気持ちよい、ではない)というロジックの上に展開されやすい。
この非対称の上に、森岡『感じない男』なんかが布置されてくるんじゃなかろうか。快感よりも、射精直後の虚脱感や虚無感に重きを置いた、むなしさを主体とする男性の性体験の語りである。
しかし、『娼年』では、男性側の快感の体験をきちんと書いてあるんである。これは、私はあんまり読んだことのないものだ。稀有である。感心した。

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コメント

私も石田作品、初読みでした。
しかし、まさかこれが被るとは思わなかった(笑)

すずなちゃん、ども。
なかなか手を出せなかったんですが、すずなちゃんも読んだんだったら読んでみようかな、と思って。
読みやすいけど、なんだかね。もてる男性の話より、もてない男性の話のほうが、私は好きなようです。(^^;

こんばんわ。TBさせていただきました。
石田作品は初読みだったのですね。
この作品、結構酷評も書かれているんですけど、私は嫌いじゃないです。
ストーリーも良かったですし、内容もリアルでしたけどその分深い部分も垣間見えた気がします。
続編も今、予約中です。
気になっています・・・

苗坊さん、TB&コメントありがとうございます。
綺麗事ばかりで生きていけるほど、人間の心は単純じゃないのです。そういう作者の目線は、私も嫌いじゃないです。
女性が持つ感性への理解が見事だと思いました。上品で清潔感があり、美しい小説だったと思います。。
続編もあるんですね。リョウがどうなるのかな。成長が楽しみですね。

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