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2008.04.17

(雑誌)ストーリー・セラー

有川浩 Story Seller2008年春号(小説新潮5月号別冊)

号泣。
これは、泣けと言われているのと同じだ。
途中から涙を拭くのも、もどかしくページを繰った。
目が言葉を避けようとする。いとしくて、悲しくて、痛くて。

短編と呼ぶには長い。だけど、長編ではない。
例によって私がスルーしそうなところを、本屋さんが電撃文庫Magazineと一緒に押さえておいてくれた。
雑誌のタイトルと、短編のタイトルが同じで驚いた。
物語を売る人。このタイトルが、その書き手の心情に踏み込むような臨場感のある小説を生み出してくれたのだから、ありがたいことだ。

主人公は、小説家の夫。
夫の目を通して描かれる小説家の物語は、作者の現実の生活や経験を切り売りしているのではないか?と疑いそうになる。
そう疑ってしまうと、二人の出会い、恋の顛末など、人の生活を盗み見しているような気恥ずかしさとか居心地悪さを感じて、赤面しそうに照れてしまった。
これは創作なのだけど、有川さんの小説への愛情と、旦那さんへの愛情は、たっぷり詰まっていると思うなー。

それなのに。
幸せなままでは終わらないのだ。この物語は。
潔く小説家のままでいるために、どれだけの代価を払いうるのか。
内からも、外からも、足を引っ張る人たちがいる。襲い掛かる病魔。
覚悟を決めても揺り動かされるようでは、覚悟は足りない。
そんな人を最後まで見守ることができるだろうか。支えることができるだろうか。命を縮めるものをすべて取り上げて、その人がその人らしさを失ってでも、ただ生きながらえさせようとせずに、尊重することができるのだろうか。
そのままでは、相手を失うとわかっているのに。

ラストの、夫婦それぞれが選んだ言葉は、読み返しても涙が出てくる。
映画『私の頭の中の消しゴム』を思い出した。
小説は小説にしかない病気を生み出しているが、同じテーマは、日々、現実においても緩和ケアや、様々な場面で繰り返されていることだろう。
その人の人生を選ぶのか、生命を選ぶのか。逝く側には逝く側の苦しみがあるのはもちろんだが、看取る側には看取る側の苦しみがある。

そして、自分は自分のままでいられるのだろうか。
多分、私も仕事を続けるのかなあ。しちゃいそう。
家族と過ごして、猫たちとうだうだして、友人たちと会って、一人で落ち込んで、本を読んで、文章を書き散らかして、それでも、やっぱり自分にしかできないことを探す気がする。

私は、書き手くずれだ。論文書きのトレーニングを受けたが、大成しなかった。そういう意味で「くずれ」だ。
子どもの頃は小説書きであった。見せるためではなく、自分のために、物語を必要としていた。誰にも見せないとなると何にも書かないから、小説書きではない。大人になってからは書く必要もなくなった。
それでも、読み手の欲望だけでなく、書き手の羞恥は痛いほどよくわかる。
言葉は、どのように用いるのであれ、私をさらけだす。だから、この場もまた、普段、出会う人に教えるのはたまらなく気恥ずかしい。特に仕事で出会う人には教えられない。私の心情に触れられても大丈夫な人にしか、教えたくない場所である。私を知らない人に見られるのは、意外と平気なんだけどね。

言葉を使う仕事に、私はやはり就いており、書き言葉ではない話し言葉で、物語を日々編んでいる。

Story Seller (ストーリーセラー) 2008年 05月号 [雑誌] Story Seller (ストーリーセラー) 2008年 05月号 [雑誌]

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コメント

なんというか、いろんな意味でガツーンときた小説でした。これが「雑誌掲載」というのは、もったいないような気がする。
何度も読み返したいという思いもあるけれど、それなりの覚悟をしないと最初からキチント再読するのは無理かな・・・という思いもあるんだよなぁ。

ということで、とりあえず会社の貸し出しルートに乗せちゃいました(笑)返ってきたら、読み返そう。

すずなちゃん、ども。
記事を書きながら、すずなちゃんのことを考えていました。「号泣」という言葉を書くと、すずなちゃんを思い出すから。
それでも、他の言葉はぴったりこなかったのです。記事を書くために読み返していたら、やっぱり涙ぐんでしまいました。

有川さんの作風がどんどん広がっていますね。
ますます目が離せません。

香桑さん、こんばんは(^^)。
何というか、とても衝撃的で、切なくて、どうしたらいいのか分かりませんでした。
とにかく泣いて泣いて、そして感謝しました。
有川さんと、その旦那様に。
進化した有川さんの作風に、これからも読み続けられることに、喜びを感じました。

水無月・Rさん、こんばんは。
本当に、涙を禁じえない、心を揺さぶる小説でしたね。
有川さんという作家さんがどこまで、どれだけすごくなっていくのか、旦那さんの次の次の次の……後ろのほうの背中のほうからでいいから、ついていきたいと思います!

香桑様、こんばんは。
辿り着きましたので、初コメントさせていただきます。

有川さんの『ストーリーセラー』は本当に感動でした。
前半は勢いがあって、二人がどんな恋愛をしていくのか楽しみでしたが、後半はこれまでにない意外な展開でした。
私も、これは実体験が少なからず入っているのか?とか『私の頭の中の消しゴム』を思い浮かべてみたりしてました。

私も「書ける側」ではないので、ながながと駄文になってしまいました。

ようこそ。杏子@威風堂さん!

最初は有川さんお得意のベタ甘系?と思っていたら、予想外の展開でした。
この小説は、読めてよかったと心から思いました。
そして、私が読むことができたのは、あなたのおかげです。ありがとう。

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