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2008.04.25

少女には向かない職業

少女には向かない職業 (創元推理文庫 M さ 5-1)  桜庭一樹 2007 創元推理文庫

青空と黄色いフリージア畑。廃墟となった建造物。
乳と蜜の流れる土地は、しかし、少女たちには約束された土地ではない。
殺人者とならざるをえなかった少女たちにとっては。
いつかたどりつく目指すべきカナンではなく、罪を犯したら追い出されなくてはならないエデンだった。

中学二年生の二人の少女、葵と静香。
終始、葵の一人称で語られる所為か、最初のうちは読み心地が『青年のための読書クラブ』とは異なって感じたけれども、読み進めば同じ精神によって紡がれたことは疑いようがない。
離島という環境の持つ閉塞感。ママは怪物を飼っている。たった13歳で、独立できるほどの能力はまだない。自立できるほどの権利も与えられていない。どうしようもなく、子どもとして在るしかない主人公。
周りが思っているほど子どもではなく、しかし、本人が思うほど大人にもなれていない年頃のアンバランスさは、静香の造詣の絶妙さでも表される。

この世代の居心地の悪さ、居場所のなさを描いた小説としては、ほかに、藤野千代『ルート225』なんかを思い出した。
万能者のファンタジーや貴種流離のようなファンタジーを思い描くこともあろう。
さまざまなファンタジーの力を借りながら、子どもは現実をやり過ごし、乗り越え、折り合いをつけていく。
しかし、時に、現実は圧倒的な悪意や容赦のない害意をもって立ちはだかることがある。

用意するものはすりこぎと菜種油です
用意するものは冷凍マグロと噂好きのおばさんです
用意するものはバトルアックスと殺意です

子どもは子どもなりに戦っているのだ。全力で。
渾身の力をふりしぼって。全存在をかけて。死に物狂いで。
太刀打ちができなくなりそうな絶望感の中で。

この小説の秀逸さは、凶刃を振り下ろすまでの過程にあるのではない。
追い詰められて殺人者になった、その後の心を描いているところが素晴らしい。
からだが勝手に死んでしまいそうなほどの恐怖や後悔を描いているところが、少女に凶器をもたせて喜ぶ悪趣味から、物語を救っている。
少女の魂は殺人には向かない。これは、性差別的な表現ではない。祈りにも似たメッセージに感じた。だから、手を出してくれるな。
少女には向かない職業があるのだ。

***

TBのかわりに……

藍色さんのブログ 『粋な提案』 少女には向かない職業 桜庭一樹
著者はゲーム等のノベライズと、多彩なライトノベル作品を執筆。東京創元社のミステリ・フロンティアシリーズの1冊で初の一般向け作品です。

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小説(日本)」カテゴリの記事

コメント

香桑さん、TB&コメント、ありがとうございました~(^^)。
13歳という年齢の、閉塞感。
〈少女〉という檻に囚われて、犯してしまった「ひとごろし」。

>祈りにも似たメッセージに感じた。だから、手を出してくれるな。
少女には向かない職業があるのだ。

その向かない職業を犯してしまった、彼女たちのその後が気になります。
桜庭さん、書いてくれないかなぁ…。

水無月・Rさん、こんばんは。
義父の殺人は立証できそうにない気がするので、二人目のほうだけ立件するとして……と、思わず真剣に考えてしまいました。
少女から大人の女性になったとき、深みのある豊かな心の持ち主になっていてもらいたいですね。

香桑さん
こんにちは♪
子供は子供なりに全力で戦っている・・・そーだそーだ!というか、全力で戦う子供はある意味美しいです。なんだか目を引かれちゃいます。戦わなくてはいけないところが哀しいですが。。。
黒と水色が混じったような印象の本でした★

 「つき指の読書日記」は下記の方へ移設しました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

   http://plaza.rakuten.co.jp/tukiyubi1

>やぎっちょさん、こんにちは。
反抗期の子どもは、なにかしら戦っているような気がします。それが、バトルアックスを振り回すような戦いでなければいいのですが……。
いわゆるバトルロワイヤルものと一線を画しているところがいいなあ、と思った本でした。

>つき指さん
お知らせありがとうございます。以前いただいたTB先を見ることができなかったので、心配していました。
今後ともよろしくお願いいたします。

こんにちは。
TBされていますでしょうか。
本当に切ない話でしたよね。
人に話せない悩みを抱えて、子どもだけで闘っている姿が本当に切なくなりました。
最後はほっとしましたよね。

苗坊さん、こんにちは。TBありがとうございます。届いています。
途中まで葵に実行犯をさせる静香のずるさに腹を立てたりもしたのですが、最後は二人とも等しく可哀想で。
しばらく余韻に酔ってしまいそうです。

読んだ時には、あのラストに「え;;;」だったんだけどね。必死で闘った結果がそうなるのか・・・;;;という感じで。
でも、こうやって他の人の感想を読むと、あのラストにならなければ、彼女達は救われないのかもなぁ・・・と思うようになった。
こんな風に色んな人の思いを自分の中に取り込んで咀嚼出来るっていうのは贅沢なことだなぁ・・・と思う今日この頃。

いろんな感想があるよね。人によって感じ方、考え方、目の付け所が異なっていて、なるほどと思ったり、そうかなと思ったり。
読書ブロガーさんオフがあると、楽しいだろうなぁ。
この本も、皆さんのブログを読んでいなければ、きっと手に取らなかった。
予想以上に、読んでよかった本でした。

こんばんは。
スラスラと読み進められるんだけど、自分達を取り巻く世界に立ち向かう少女たちの姿が印象に残りますね~。読み終えてしばらく経つんですけど、彼女達の痛々しい姿、必死な姿が印象に残り続けてます。

エビノートさん、こんばんは。
桜庭一樹さんという作家さんにファンがいる理由がわかったような気がします。
印象に残る本でした。

こんばんは。
桜庭さんの描く葵の心境がよく伝わってきましたね。
戦っている子どもに何もできないでいる大人への警鐘も含まれてる気がしました。

TBいつもしてるんですが反映されなくてごめんなさい。
いつもリンクお手数おかけします。ありがとうございます。
一行目コピーまで…うれしいです。

藍色さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
いつも通り、リンクさせていただきました! 御了解ありがとうございます♪

確かに、大人への警鐘も含まれているでしょうね。
心の中でバトルアックスを振り回している子ども達が実はすぐそばの身の回りにいるかもしれませんものね。
いい本でした。

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