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香桑の近況

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2008年2月

2008.02.28

自己愛性パーソナリティ障害のことがよくわかる本

自己愛性パーソナリティ障害のことがよくわかる本 (健康ライブラリー イラスト版)  狩野力八郎 2007 講談社

パーソナリティは、成熟していくものである。
他者と安定した関係を築き、他者も自己をも多角的に複雑に認知し、他者への共感性を示し、自己の傷つきもそれなりに乗り切ることができ、理想と現実の間で現実的な理想を持ち、理想的な現実の実現に励むことができるような、そういった様々なたくましさを身に着けられるようになる。
パーソナリティ障害は、それ自体で固有の症状を持つものではなく、関係性の中での問題から検討される。
どこからが個性ではなく、パーソナリティ障害となるのか。その明確な線引きは難しいかもしれないが、本人や周囲が非常に苦痛を感じていたり、生活に支障が出ているときには、看過するのは不適切だ。

この説明しづらい、けれども現に困っている人がいる問題を、図解しながらわかりやすく説明しているのが、本書の魅力。
単にDSM-4的な診断基準の紹介にとどまらず、発達障害との関連を指摘したり、ライフコースの視点から問題の生じやすい時期を挙げてみたり、充実している。
治療法について多角的に解説されているところは、専門家、臨床家にとっても参考になるのではないか。特に初学者にとっては心強い手助けになるだろう。
また、家族や職場への心理教育として必要な情報もまとめられている。
全体的に、個々の説明は複数の視点からなされており、偏りがなく、信頼に値する。

パーソナリティ障害の中では、一時期ボーダーライン(BPD)が注目された。
が、不健康な自己愛の問題も、かなり重視されてよいと思われる。
自己愛性が過度に高いといっても、いかにもナルシスティックな感じになるとは限らない。
横柄で傲慢な周囲を気にかけないタイプの人もいれば、内気で臆病な周囲を過剰に気にするタイプもある。
孤立しやすく、挫折に極端に弱い人たちであり、共感性の低さから人間関係でのトラブルも少なくなく、本人たちもしんどいだろうと思う。

理論的な説明もあることから、一般向けにしてはやや難しいページもあるかもしれない。
が、「ああ、あるある」とうなずいてしまうようなところが多い人には、「安定した自己」を手に入れるために、一歩を踏み出してもらいたい。

2008.02.23

なかよし小鳩組

なかよし小鳩組 (集英社文庫)  萩原 浩 2003 集英社文庫

いい終わり方だ。
ほろりとするような、胸がしめつけられるような、それでいて、さわかやかな汗に涙がまぎれるような終わり方だ。

だーけーどー。
その後、どうなったのか、後日談が知りたくなるような終わり方だ。
続編があったら、即、飛びつきたくなる。

『オロロ畑でつかまえて』に出てきたユニバーサル広告社の次の仕事は、小鳩組のC.I.。
ここ数年、日本の企業の日本らしい名前が、カタカナの社名にいつのまにか変わっていることに気づく。
海外での戦略というならば、意味の無いようなあるような造語にしても、日本語のローマ字表記にしても、大差が無い気がするがあるのだろうか?
松下がパナソニックになって、カネボウがクラシエになったり。藤沢がアステラスになったのは合併もあったからだけど。
従来からの社名やロゴ、マークなどに愛着を持つ人も多かったであろう。ユーザー、スタッフを問わず。

その状況は、小鳩組においても同様である。
さる理由から対外的なイメージ戦略を必要としている。けれども、構成員はそれを苦々しく受け入れがたく感じている。
他方、ユニバーサル広告社としては、なんとしてでもクライアントを満足させないと、世にも恐ろしいことが待っている。
なにしろ、相手が相手だ。一筋縄ではいかない玄人さん達を、著者は近すぎず、遠すぎず、絶妙な間合いで描く。
お気に入りは、桜田。マルグリッドを知っていて、キース・へリングのネクタイをしている強面さんが憎めない。

ダメ親父でダメ男、ほとんどダメ人間になりかかっている杉山を主人公に、別れた妻子との関わりを絡めて、物語は進む。
元気いっぱいの早苗ちゃんがなんとも可愛い。わかっているのかわかっていないのか、ドラマの中のませた台詞を真似しては、杉山と読者をどきりとさせる。
離婚後の元夫婦のぎこちなさ、元妻の再婚相手への複雑な気持ち。家族の模様の描写もすぐれている。
ユーモラスだけど、笑い飛ばしきれない、切なさが隠し味。走り出したら止まらない展開から目を離せなくなる。

ところで、猪熊嬢は誰のためにお弁当を作ったのか?
やっぱり続きを読みたいなあ。

2008.02.19

キリスト教は邪教です!:現代語訳『アンチクリスト』

キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』  F.W.ニーチェ 適菜 収(訳) 2005 講談社+α文庫

笑いながら読むニーチェ。
こんな風に訳してくれると、確かに読みやすい。格段に読みやすい。その上、ニーチェのハイテンションっぷりがよくわかる。危なっかしくて、ひやひやする。
『アンチクリスト』を初めて読んだのであるが、ニーチェがいろんな誤解や問題を引き起こすのもわかった気がする。

哲学を真面目に扱いたい人であれば、できれば、これを読んだあとに、他の訳の『アンチクリスト』を読んでみたほうがいいだろう。
そうじゃないと、ニーチェを語るのか、訳について語るのか、ちょっと混乱を招きそう。
ちなみに私がほかに読んだことがあるニーチェの著作は、『ツァラストラはかく語りき』のみ。
哲学プロパーでもないので、ニーチェでがははと笑えた驚きだけで、十分である。

内容が内容であるため、訳語を選ぶのも気を遣うことだろうが、表現上の問題から眉をひそめるところもある。そこは、ニーチェの問題だと私は思う。
個人的な興味で宗教における女性原理の問題など、仏教を過大評価しているが、キリスト教批判は尤もだと頷いてしまうところもある。
歌舞伎の鳴神を見ながら考えていたことであるが、鳴神上人は仏陀でさえ妻子がいたのだからと雲の絶間姫への欲情を肯定しようとする。
仏教文化では処女性が神格化されていないと思うが(ギリシャには処女神が三柱はあるし、チベットには処女神クマリの信仰もある)、基本的に僧侶は純潔を求められ、女性は誘惑者の位置づけになる。性的な関係を穢れとするのか、女性を穢れとするのか、解釈は横においても、生と性の自然な活動を拒絶することに価値を置く点では、キリスト教と大差がないように感じてしまうのだ。

ニーチェの文章はプラトンへのオマージュであり、人間の自然の姿も『国家』を翻案したものである。
現実の生を肯定し、透徹して、より高貴に生きよとルネサンス(うまれかわり)を呼びかける。
借り物の他民族の文化(ユダヤ文化およびその派生であるキリスト教文化)を捨て去れ、と、ドイツの責任を問う。
民族の意識を鼓舞する強い口調は、ナチスへと扇動する道具として利用しやすかったことだろう。
ニーチェの憧れの女性が、コジマ・ワーグナー(フランツ・リストの娘。指揮者ビューローと結婚後、離婚してリヒャルト・ワーグナーと再婚)だったことを考えると、全体が大きな弁明にも見えてくる。

本書は、やぎっちょさんの"やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!!で知りました。
哄笑もすれば苦笑もし、嘲笑も漏れる、この批判の書。
登場人物についての説明も充実しているので、哲学初心者にも親切。試しにどうぞ!

2008.02.18

風の大陸:最終章 祈り

風の大陸 最終章 祈り (富士見ファンタジア文庫)  竹河 聖 2006 富士見ファンタジア文庫

たった三人の出会いが、世界を救う旅に繋がる。
国産のファンタジーの名作の一つを読み始めたのは、巻数が二桁になってからのことだった。
私はもともとは海外の、特にイギリスのファンタジーを好んでいたが、いつも平積みにされる本は気になるものだ。
いのまたさんのイラストの美しさにも惹かれて、読むようになった。

最終巻は28巻目になる。外伝も出ているが、それは最初の3冊しか読んでいない。
風の大陸の銀の時代を描いた、巡検使カルナーのシリーズもあった。
本編を手放すことを決めて、記念にこの最終巻だけを読み返してみた。

アドリアからアステ・カイデ、そして、ローダビアへ。
作者の描く諸文化は、詳細で具体的で、取材されたもののような現実感があった。
古代の文化史を紐解いたとき以上に、活き活きとした生活感がある。
風土が違えば、建築も異なり、衣装も食事も制度も異なる。
多様で豊穣な世界は、ゆるやかに滅びへと向かっていた。

この巻では、ついに運命の日が来る。
長い旅を経て、最後には仲間は7人に増えた。
別れた者や死んだ者、共に歩み続けることはかなわなかった者達もいる。
共に歩まずとも、思いははるか愛しい人のもとに。
暖かく見守る慈愛、切なく焦がれる思慕、あるいは、羨望や期待。
さまざまな思いを織り込みながら、祈りは世界をめぐる。

さしあたっての危機はやりすごすことができた。とりあえずのハッピー・エンドだ。
ここに作者のバランス感覚や良識を感じる。現実的な条件付けではないか。
世界はいつかまた脅かされるかもしれない。何が起こるかわからない。
未来永劫の幸せではないが、しかし、今は喜べ。

ふりかえって、現実のニュースを見よう。
私達は、この危機を乗り越えることができるのか。
やり過ごして、未来を紡ぐことができるのか。
思いを一つに祈ることができるのか。

単なるファンタジーに収まらぬ骨太さを持った作者のメッセージが、長く読み継がれてほしいと思った。
人間もまた自然の一部に過ぎないことを、世界と一体であることを、忘れずにいられるように。
ちゃんと終わりがあったことも嬉しかった。やれやれ。長い旅であったことよ。

2008.02.15

リストカット症候群から卒業したい人たちへ:ストップ・ザ・カッティング

マンガリストカット症候群から卒業したい人たちへ―ストップ・ザ・カッティング― たなかみる 2008 星和書店

メインは著者の体験記。
リストカットと過食嘔吐。6年以上、入退院を繰り返す中で、体験したことや見聞きしたことを中心に、いろんな人の場合を紹介したり、治る過程を紹介している。

体験者であるだけに、症状が激しいときの様子や、乗り越え方にも、説得力がある。かなり、ざっくばらんに述べられているので、共感する経験者も多いのではないか。
読んでみれば、どれだけ本人たちがしんどい思いをしているのか、縁遠い人にも感じてもらえるのではないだろうか。甘えでも意志が弱いわけでもなく、本人にもどうしようもないところで、症状に取り付かれてしまった。
自分を傷つけずにすむような自分を育てていくには、本人が自分を助けようとすることと、周囲の理解や適切な協力が必要となる。

カッティングのシーンや、傷跡の話も多く、著者も「諸刃の剣」だと書いているし、著者の主治医も「決してまねはしないでください」と繰り返し述べている。
情報を流布することで、真似する人が増える危険性は免れないとしても、正確な知識は必ず役に立つ。
自傷や過食嘔吐をやめるためのヒントになるよう描かれた本だ。マンガではあるが、内容は軽くはない。回復の道は、きっと誰にでも開かれている。
家族や身近な人への対応の仕方もしっかりと書かれており、知識が必要になったときのとっかかりの一冊としてもお勧め。

自分で自分を助けてあげてほしい。
焦らず、慌てず、あきらめずに。

2008.02.10

塩の街(単行本)

塩の街  有川 浩 2007 メディアワークス

積んだまま数ヶ月。発売直後に購入したまま、積んで塩漬け状態。
このたび、ようやく読みました。
『阪急電車』の前から読み始めて有川作品を読むぞー!と気分を盛り上げるためでした。
文庫本のときの感想は → 塩の街:wish on my precious

 ***

未来がいつまでもあるとは限らないのに。

文庫本を読んだときには、作者の背景まで思い至らなかったのであるが、この物語を動かす天変地異を阪神淡路大震災に重ねると、喪失の体験のアクチュアリティに胸がふさいだ。

いつも、いつまでも共にいられるという保障はないのに。

現実にはありえないであろう空想の物語は、永遠という幻想を奪われた体験の現実性を有している。
有限性の現実感は、幼い子どもには感じられないものだ。万能感の傷つきは、大人が経験してきたものだ。
万能感に酔うのでもなく、万能感の傷つきに腐るのでもない。
だからこそ、この物語は、ラノベの枠組みを超えて、年齢に関わらずに読まれる可能性を持った。

どうして、私の好きなものを人が決め付けてしまうの。

たとえ傷ついていたとしても、登場人物たちはだからといって生きるのをやめはしない。
一長一短。どこか優れていれば、どこかまずいところもあるようで、ごまかすこともあれば、やさぐれることもある。
子どものような純粋さで、表面を偽善的に取り繕うことをしない人物の造詣もまた、有川作品のその後に受け継がれる特色だろう。
子ども相手に容赦をしない。子どもだましを狙わない。
といっても、デビュー作だからか、ずいぶんと秋葉も入江も英雄的な属性を持っているが。

世界はもう優しくないと、わかっていたはずなのに。

それでも、恋をする。
それでも、希望はある。
それでも、人は生きているのだ。

世界が突然変わってしまっても、命は続いていくから。

マナは、神が与える食糧。神の恩寵。
罪と罰に世界が覆われるときにも、どこかに希望は残されているように。

塩の街のその後の模様も三編収められており、文庫本と比べると、世界がさらに深まっている。その後の作品と見比べても遜色のない完成度を得た。
設定の小さな変更修正のほか、内容面でも大きな改訂がなされている。それがまた、自衛隊三部作の陸の部としての印象を強くして、本来の姿がこれであったのかと思わせられた。
そういえば、この年の差カップル。年の差ぶりに、新井素子や川原泉の影響を見出してみた。そういうところも好きだったりする。
早く読んでおけばよかった~。

2008.02.08

ひとり暮らしの息子へ:元気のでる韓国レシピ

ひとり暮らしの息子へ―元気のでる韓国レシピ  ジョン・キョンファ 2003 講談社

ページを開くたびに、大興奮。
どうして、赤という色は、こんなに食欲をそそるのか。
決して辛いものが得意なほうではないけれど、この本のお料理は見ているだけでよだれが出てくる感じ。

こんなに美味しそうなお料理は、母から息子に伝える皿だ。
お料理ごとの効用の説明は、話しかけるような口調になっている。
複雑な手順のものはなく、どこかに一工夫を加えてみたら、すっかり韓国風になることがわかる。
いつもの材料しか冷蔵庫になくて、だけど、いつもとは一味変えてみたいときの参考になるだろう。

今度の週末は、フライパン焼きナスと、鳥クッパブを作ってみようかな。
オイキムチは夏のお楽しみに取っておいて、カブのキムチも添えてみたり。
もやしだけじゃなくて、きのこのナムルや小松菜のチョレギも副菜にぴったり。
カムジャ(じゃがいも)チヂミは、自分で作るよりも、作ってもらいたい、食べに行きたい一品かな?

2008.02.03

舞妓調教

舞妓調教 (幻冬舎アウトロー文庫 O 87-1)  若月 凛 2007 幻冬舎アウトロー文庫

エロを扱ってはいるものの、なんだか異色な官能小説。
タイトルや表紙から受けるイメージとは、少し違う読感だ。
これを単に官能小説扱いしたらいけないだろう。と、思ったぐらいの重厚さにびっくり。
取材の後を感じる。作者は普通に歴史小説を書ける筆力を持つ人ではなかろうか。

時代の空気の描き方が上手い。
昭和18年、京都の祇園から物語は始まる。舞妓佳寿が主人公だ。
衿を変えずに嫁入りしようとしていた娘は、やくざの親分に見込まれる。
理不尽な性行為。妾奉公という軟禁にも等しい状況へ。

前半の展開は確かにタイトル通りかもしれないが、戦時下の祇園の描写は具体的だ。
後半にストックホルム症候群を見出すと、物語としては興醒めだ。
緊縛やら刺青やら一通りいろんな描写が出てくるが、そこは読者の好き好きであるとして。
個人的には痛そうな場面は苦手なので、ちょっとすっ飛ばしたりもした。
普通にしているのが一番いとしい。そんな主人公の心情を丹念に描いているところは、女性向け。

結末の数ページを読んでみても、わざわざ官能小説にしなくてもよいのに、と思った。
とはいえ、その部分がないと迫力も劣ってしまうのかな。
『鬼龍院花子の生涯』の系譜に置いてみたい気がした。

ネットの海をさまよって、レビューを見つけて気になった。
いつもの本屋さんでは買いづらく、これはネットで購入。やっぱり、ちょっとね。(^^;;
もともとのタイトルは『狂恋』だそうだ。それも少し違うかなあ。

2008.02.02

中国家庭料理のおいしい教科書

中国家庭料理のおいしい教科書  ウー・ウェン 2007 平凡社

料理はそんなに作らないけれども、料理の本は好きだ。
それで、「料理」のカテゴリーも作ってみることにした。
記事の数を稼いでいるわけじゃ……あわわ。(^^;

大きな文字。明快な手順。単純な説明。過程の写真。
教科書のタイトルにふさわしく、非常にわかりやすい。
基本をおいしく作ることにこだわって、基本的な素材の扱い方、基本的な調理の仕方を教える本だ。
定番中華の作り方も載っているが、それ以前の基本の基本は、きっともっと挑戦しやすい。
その上、シンプルなのに、おいしそうなのだ。

中華料理の初心者に限らず、料理の初心者にもお勧め。
漢字にルビはないので中学生向けではないけれども、初めての一人暮らしの人にぴったり。
このシンプルさは、お弁当のおかずのヒントにもいいかも。

とりあえず、今度、作ってみたいのは、「こしょうを厚揚げと煮る」もの。

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