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2007.12.21

仔羊の巣

仔羊の巣 (創元推理文庫) 坂木 司 2003 東京創元社

3つの中編が含まれているが、伏線が繋がりあっているため、一本の長編として読める。
『青空の卵』の続編とあり、確かに続けて読んだほうが、人物関係がわかりやすい。
私が読んだのは、文庫ではなく単行本のほうだったけど。

ひきこもり。
前作出版後、この言葉を使ったことで、意見されることもあったのだろうか。
作者は坂木をして鳥井の状態を精神科医が正式になんと呼ぶかはわからないと言わせる。
上手だな、と思ったのは、このあたりだ。確かに、ひきこもりというのは精神疾患名ではない。
不登校が病名でないのと同じことだ。NEETだって、アダルト・チルドレンだって、病名ではない。

むしろ、ひきこもりは坂木と鳥井が拠って立つ、これこそが鳥井であるというアイデンティティである。
アイデンティティとして、共同で作り上げられたファンタジーである。
二人は、二人だけの閉じられた関係にひきこもろうとしている。

この巻は、坂木のアンバランスさが目に付いて、気になって仕方がなかった。
自分には問題があると自覚している人はいい。
自分には問題がないと豪語している人のほうが、はるかに危なっかしくて、怖い。
だからこそ、滝本のざくりと差し込む指摘が書き込まれていて、安心した。

いつかは、ここから出なくてはいけない。
暖かくて居心地がよい、親密で安全な巣。
鳥井だけではない。坂木もまた巣の中だ。
喪失の予感が漂う中、新たな登場人物たちとの新たな物語りがつむがれる。
本物の子どもががんばっているときに、一応の大人がそれでいいの? そんな風に。

ここで一番かっこいいのは、栄三郎さん。前作以上のいぶし銀の魅力である。
叱るって、こういうことだ。有川浩『空の中』の宮じいに並ぶかっこよさだ。
この大人の領域に至るには、主人公たちはまだまだ修行が足りないのである。
立ち止まっていたら、いつまで経ってもたどりつかないよー?

もう一つの上手な弁護は、同性愛だろう。坂木はヘテロであると強調する場面が増えた。
批判を自ら言及することで攻撃性を無効化できる。作者の気苦労を感じた。

いつか来るその日を前に。
秋から冬へ、季節は巡り、また新しい年を迎えて。
さあ、次の物語『動物園の鳥』へ。

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コメント

ちは!!
栄三郎さんが、かっこよかったねーっ。ホレボレ。

TB送ってもらったと思うんだけど、届いてないようです;;;良かったら、再送お願いします。

ばんは。TBの再送、うまくいったみたいでよかったです。
栄三郎さん、かっこよかったねーっ。
古式ゆかしい握り拳に笑ってしまいました。
このシリーズ、途中から、ミステリではなく、「渡る世間は~」みたいな人情ものドラマ風味な読み物なんだと思ってしまいました。したがって、文中のなか川の景色も……。(^^;

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・・・最近、水分の過剰摂取気味なんか?と、自分に突っ込みをいれたくなりました;;; 「青空の卵」に続くシリーズ2作目。3つのお話が収められています。 [続きを読む]

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