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2007.11.20

マラケシュ心中

マラケシュ心中 (講談社文庫) 中山可穂 2005 講談社文庫

胸を打つ言葉の数々。
どの台詞も、どの独白も、いつかの恋を思い出す引き金になる。
この切なさ、この苦しさ、この悲しさ、そして、愛しさ。

私が言葉にできなかった思いが、そこここに書き留められている。
こんなに書き抜いてくれる人がいるのに、どうして彼には伝わらなかったのか。
彼が男性であったためだとしておこうか。これは女性の恋愛小説であるから。

映画「シェルタリング・スカイ」を観た後に、ふと思い出したのがこのタイトルだった。
中山可穂の小説は、これまで『猫背の王子』と『白い薔薇の淵まで』を読んでいる。
検索をかけたときに、著書のタイトルだけは目にしている。フラッシュバックのようにタイトルが思い出され、読もうと思った。
だから、小説の中にこの映画が出てきたときには、にやりとした。映画とあわせて読むことがお勧めだ。

美しい友のままでいられれば、あの人との関係は切れずにすんだのだろうか。ヒロインの泉の差し出した道徳律は、私が抱えている後悔を再燃させた。恋がいつか終わるものなら、なんで友に踏みとどまらなかったのか。そんな後悔を持つ人は、泉の提案に頷くだろう。
私は、恋人になってはいけなかった。この道徳律を宣言する潔さが私にはなかった。胸をぎりぎりと締め付けられる思いがした。

しかし、私は主人公である絢彦の気持ちに寄り添う。好きな人の心だけでは満たされない。体だけではもっと満たされない。心も体も切り離さずに愛したい。大切なものが手に入らないのなら、ほかには何にもいらない。
私の恋愛観は、中山の影響が大きかったのかもしれない。作者の描く思いつめるような恋愛にシンパシーを感じ、生の喜びと性の歓びに憧れを抱く。

たった一つの出会いの後には、死ぬ瞬間まで、私はその人に満たされている。
泉のように、私から距離を置いた人もいた。彼女が生きているだけで幸せ。彼女が幸せでいることが幸せ。共に死ぬことを願わず、共に生きることをあきらめて、私よりも長生きして私の生を見届けたいと言ってくれた。
その言葉は今も私を許し、支えてくれる。これ以上の祝福はいらない。

絢彦がマオに対して抱くような、いつか自分が産んだかもしれない子どものようなものだと、愛情を持つこと。
こんな愛情も、今の年齢になってから、感じることがしばしばある。性愛とは違うところで働く愛情だ。この子の、この人の、母親でありたかった思うような、母親のように愛したいと思うような、そういう気持ち。

最後まで読んだとき、ほっと一息、ため息のように息を吐いた。緊張感のあふれる恋愛小説だ。
著者はこの後しばらく小説が書けなかったと後書きに記しているが、読者もしばらく小説が読めなくなりそうな重量感である。
物語の構造は『白い薔薇の淵まで』に似ているところもあるが、だからこそ余計に、この終わり方がよかったと思った。読んでよかったと思った。

心中は凡人には及ばぬ領域。そんな恋は恐ろしくてできやしない。小説だけで十分だ。
私は凡人のまま、寄り添う恋を、生き抜く愛を、思っていたい。
見守ることすら許されなくても、心の中で祈っている。あなたが幸せであれ、と。

 ***

恋がいつか必ず終わるものなら、わたしたちは恋人同士になるのはやめましょう。何も契らず、何も約束せず、からだに触れ合わず、それゆえに嫉妬もない、いかなるときも自由で、平明で、対等な関係のまま、いつまでも離れずに、この世で最も美しい友になりましょう。(p.93)

 ***

TBのかわりに……

『マラケシュ心中』/中山可穂 ○ 水無月・Rさん:蒼のほとりで書に溺れ。

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コメント

香桑さん、こんばんは(^^)。
香桑さんは、中山さんの描く狂おしい情愛世界に共感できるんですね!素晴しいです。
感性鋭く、己を強く持っていなくては、多分この世界を理解し得ないのではないでしょうか。
とても、うらやましく思いました。

水無月・Rさん、こんばんは。
お褒めいただいて、照れ照れです。
もう一年以上も前のことになりますが、恋人と別れる前後に心理的にも追い詰められ、身体的にも不調になりました。
中山さんの小説は、そのときのぐちゃぐちゃの精神状態に、共感してくれるようないたわりを感じるのです。小説が私に理解を示してくれるような傲慢な錯覚です。
でも、現実で心身を壊すような恋愛をやっちゃうのは、単に恋愛スキルが低いだけかも……と、思わないでもないのです……orz

香桑さん、こんばんは(^^)。
TBの件、ご心配をおかけしてしまって、すみません。また、チャレンジしてみました。
どうも香桑さんのブログのサーバと相性が良くないみたいで・・。Biglobeはライブドアとか、いくつか相性の悪いサーバがあるようです。
私のブログの方はTBを承認制にしているので、TBをつけて頂いてもすぐには反映できなかったりします。特に夜中は、携帯の電源も切ってますので、反映は翌朝になってしまいます。ホントは自動的に反映したいんですけど、迷惑TBが結構来るものですから・・・。

水無月・Rさん、こんばんは。こちらこそ、すみません。いっぱい送っていたので、驚かれたでしょ?(^^; 私のほうの操作画面で、TBが送れたことにならなくって、えいえいとボタンをクリックしてしまいました。すみません。
Niftyからも、TBが届きやすい、届きにくいがあって、しかも時々変わります。今はLivedoorにはまったく届かなくなってしまいました…。
TBも不思議なものから困ったものもまでいろいろありますから、承認制を取るのがいいですよね。
ありがとうございました。どうぞ、これからもお付き合いよろしくお願いします♪

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熾烈な愛。過剰なまでに、お互いの身を削りあい、奪いあうがごとく愛し合う、2人の女。 ・・・怖いなぁ。中山可穂の、激しく狂おしいレズビアンの世界は、水無月・Rから非常に遠い世界にある。だから理解できない、と切って捨てることは簡単だけど、それは出来ない。 「ひと」の中に潜む、激情。愛ゆえに「ひと」は道を踏み外し、愛ゆえに「ひと」は闇に迷う。そしてその愛が激しければ激しいほど、それは簡単に憎しみにすり替わる。 『マラケシュ心中』は、「ひと」の愛の激しさが、津波のように人を飲み込んでいく。波...... [続きを読む]

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