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2007.10.08

性犯罪の心理:あなたは性犯罪の実態をどこまで知っているのか?

性犯罪の心理 作田 明 2006 河出書房新社

抑制の効いた、よい本だった。
リンチに誘うかのように、感情的で扇情的に反応する人々がいる。
断罪をする前に、はたしてどれだけ実態を知っているのかと著者は問う。
性犯罪は、確かに恐ろしい暴力ではある。人権侵害であり、ひどい暴力だ。
同時に、性犯罪に対しての迷信も根強い。犯罪者に対しての偏見も根強い。

本書では、強姦や強制わいせつといった代表的な犯罪を中核に、犯罪ではないが関係の強い性嗜好異常から説き起こし、痴漢、窃視症、露出症、小児性愛、ストーカーのような性的犯罪まで取り扱う。
病態と診断については、DSM-Ⅳ-TRに基づいて、解説されている。

著者は「合意に基づかない性交はすべて強姦であると考えるべきであろう、という立場である」(p.177)と明記している。
この明快な断言はエストリッチ『リアル・レイプ』の時代の常識と隔年の違いがあるようでいて、著者が「強姦の神話」に章を割いているところに、まだまだ世間に偏見は根強いことを示している。
著者が読者に想定しているのは、もともと犯罪にあまり興味を持っていない人であることであるから、この章は避けてはならないことであった。
人は誰でも加害者にもなりうるが、被害者にもなりうることもあり、決して無関係であるとは言い切れない。
そこから、ストーカーや強姦、痴漢など、対策にも目配りの効いた内容となっている。性的被害の心理的後遺症について、カウンセリングによる二次的被害を受ける危険性も警告しており、非常に良識的であると思われた。

精神鑑定の意義について、知らなかったのが正直なところであり、一番、印象的だった。
特異な犯罪の一例をもって犯罪一般を語ることはしてはならないが、事例の積み重ねを経てのみ得られる知見がある。
本書には幾つかの事例が紹介されており、具体的に犯罪や犯罪者を感じることができる。それが、事例の積み重ねの効果である。
重大な犯罪において、重い刑罰が予想されるときに、精神鑑定が行われるのは、情状酌量のためだけではなく、その犯罪の特異さを記録に残し、資料とする機能もある。
精神鑑定が行われた多くの事件が、完全責任能力と判断されていることを知らなかったし、責任能力の有無の判定だけが目的とは限らないことがわかった。

高校生までに、できれば義務教育段階で、正確な情報に触れ、適切な警戒心と自制心を持ち、倫理観を磨く機会がもう少しあればいいのに、と思わざるをえなかった。
なぜならば、自分も含めて、個々人の大人は、風評や迷信にともすれば踊らされがちであり、自分の中の偏見や無知に対して無自覚であることがあるから。
こう考えること自体、自己責任の概念も分からずに、法律の厳罰化ばかりを求める、人任せの姿勢が自分にもあるということだろう。

自分も少し短絡的になっていると反省する。私は性犯罪に不寛容である。
性犯罪については、即座に拒否反応を起こして、厳罰化もやむなしと考えてしまう。
厳罰化が、犯罪の抑制に役立たないとわかっていながら、嫌悪感を押さえきれない。
犯罪の解決は、事件の背景や動機よりも、処罰にあるのではないかと考えてしまう。
冷静に考えれば、「性犯罪の実行に至る人々も、さまざまなタイプがあり、再犯の可能性もまちまちである。したがって、日本の性犯罪を減少させようとする立場に立てさまざまな方策があり、また最も効率の良い方法があるだろう」(p.21)という著者の意見はもっともにも関わらず。

女性であれ男性であれ、子どもであれ年配の人であれ、できれば読んでもらいたい。
簡潔な文章は、専門用語をなるべく排しており、読みやすく、わかりやすかった。
阿部定事件、小平義雄事件、大久保清事件といった、歴史的な事件にも触れている。
性被害に遭った人にとっても、自分の体験と少し距離を置くきっかけになるまいか。
ワイドショー的な興味関心からでもいい。性的な幻想を託している人には、もっと読んでほしい。

 ***

私は、性的被害に遭ったあと、少なくとも一ヶ月は精神科医や臨床心理士の元を訪れずに経過を見る必要があるだろうと考えている。その上で、治療が必要かどうかを考えても遅くないはずだ。(p.42)

人間には自然治癒力を持っている。直後に大騒ぎをして傷口を広げるよりも、じっとして心身を養生するほうが、障らぬこともあるだろう。関係者は当事者よりも冷静に対応することが望まれる。

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