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2007.10.03

失はれる物語

失はれる物語 (角川文庫)  乙一 2006 角川文庫

印象的なタイトルだが未読だった乙一作品。勧めてくれた人と相談して最初の一冊に選んだのが、この短編集。
水に滲む五線譜と青い題字。表題作を読んでから見直すと、成る程と思えた。

いずれの主人公たちも、どこか周囲になじめないと感じ、疎通しあえることをあきらめているような気配を持つ。
裏切られ、傷つけられ、信じられなくなった。あきらめきった。そんな孤独に共感を持つ人も多いだろう。

もう一つの共通項は、親の不在や別離である。
共働きで帰りが遅い両親。事故に遇って他界したり、病気のために入院していたり、犯罪のために処罰されていたり、子どものそばにはいない保護者。
あるいは、保護されるべき年齢を過ぎて、逃げるように親元から離れた主人公もいる。

成長発達する段階のどこかで、おそらく思春期に前後して、自分の両親がまるで別人であるように、自分が別人になってしまったかのように、違和感を持つことがあるという。
目線が大人になるにつれて見える景色が変わることが、徐々にではなく、急にふっと起き上がり、自分や他人が見知らぬ人のように感じる一瞬。
やがて、その違和感は徐々に修正され、自然に調整されていくものだと思う。これがなかなかうまく調整できない人は、とても苦しいこともあろう。

理想は幻想だったとわかっても、現実もそう捨てたものじゃないと、腑に落ちるとき。
これがまさしく自分であると確かめられたり、世界はそれなりに自分を優しく包んでいたと気づけるようになるときがくる。
世界との一体感がもたらす万能感が傷つき、分離の不安を通り過ぎて、再び対象との信頼や愛着を築く。
そんな一瞬を上手に掴んでいるところが、本書の短編の特徴であり、魅力ではなかろうか。
この視点で見通すと、「ボクの賢いパンツ君」だって、立派なビルドゥング・ロマンだ。

通じ合えた暖かいときは一瞬であり、いつか遠い過去の思い出になるとしても、とても貴重に輝く一瞬で。
「Calling You」は今も大好きな曲をメロディを思い出しながら読んだ。これと、「しあわせは子猫のかたち」が私は好きだなあ。韓国映画『イル・マーレ』か『リメンバー・ミー』に似ているかな? 定番でも、こういうのは好き。
「失はれる物語」は独特の設定で、自分の身に置き換えるのが恐ろしいけれども、この想像力には脱帽。
「傷」や「手を握る泥棒の物語」「ボクの賢いパンツ君」は男の子の成長物語だ。最後は元気になろう。
「マリアの指」は怖かったです……。人から切り離された身体の一部というのは、ちょっと苦手で……。でも、これもまた、親との分離と愛着の物語として、構造を読むのが面白かったです。
ラストの「ウソカノ」。これも好き。なんだか、『NHKにようこそ!』の男の子たちが思い出された。

通り過ぎていくのは寂しいけれど、だけど、確かにそこにあったもの。

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コメント

あらぁ~?
単行本より文庫版の方が収録されてるお話が多いんだねぇ;;;
「ボクの賢いパンツ君」とか「ウソカノ」とか・・・。
パンツ君なんてすんごいタイトルだし(笑)どんなお話なんでしょ。興味あるなー。今度、本屋で立ち読みしよう!

そうなのです。文庫版にはおまけがついているようです。
「パンツ君」はふざけているように見えて、なかなかいい感じでしたよ。
でも、私、腐れ大学生とかヘタレ男子がお気に入りになりつつあるから、「ウソカノ」もお勧めしたいです。
立ち読みするときには忘れずに!笑

というか、持って行きましょうか?

文庫本をようやく読みました。
可愛らしいようでいて、その実、ちょっと切なく苦い2編でした。

短いけど、可愛らしいけど、切なさとか痛さとか苦さが含まれるのが乙一さんらしいんですよね。
あんまり黒くなくて、そういう透明感のある文章だったら、また読みたいな。
今、読書の時間が思うように取れないのも、ストレスです。

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