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2007.09.11

閉鎖病棟

閉鎖病棟 (新潮文庫) 帚木蓬生 1997 新潮文庫

最初にいくつかの人生、家族が描かれる。
中絶を図る10代の少女。復員してきた父親が自殺した家族。知的な能力が低さを恥じる家族。腹いせに納屋に火をつけた男性。
ばらばらに紹介された人々が、そこに集まってきていた。

淡々とした筆致は読みやすく、小説だということを忘れる。
作者の文章力も高いのだと思うが、作者をインスパイアした、実際の数々の患者達の人生の重みを感じる。
戦争を経験した人は少なくなってきていると思うし、このような昔ながらの精神病院の景色も、よかれあしかれ失われ行く景色の一つかもしれない。
数十年も人を閉じ込めることは非人道的な処遇ではないか、という点で、よかれ。

作中の患者達に面会しに来るのは、多くの場合は親達であり、兄弟姉妹はだいたい冷淡に描かれる。
年老いてもなお親心を見せる、その親達に胸を打たれる思いがした。しかし、親は子どもよりも長生きしないことが多い。
その人を受け止めて支える居場所がほかにどうしてもないときに、病院すら受け入れないとなるならば、あしかれ。

単行本の刊行は1994年(平成6年)だそうだ。
精神保健福祉法と呼ばれる法律がある。この法律の目的は、第一条をひいておこう。

この法律は、精神障害者の医療及び保護を行い、障害者自立支援法(平成17年法律第123号)と相まつてその社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い、並びにその発生の予防その他国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによつて、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とする。

昭和25年に作られた精神衛生法をもとに改正を重ね、平成7年から精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)の呼称になったそうだ。
いつ、どのような変更を重ねられたのか、私はよく知らない。が、そういう法制上の変遷を踏まえて書かれたことは感じた。
薬物療法の進化と法制面の整備など、主人公格のチュウさんが出会う、若い女医が任意入院について語る場面に、時代の変化は如実に表れている。

絲山秋子『逃亡くそたわけ』とはかなり趣は異なるが、本作も福岡を舞台としており、博多弁と筑豊弁を使い分ける芸の細かさだ。
秀丸らの家族は博多弁、チュウさんや昭八ちゃんらは北九州から筑豊の言葉。筑後弁はわからないけど、入っていたかもしれない。

精神科の病気の治るとはどういうことか。
がんでさえ、「5年間再発していない」ことをもって「治癒」と操作的に定義する(乳がんのみ8年間)。
糖尿病や高脂血症など、病気と長くつきあうしかない病気がある。傷は治っても傷跡が残ることは、治ったとは言わないのか。
治るということを、どのように考えればよいのだろうか。

病院を終の棲家にしてはいけないという秀丸さんの手紙には、作者の理想や希望が託されているのだろう。
小説は綺麗な終わり方をしているけれども、本書が書かれて10年以上が経っても、厳しい現実はある。
本書は、だから、作者の免罪符にはならないだろうと思ったりもした。

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