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2007.08.28

「治らない」時代の医療者心得帳:カスガ先生の答えのない悩み相談室

「治らない」時代の医療者心得帳―カスガ先生の答えのない悩み相談室 春日武彦 2007 医学書院

吉野朔美さんの描く挿絵の医師が、好みでした。笑
もともと春日武彦氏の本が好きなので手に取り、吉野さんへの懐かしさに飛びついた。『少年は荒野をめざす』とか『ジュリエットの卵』とか。

さて、本書のこと。
研修医からの質問に、カスガ先生が回答する。
ここでいう研修医とは、「臨床のリアリティに接して気持ちを動揺させている真っ最中の人たち」(p.193)だとあとがきで定義されている。したがって、「研修医とは意思における思春期である」と。
医師としてやっていく上での悩みもあれば、患者やスタッフに対してこう言われたらどう応えるかというフレーズ集もある。
と言っても、読者に服従と信奉を要求するような単純明快なマニュアル(信仰の書)に堕さないところに、カスガ先生の妙味を感じる。

研修医でなくとも、そのほかの医療に関わる職業、医療に関わらない職業の、「現場のリアリティに接して気持ちを動揺させている真っ最中の人たち」に役立ちそうである。
謙虚な確信犯として、曖昧で宙ぶらりんな状態に耐える能力は、専門家に要請される態度ではないか。ただし、鈍感さを自覚することが、臨床の≪義≫というものだ。
当たり前で変化の乏しい毎日の業務が、退屈なルーチンワークに感じている人にも、読んでもらいたい。
「援助者のリソースは有限である」(p.179)ことを見失って、過度に没頭している燃え尽きそうな人たちや、過剰に背負い込んだ責任を達成できない罪悪感を感じている人たちにも、役立つのではなかろうか。

また、患者として医療に関わることになったときにも、思い出してもらいたい記述もあった。
というのも、現代の医療は万能じゃないことを前提としているからだ。治らない病気、身体の変化はある。
治らないことを受け容れなくてはならないのは、医療者だけではない。患者もだ。
悔しいし、悲しいし、腹立たしいし、もどかしいし、つらいけれど、治らない痛みがある。
患者としてそれを受け容れていくには、時間が必要なこともあるのだ。患者として成熟する時間を許してもらえれば、私は助かるなぁ。

巻末には、内田樹氏との対談もある。待つことについての議論は興味深いし、賛同する点も多かった。
時間が立てば、変化する。選択肢が増えるメリットがあるかもしれないし、選択肢が減るデメリットもあるかもしれない。
どうなるかはわからないが、状況も、主体も、変化する。未来を確保する限り、変化の可能性はいつもある。

個人的に一番励まされた文章は、「患者さんが救われれば、結果オーライ」(p.72)。
今後の課題は「退路を断たずに振る舞うことが、大人であることの基本です」(p.163)ということで、大人になること。
「なぜ人を殺してはいけないか」と問われれば、「簡単に答えることはできません。私もなぜだかわからないからです。とりあえず、私はあなたに殺されるのは嫌ですので、人を殺していいということになると困ります。あなたが人を殺してもいいと主張したいのであれば、逆に、なぜ、あなたは私を殺しても良いのか、私が納得できるように説明してもらえませんか?」などと言ってしまいそうである。
……ほんと、もう少し、大人になろう。大人になろうよ、自分。

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