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2007.07.20

僕僕先生

僕僕先生 仁木英之 2006 新潮社

柔らかな色使いと優しい絵柄の可愛い表紙が気になる本だった。誘惑に負けた。
ブロガーさん達の評判もよく、日本ファンタジーノベル大賞受賞作なら私の好みだろうと買ってみた。

中国の歴史や故事、文化が膨大に詰め込まれており、物語の土台がしっかりしている感じだ。
そういった知識がなくとも、読み手を容易に引き込む雰囲気がある。
玄宗皇帝が楊貴妃に惚れ込む直前、仙人が飛び交い、人々が祈りによって自然と折り合いをつけていた素朴な時代へと。

主人公王弁は、見事な若旦那である。
ここでいう若旦那とは、江戸時代の大店の、妙に頼りない跡継ぎ息子のこと。番頭が見張っていないとふらふらと遊びに出かける。それも吉原ではなく、近所の川べりで針のついていない糸を垂らして釣りしてみたり、ぼうっと風車に見とれるような、そういう私の勝手なイメージである。
……こう書くと、日本では昔から、ニートであることを、ある程度までは許容する文化的土壌があったということか……。

さて、王弁はふらふらと旅に出てしまうところは、回避的ではあるがアパシーというわけではなく、アイデンティティが拡散しているわけでもないと思わせる。
遠い世界に牽引を感じるだけで、自分探しのたびではないからだ。育ちのよい若旦那としてまっとう?なだけで、彼には若旦那という彼らしさがちゃんとある。
そもそも、こだわりのなさも無為自然の域に達することができたら、立派なもんだ。
一方、僕僕先生も魅力的な仙人である。この主人公ら二人の淡い愛慕が、清潔感があってこれまたよい。

続々と名うての仙人や神々が登場する。
『封神演義』の訳者が書いていたことだけれども、中国の古典にはファンタジーの要素がいっぱいある。
近代化して、人間は蝗を恐れる必要はなくなったかもしれないが、こんな混沌として曖昧としながらも絢爛で芳醇な世界での遊び方を失ったと思うと寂しくはないだろうか。

デビュー作とあり、多少の文章のわかりづらさは感じる。
句読点の位置の問題だろうが、修飾部と被修飾部の区別がわかりにくいところがあった。
人のことを言うのは簡単である。(もう少し、文章を見直せ>自分)
しかし、この作者の今後に期待を持ちたい。中国ものが続くのか、それとも?
面白くて、最後は切なくて、でも最高にハッピーな小説だった。

バリー・ヒューガード『鳥姫伝』のシリーズや、田中芳樹『創竜伝』が好きな人には、とっつきがよいと思われる。
夢枕獏の『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』もちょうど同時代だ。まだ読んでないけど。
政治制度の面では、小野不由美の十二国記シリーズや雪野紗衣の彩雲国物語を思い出す。
マンガだったら華不実『夜光雲』を思い出したが、古すぎるだろうか。『僕僕先生』の中の古い神々が出てくる諏訪緑『蠶叢の仮面』『西王母』もお勧めだ。
美少女の僕僕先生なら、九天玄女だったらいいな、なんて、思ったのだ。杏の花の香りがするのだもの。

 ***

というわけで、すずなちゃん、読んでね。

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コメント

香桑さん、こんにちは。
テンポのよい会話に引き込まれましたね。
さりげなく描かれている背後に、膨大な中国の歴史や文化を感じさせてくれました。
“修飾部と被修飾部の区別が…”ぜんぜん気づきませんでした。香桑さんって国語関係のスペシャリストなのですか?。
洋の東西を問わない、マンガも含めたファンタジー系の知識にもビックリです。

藍色さん、こんにちは。
もともとファンタジー好きで、洋風(ケルト風?)ファンタジーも大好きですが、中華風ファンタジーも捨てがたいのです。マンガも小説も、読書なら雑食の大食いですよ。

言葉は私の仕事道具なので、自分の巧拙を横におき、読みやすい文章やきれいな言葉遣いに惹かれます。
仁木さんは、小説ははじめてであっても、これまで文章を書きなれてきた人の気配を感じました。

う、うはははは。びっくりしたー(笑)
お~これ面白そうだなぁ♪と読んでたら、いきなり名指しかいっ!ご指名、ありがとうございまーす♪
早速、図書館で探してみるっ!

えへへ。よろしくーっ。
多分、すずなちゃんの好みに合うんじゃないかなあ。
ほのぼのとして、可愛い物語でしたよー。

図書館で見つからなかったときには、来月にでも持参しましょうか? いつでも言って下さいね。

読みました(笑)
勧めてくれてありがとっ!でしたぁ♪
確かに読みづらさはあったけど、面白かったなー。シリーズ化して欲しい!

シリーズ化もいいですねぇ。
楽しんでもらえてよかったです。
僕僕先生も可愛いけれども、王弁が可愛くて可愛くて。
吉良に嫦娥に黄帝に……豪華な顔ぶれでした。

はじめまして。
TBありがとうございました。
お返しのTBを送ったんですが、上手く反映しないみたいですね。
後日再チャレンジさせていただきます。

中国の歴史などには疎かったんですが、キュートな仙人と王弁のやり取りがなんとも微笑ましくて楽しく読むことができました。

TB&コメント、ありがとうございます。
TBは承認制にしているものですから、公開が遅くなりました。すみません。ちゃんと届いています!
これからもよろしくお願いいたします。

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