2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

著者名索引

香桑の近況

  • 2017.1.4
    2016年 合計50冊
    2015年 合計32冊
    2014年 合計26冊
    2013年 合計32冊
    2012年 合計54冊
    2011年 合計63冊
    2010年 合計59冊
    2009年 合計71冊

    合計323冊
無料ブログはココログ

« (雑誌)バンドネオンを弾く女 | トップページ | 張形と江戸をんな »

2007.06.25

(雑誌)テンペスト

テンペスト  上 若夏の巻 テンペスト  下 花風の巻  池永永一 野性時代

十九世紀の琉球王朝を舞台とする。
琉球王国は冊封をうけて清を宗主国と仰ぐ同時に、鎖国中である日本の薩摩の支配を受けている。
男だけしか政治に関われない中、主人公の真鶴は、性別を偽り、名前を変え、宦官として科挙を経て宮廷に上がる。

設定は興味深い。中国文化圏の辺縁に位置する国として、琉球はヴェトナムや韓国と共通項が多い。文化的葛藤の面でも、歴史的宿命の面でも。建築や衣装など、見比べると面白い。
この小説は、現代的な日本語文の合間合間に、琉歌や和歌が織り込まれ、公文書は漢文で、ときには英語などが差し挟まれ、当時の琉球王国の持つ多様性をよく表していると思う。
雑誌を買うたびに読んでいるのだが、どうも、物語にはうまく入り込めない。
女の子が頑張る物語のはずなのに。『彩雲国物語』と比べちゃ、いけないだろうか。

主人公は美人で才気煥発、無垢で完璧。健気にがんばっており、その活躍は痛快なはずだ。「夢の女性」のような男性のファンタジーを感じさせられる造詣に、感情移入しづらい。
主人公以外の女性は、傲慢であったり、短慮であったり、強欲であったりして、魅力に乏しい。ここまで悪し様に書かずともよかろうに。女性一般の記述は軽蔑的と言ったら、言いすぎだろうか。
主人公の周りには何種類かの魅力的な男性キャラを配置して、ある種の萌えを狙っているように感じる。男性がBL風のものを書こうとして、とてもヘテロセクシュアルなものに戻ってしまったような感じ? 

物語の粗筋や設定は面白いのだけれども、どうも描写が好きになれない。
このしっくりこない感じは、男性作家が女性を主人公にして書いた小説に、私は感じやすい。
美人だったら何でも許される。それ以外は許されない。その構造に、女性一般に愛情や敬意を払ってもらえていない感じがするのだと思う。
性別で分類されて、個人の魅力が無視されている。過剰に性化させられている感じがして、嫌になるんじゃないかな。
だって、私はその他大勢の女性一般に自分を投影するから。その自覚がある。

この小説に関しては、ものすごくもったいない感じがする。
もったいないから、多分、雑誌を買ったら続きを読むとは思う。
いっそ主人公が世界を制覇するぐらいの勢いで突き進んでくれないかなあ。

 ***

その後、第二部に入ってからが、俄然、面白くなった。真鶴と寧温の二つの顔を使い分けながら、二つに引き裂かれそうになりながら、しかし、どちらも魅力的に人を惹きつけながら輝く竜の娘。主人公が真鶴の顔を取り戻したことで葛藤が生じ、人間味が出てきたのだ。

同時に、敵役である真牛にも徐々に人間らしい魅力が感じられるようになってくる。それにしても、ちょっと眉をひそめるような苛烈な境遇に落とされてしまうわけであるが……。

ちょうど、ドラマ『篤姫』と同時代ということもあり、そういう意味でも面白く、結局、最終回まで雑誌のほうでおいかけてしまった。紅型風の模様がプリントされたページが綺麗で、それも楽しみだった。

琉球王国から俯瞰する、アジア。薩摩に代表される日本、朝鮮半島、清国の力関係。そこに、欧米が進出して伝統的な世界に影を落とす。時代背景がはるかにわかりやすくなる。ダイナミックな構造を、多言語を駆使して描く。

雑誌ではVol.55(2008年6月号)が最終回となった。フェミニスティックにうがった見方をすればできないこともないが、ハッピーエンドとなった。読み応えのある小説であることは間違いない。

« (雑誌)バンドネオンを弾く女 | トップページ | 張形と江戸をんな »

小説(日本)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/183237/6913608

この記事へのトラックバック一覧です: (雑誌)テンペスト:

« (雑誌)バンドネオンを弾く女 | トップページ | 張形と江戸をんな »

Here is something you can do.

  • ボランティア・寄付ならプラン・ジャパン
    子どもとともに途上国の地域開発を進める国際NGO

最近のトラックバック