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2007.06.14

蝶々の纏足・風葬の教室

蝶々の纏足・風葬の教室 山田詠美 1997 新潮文庫

私は仲間はずれになりやすい子どもだった。
今となっても、集団に適応しにくい、孤立しやすい人間だと思っている。
ここは私の居場所ではないのだと、そんな居心地の悪さをいつも感じているのだ。
友達というのは日常生活だと、著者は書く。私の友達はとても少ない。

三浦しをん『秘密の花園』の表紙を見たときに、ふと思い出した。気になりながら、まだ手付かずの、この小説。
読む勇気が出なくて、読むと決めてからも開いては閉じ、結末や解説を開いて心の準備を促し、結局、「蝶々の纏足」を後回しにして「風葬の教室」「こぎつねこん」から読んだ。

思いがけず、「風葬の教室」のほうが「蝶々の纏足」よりも印象深いものだった。
確かに、私と私の特別な友達は、子どもの頃、お互いに纏足を結び合っていたのかもしれない。
その束縛を断ち切るために、私は男性を利用したのかもしれない。
しかし、心の中に飼っていた纏足は、同時に、私を地上に繋ぐ重力の鎖となった。
私がここにあるために、今もか細い糸となり、私を縛り付けている。それが、ありがたく思いこそすれ、嫌なことではない。
だからだろう。怖れていたほど、読んでみれば、「蝶々の纏足」はそんなに苦しいのではなかった。ただ、彼女が山田詠美をよく読んでいた理由が、なんとなくわかった気がして切なかった。

「風葬の教室」を読んで、恐ろしく思うのはどちらだろうか。
周りの子どもの心の機微に敏感で、大人に対しても冷静で操作的、軽蔑という方法で人を殺すことを選ぶ主人公の心持だろうか。
それとも、ある種の宗教がはびこる教室の、主人公をいじめてはしゃぐ、その他大勢の子どもたちだろうか。
いじめる側といじめられる側の相互作用的な悪循環を、鋭敏に皮肉に描いている。
異邦人に対する集団の圧力のぞっとするような描写は、小野不由美『魔性の子』と比肩する。

転校すると、前の学校の知り合いは手紙を書くと約束するが、それは滅多に来た試しはない。
「風葬の教室」の主人公は、引っ越すことで、これまでの知り合いの日常生活から取り外されることをよくわかっている。
主人公を日常生活に組み込み、主人公が日常生活に組み入れて支えられているのは、家族だけである。

家族との関わりを危機的状況で再確認する「風葬の教室」の主人公に対して、「蝶々の纏足」の主人公は、がっぷりと組み込みあった日常生活を切り分けようともがく。
「こぎつねこん」は、家族の中の日常生活の関係にすら、どこか非日常を感じとっている不安定さがにおうのではないか。
この三篇の小説は、生活に組み込まれた関係性が、共通の視点になる気がする。

私の大切な友人は、遠くに住む人だった。その人の日常生活から切り離されていると感じていた。
彼の友人が、彼と共に過ごす日常生活を語る様を聞かされることが、私には苦痛だった。
引越しを繰り返して末に、今の在所に住んでから時間が経ったけれども、訪ねて来てくれた人は数少ない。
彼はその数少ない一人であり、私にはとてもとても特別な人だった。
いつも友人に囲まれている人に、なかなか伝わらなかった、この仲間はずれの感覚を、山田詠美は見事に抽出していると感じた。
彼との間に繋ぐ糸が残らなかったことが、私はやはり悲しい。

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コメント

香桑さんこんばんは
あ、「魔性の子」もそんなでしたねぇ。あちきが「魔性の子」を読んだときは、ここから十二国記につながるということを知りながら読んでいたので、さほどいじめの印象はなかったです。ので、全然思い出しませんでした・・・。
風葬の教室は確かに暗い一面もあると思うのですが、どこか孤高を感じました。辛くはもちろん感じるとしても、こういう人はどこか芯の部分が強くてだいじょうぶな人なんだろうなぁと思いました★

やぎっちょさん、どもどもです。
『十二国記』の新作短編も素晴らしかったですよーっ。
と、そちらに反応してしまいました。

>芯の部分が強くてだいじょうぶな人
私もそう思います。ですから、あれは、同じように孤立した場面で苦しんでいる人への励ましのように感じます。
レビューを見ていると『風葬の教室』の主人公へのネガティヴな意見もありましたが、私は周囲の子達の醜悪さが嫌でした。

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