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2007.05.16

きつねのはなし

森見登美彦 2006 新潮社

とりつかれることがある。
人の顔がケモノに見えることがある。
人からケモノのにおいが立ち上る。
滑稽なキツネの面をつけた人が立っている。

著者の3作目。出版順に読もうと思ったところ、2作目の『四畳半神話大系』が苦手な二段組だったので、こちらを先に読み終えた。
これを最初に読んでいたら、モリミーにはまっていたかどうかはわからない。
『太陽の塔』から見られる独特の古風な文体は見られず、むしろ淡々とした語り口。
『新釈 走れメロス』の中の「桜の森の満開の下」と通じる雰囲気を感じる。
圧倒的なインパクトには欠けると思ったが、これはこれで好ましい。

「きつねのはなし」「果実の中の龍」「魔」「水神」の4編は、ゆるやかに繋がっているが、独立した物語として読んでもよい。
不思議なことが不思議なままにある。静かで不気味な、ほの暗く、少し寂しい。悲しい。切ない。
ホラーという響きには不釣合いで、ひっそりと木陰にたたずむだけの白けた幽霊を見るような心地。

「きつねのはなし」で出てくるきつねは、同じ伏見稲荷に所縁があっても、万城目学『鹿男あをによし』のキツネとは、性格が違うらしい。
きつねは、きつねの思惑で動いているのであって、人の思惑では推し量ることができない。
しかし、この人とは違うきつねの世界が重なり合っている想定が、梨木香歩『家守綺譚』の舞台と重なり合う。

陰の主役は、きつねといってもよいし、龍としてもよいだろう。
「果実の中の龍」は、なんとも物悲しいと同時に、登場人物に病院受診を勧めたい気持ちに駆られた。疾患として治療の余地があったのではないか、このような結末を迎えずに済む可能性があったのではないか、と、興ざめながら考えてしまった。
「魔」と神は、意外に近い。菅野覚明『神道の逆襲』を想起する。人ではない何かの立ち表れるその瞬間がある。

「水神」の景色が好きだなあ。最後が切ない。
たどりつけなかったのだろうか。もとの居場所に。

いなくなった先輩、古書店/古道具店でのアルバイト、下鴨幽水荘の四畳半などなど、要素は他の作品と共通するが、こんなにも異なる作品に仕上がる。
構造分析をしてみたい気持ちなどは横に置き、怪異の空気に淡い夢を見るように読むがよい。

 ***

『夜は短し歩けよ乙女』が山本周五郎賞を受賞したそうで。引き続きモリミーに要注目。

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コメント

これ、好き^^;
クセのある文体が影を潜めていたからかどうかは分かんないんだけど、こういうお話は好きみたい(笑)

さ、残り1冊!
メロスで減っていた”読む気”が復活してきたぞー。

すずなちゃんが好きなものもあってよかったー!と、ほっとしました。
あわないものがかり読むのも、ストレスだものね。
私はこの表紙が好きです。

香桑さん、こんばんは(^^)。
私も、この作品が最初だったら、ハマってなかったかもしれないクチです。
京都という土地の雰囲気から疎外感を感じてしまったのもあります。
長く続いた都、その奥深さはなかなか、入り込めるものではないのかも知れませんね。

水無月・Rさん、こんばんは。不思議な気配の本でしたよね。
感情移入しづらい、ぼんやりと薄暗い雰囲気を味わう小説というのは、近代のものには多い気がします。わかったような、わからないような、現代的ではない感じ。
もりみー自身が古典をよく読んでいる人なんでしょうね。樋口一葉とか。

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» きつねのはなし(森見登美彦) [Bookworm]
これは好き。 森見さん独特のクセのある文体が影を潜めていて、お陰で読みやすかったのかどうかは分からなかったんだけどね。自分でも意外に思うほど気に入っちゃいました。内容的には私好みなんだよね。だからかな。メロスよりも断然、好きですね。... [続きを読む]

» きつねのはなし 〔森見登美彦〕 [まったり読書日記]
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これは・・・判断が難しいな~。たぶんね、この物語を最初に読んだら、森見登美彦さんにはハマらなかったような気がします。私的には、愛と笑いとツッコミ処にあふれる、モリミーワールドが好きなので・・・。 良くも悪くも京都な物語、って印象ですねぇ。魑魅魍魎・・・しかもダークなほうで。... [続きを読む]

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