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2007.04.01

切れない糸

切れない糸 坂木 司 2005 東京創元社

多分、ミステリ。
商店街のクリーニング屋の跡を継がざるを得なくなった主人公の最初の一年。
起こる事件は、生じる謎は、殺人などの犯罪ではなく、日常の出来事。
主人公である新井が困ると、友人である沢田が魔法の言葉を教えてくれる。

舞台は、地名は出ないけれども、東京。おそらく蒲田のあたり。
商店街はプロフェッショナル集団と位置づける評価が新鮮だった。
砂糖とミルクが最初から入っている甘いコーヒーを出す京都の喫茶店といえば、イノダに決まっている。
いくつかの映画の名場面や名台詞も、小道具として魅力的だ。
クリーニングのマメ知識もいっぱいだった。

来る者は拒まず、去る者は追わず。そんな言い草、私は好きじゃない。
見て見ぬふりができないだけ。優しいわけじゃないと言い切る冒頭の主人公。
だけど、途中から、放っておけないのは自分なんだと、このまま見過ごすのが嫌なんだと、主人公は周囲に関わり始める。
私は、去る者は追わず、というのは、寂しくて悲しくて苛立たしい。聞いていて、すごく情けない気持ちになる。物理的には離れていても心のどこかや記憶のどこかで繋がってる在り様と、撥ね付けて切り捨てて追い出して忘れ去ってしまうことは、違うよね?
来る者は拒まずと嘯いて、自分の主体性を覆い隠して、被害感を振りかざして他責的になるような、そんな人には、私はなりたくないな。

そばにいなくても大丈夫。
連絡だって、たまにでいい。
私が困ったとき、弱り果てたときに連絡を取りたくなる、昔からの友人を思い出しながら、読んだ。
ふらふらと頼りなく漂っていた私の糸を、しっかりと握ってくれた。傍観者だった子どもを見つけてくれた人。
この人だけは私を裏切らない、いつだって味方なんだと悟ったきっかけは忘れたが、今もその信頼が私を支えている。
だから、安心して、ますますふらふらしているのかも。

喪失体験を超えて、繋がれていく糸。
居場所をくれる人。しっかりと地面につなぎとめてくれる存在。
離れていても、繋がっている。
確かな拠り所、いつか、いつでも、還ることのできる場所。
絶対の信頼と安心。
その関係の構築のドラマが、心地よかった。
ミステリというより、学生という浮遊した立場から、社会や世間に軟着陸していく成長の物語。

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小説(日本)」カテゴリの記事

コメント

こんにちは!
クリーニング店の裏事情など、へぇと思うことが沢山あって興味深かったです。
何より登場人物が良かったですね~。
主人公の成長と、『切れない糸』というタイトルに込められた意味がとても素敵でした。

エビノートさん、こんばんは。
この本、好きです。ご近所つきあいも悪くないなって思ったり、近所の商店街に親近感が沸きました。うちのファンヒーターが壊れやすい理由もよくわかりました。
主人公が30代になったときの再会編とか、続きがあったらいいのに……と夢想しています。
読んでいるときは、豚しょうがを食べたいぃぃ!と、しばらく叫びました。坂木さんの本は御飯が美味しそうです。

ちは。
この記事があったのを気づいてなかった^^;TB&コメントをもらってビックリでした(笑)
読み終わった後に、タイトルをじっくり見つめたくなるようなお話でした。
クリーニング屋さんの裏話が読めたもの楽しかったし、名探偵?が作る料理も美味しそうだったね!

最近、TBが不調なの;;;送れてるといいけどなぁ・・・。

すずなちゃん、ども。
お返しのTBは大丈夫みたいです。ありがとう。
実はこれも読んでいたのでした。お気に入りだよー。
商店街は専門家集団というところも魅力的な視点で、近所の商店街が違った目で見えるようになりました。

香桑さんこんばんは♪
このほんご紹介くださってありがとうございました!
ほほーこの舞台は蒲田ですか。なんか雰囲気が結構違うふうに感じていたのでちょっと意外でした。そしてミルクコーヒーはイノダだったのか!全然全然気がつかなかった。去年末に本店行ったところなのに・・・がーん!!

やぎっちょさん、こんばんは。TBありがとうございます♪
あの、その、多分、イノダ……じゃないかと思いました。多分です多分。(^^;
坂木さんの本の中では、最初のほうに読んだこともあって、印象に残っている本です。坂木さんは無難でそつのない文章を書く人というイメージ。まとめて何冊も読んで飽きがきちゃったのですが、これは好きなほうです。
読んでいただいて、楽しんでいただけたなら嬉しいです。

こんばんわ^^TBさせていただきました。届いていますでしょうか。
コーヒーはモデルがあったのですね。てっきり沢田オリジナルだと思っていました。
この作品は続いてほしいなぁと思った作品です。
坂木作品は大好きで、結構読んでいますが(引きこもり探偵シリーズはもったいないと思って1冊しか読んでいませんが・・・)
この作品も同様に本当に好きです。
和也が可愛かったです。最初は今時の若者っぽいなと思ったのですが、さりげなく紳士で、おせっかいで。生粋の生物委員の意味が分かりました。
沢田は風来坊のようであまり最初はつかめない人だと思いましたが、和也に助けられていたんですね。
このコンビにはまた会いたいですね^^

苗坊さん、こんばんは☆
ううぅ。残念ですが、TBは届いておりませぬ。
そこはもう、心の糸でリンクされていることにいたしましょう!

この主人公たちの続き、気になりますよね。
引きこもり探偵シリーズよりも、私はこっちのほうが好きでした。
その後、近所に料理のおいしい喫茶店を探すのですが、なかなか見つからないですねぇ。

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